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【社会】市場移転…築地?豊洲? 吉野家「1号店」、「うまい」残し方は東京・築地市場(東京都中央卸売市場)の一角にある牛丼チェーン吉野家の「築地店」は、国内外で店舗展開するグループ発祥の店だ。一九二三(大正十二)年の関東大震災後、築地市場開業時から営業してきたが、今年十一月に市場が江東区豊洲に移転するのに伴い、この地に店を移す。店舗移転を前に、「一号店」と呼ばれてきた称号をどう残すか、店員やファンが気をもんでいる。 (木原育子) 「半シャリのトロ抜きで」。夜が明けぬうちから長靴姿の常連でにぎわう築地店は、魚を扱う市場ならではの言葉で注文が飛び交う。「半シャリ」は「ご飯の量は半分」、トロ抜きは「脂身のない肉」の意味だ。 入り口の木彫りの大看板の文言が「この味は、まさにこの地で育まれたものなのです」と伝えている。 吉野家は一八九九(明治三十二)年、東京・日本橋の魚河岸(うおがし)で創業した。関東大震災で魚河岸が築地に移転したのに伴い、一九三五年、現在の場所に落ち着いた。以来、国内千二百店舗、米国やアジアなども含め世界に知られる巨大チェーンの「一号店」の位置づけで築地とともに歴史を刻んできた。 同店の営業時間は午前五時から午後一時。市場の開場日に合わせて開店する。主要メニューや料金は他店と同じだ。 空いた時間にさっと食べ、仕事に戻る市場関係者らのニーズに応えるうち、吉野家の代名詞「はやい・うまい・やすい」の理念も生まれたという。 店員にとっても特別な発祥の店だけに、今も、豊洲に移った後、「一号店」の位置づけをどうするかの議論も続いている。 豊洲地域には既に「豊洲店」がある。かといって、単に「豊洲新市場店」とすれば、発祥の名残が消えてしまう…。 吉野家の本社(東京都中央区)の広報担当者によると、築地に新たな店舗を開業し「築地一号店」とする案も出ているという。 入社十八年目にして念願の築地店長を任された斎藤啓一さん(44)は「吉野家は築地とともに歩んできた。一号店の称号が消えるとしたら寂しい」と複雑だ。 常連の田中佑樹さん(42)は「一号店は他店舗と違い、店の人と市場の人との会話がにぎやかで絶妙な味がある。名前も大事だが、この雰囲気は残してほしい」と願っていた。 (東京新聞)
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