20カ国・地域(G20)が世界的な経済安定の後見人との立場に引き上げられてから7年間、経済規模の大きな国・地域で構成されるこのグループは注目されるべき衝撃を与えようと奮闘してきた。
概して、G20はマクロ経済政策の面での世界的な協力について口先では賛同してきたが、他のメンバーの意向を無視することはさほど気にしない。各参加国・地域は通常、財政、金融、為替の各政策で独自の路線をとる。
26日に上海で開幕するG20財務相・中央銀行総裁会議では、国際社会が財政的な協調路線をとれない危険性が近年で最も高まっている。最近の金融市場の混乱や中国経済の先行きの不確実性のため、年明けから根強い不安感が漂っている。
世界経済は引き続き拡大しているが、金融や財政の刺激策を策定する取り組みの必要性はさらに切迫度を増している。G20が最終的に協調路線をとるというのは期待しすぎかもしれないが、少なくとも大義に則した政策をとるべきだ。
国際通貨基金(IMF)と経済協力開発機構(OECD)はともに、昨年後半から今年初めにかけて、つまり直近の世界的な株式市場の動揺の前から成長が鈍化しているようだと注意を促していた。OECDは、2016年の世界経済の成長見通しについて、過去5年間で最も低迷した15年と同水準になる可能性が高いとしている。
今は世界経済の拡大を当然のものとしたり、財政再建に集中して取り組んだりすべき時ではない。米連邦準備理事会(FRB)の重大かつ悔やまれる例を除くと、金融政策の立案者らは量的緩和とマイナス金利による緩和政策を試みている。
こうした取り組みは、各国単体で行うより、協調して財政拡大のための資金を提供することで一層の効果を生むだろう。多くの関係者が指摘してきたように、民間需要が乏しく長期金利が低い経済状況では、短期的な成長と中期的な生産性を高めることを期待して、公的資金による投資を始めるのが理想とされる。
財政政策を伴わない金融拡大は、関係する中央銀行の動機が高潔であっても国際的な緊張を招くリスクがある。ユーロ圏と日本の量的緩和は主に国内の金融状況の緩和を目的としていたが、少なくとも当初は為替レートを引き下げた。人民元の下押し圧力で、いわゆる「通貨切り下げ競争」をめぐる別の衝突も起こりえる。
こうした懸念は、中国人民銀行が中国の政府機関や中国共産党と比較して金融政策に対して実際にどれほどの影響力を持つかという観点から、増幅されていった。
■互いの意図を理解する必要がある
G20は協調した行動をとれなくても、せめて政策決定者が互いの意図を理解することは必要だ。金融政策の一層の緩和は――景気刺激策はなおさらだが――、通貨安によって単に世界的にシェアを高めるだけではなく、むしろ経済成長と貿易促進をもたらすことができれば、ゼロサムゲームである必要はない。
G20が今週の会合で協調行動計画の策定に至る可能性は低い。だが、参加国・地域は、ここ数カ月間で、低迷する成長を押し上げるように行動せざるを得なくなるその瞬間に、目に見えて近づいてしまったことを知るべきだ。
(2016年2月26日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
(c) The Financial Times Limited 2016. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.