太陽系の惑星にあって、それ以外の星の惑星には存在が確認されていないものが2つある。土星のようなリングと、私たちが毎晩眺めている月に代表される衛星だ。その両方が同じ場所で同時に見つかった可能性が出てきた。
■400光年先の「J1407b」
太陽以外の星の周りを回る「太陽系外惑星(系外惑星)」は第1号の発見からこの約20年間で約2000個が発見されている。さらに、系外惑星の候補となる天体は約3000個に達する。
この中で、リングと衛星の2つを持つとみられる系外惑星が米国など国際共同グループによって発見され、詳しい研究が進んでいる。ケンタウルス座の方向、約400光年のかなたにある恒星J1407を周回している惑星J1407bだ。
発見のきっかけはJ1407の奇妙な明滅だった。
主星となる恒星の手前(地球から見て)を惑星が横切ると、恒星の一部が惑星によって遮られる「恒星食」が起こり、星が周期的に一定期間暗くなる。系外惑星を探索する際には、こうした星の周期的な明滅を手がかりにしている。
J1407でも明滅が起きていたが、その仕方はかなり変わったものだった。予測できないパターンで何夜にもわたって明滅した後、1週間以上ほとんど観測できなくなるほど暗くなる期間が繰り返し起き、最後に元の明るさに戻っていた。
研究の結果、この明滅は観測装置や観測条件が原因ではなく、非常に高速で巨大なものがJ1407の手前を横切ることで恒星食が起き、明滅が繰り返されたことがわかった。明暗の揺らぎの速さから、その物体は恒星面を秒速30キロメートルで横切っていることが示唆された。そして、それほど高速にもかかわらず、当の恒星食は56日間も続いていた。
■リングの大きさは土星の約200倍
恒星食の期間の長さは、この物体の差し渡しが、実に1億8000万キロメートルにも及ぶことを意味する。この観測データの最も無理がない解釈は、J1407に惑星があり、その惑星が直径1億8000万キロメートルに達するリングを持つというモデルだ。
リングを持つ系外惑星の初の発見例だ。ちなみに太陽と地球の距離は1億5000万キロメートルなので、このモデルが正しければ、土星のリングの実に約200倍の規模になる。
リングの構造モデルを検討した結果、リングの間隙に火星サイズの衛星が存在するらしいこともわかった。衛星が確認できれば太陽系外で初めて見つかった衛星(系外衛星)となり、他にも系外衛星が存在する可能性が高くなる。発見された系外惑星のリングをより詳しく調べれば、恒星の周囲でどのようにして惑星や衛星ができるのか、詳細が明らかになるだろう。
(詳細は25日発売の日経サイエンス2016年4月号に掲載)