※いつの頃の鬼束さんなのかな?…
ドラマ「TRICK」の主題歌「月光」のB面に相当する曲。
鬼束ちひろの曲の中で一番好きな曲だ。これを聴くたび、その構成の透明さと切なさに、何とも言えない憧憬のような心象風景が、心の中に広がる。
現在の彼女は、見事にイメチェンを果たしてしまい…というか、未だ迷走をしているような感じで、すっかりネットで叩かれる存在になってしまった。でも、それが彼女の「なりたい自分」なら仕方が無いし、バッシングされたとしても、それ故に彼女の楽曲自体が否定されることにはならない。
この曲を聴くと、あるヒトを思い出す。
オトナの恋をした相手だけど、そのヒトは聡明なんだろうな。わざと俺に「さよなら」を告げるように仕向けさせてくれた。彼女の意図を感じ取らざるを得なかったので、予定調和とはいえ、やむなく「さよなら」と告げた。
当然それ以来、連絡したことは無いし、後で魔がさして(笑)、「接触しよう」と思ってもできないよう、連絡手段を断ち切った。
だってそうだろう。「さよなら」って言った時、彼女は海外にいたし、仮に追いかけたとしても、追えば追うほど、相手は逃げていくっていうのが定石だもの。
それにスマートに「さよなら」を告げたのに、後になって回帰したら、せっかくカッコつけさせてもらったのが、台無しになる。
ただ今は、その戻らない日々を、静かに想っている。
前回の続きを書く。
失恋の話ついでに、16歳の時の失恋だ。
彼女とは、入り口自体が勘違いから始まった。
仲の良い女友達がバス停で降りたので、バスに乗っている俺は、その友達に手を振った。
友達は俺が手を振っているのに気付かないので、俺は、それを良いことに、投げキッスの真似をした。
そしたら、その友達とたまたま一緒に降りた彼女が「エッ、アタシ?!」みたいなリアクションをした刹那、バスは出発してしまい、俺は「まぁ、いいかぁ~」と。
翌日、丁度良い加減に勘違いした彼女が、「昨日はありがとう。ちょっと嬉しかったりして…」と言ってきた。
そんな状況で、「手を振って、投げキッスしたのは俺の友達に対してであって、決してあなたに対してではない」と、否定形の典型みたいな言葉を、彼女に正直には言えなかった。
これまた、「まぁ、いいかぁ~」と思いながら、何となく付き合い始めた。
それでも、バスの中で色々な話とかして、電話でも話とかして、一緒に歩いて帰ったり、公園でデートしたりと、清く正しく(笑)、楽しい夏を過ごした。
しかし秋が来て、フトした誤解から、フラれてしまった。
勘違いで始まった恋なら、勘違いで終わるのもまぁ、それはそれでアリだな…
それに、何よりも
「フラれたのは、俺に魅力が無かった。それだけのことだ」
そう自分に言い聞かせ、当日の夜、家にあった電気バリカンで頭を丸めた。直にバリカンの歯を当てたので、殆どスキンヘッドだった。後にも先にも、坊主になったのはこの一回だけだった。
坊主になってからの登校時、クラスの連中は目を丸くした。
さすがに、みんなが訊いてきた。
「一体何があったの?!」
「単なる心境の変化さっ」
突き放すようにそう答えた。
実際は、「受験生であるにもかかわらず、女性にウツツを抜かした報いだ!」というのが坊主の理由。結構、ストイックに自分には無駄に厳しい(笑)。
でもそんな面倒臭いこと、クラスの連中には当然、話すつもりは無かった。
それにもかかわらず、「さっちゃん」とは文通は続ける。「さっちゃんが進学したら、俺もさっちゃんと同じ大学に行ければいいな~!」…
相変わらず、英単語、熟語、イディオムだけは続けてたけど、2度目の高校一年生は、迷走してばっかりだった。
しかし、そんな中でも、勉強に対するアレルギーが無くなってきたのを実感し始めた。