シェール業者の決算が、ほぼ出そろいました。

それらの決算から言えることは、このところの原油・天然ガス価格安にもかかわらず、各社とも踏ん張っていて、「なかなか死なない」ということです。

各社の売上高を見ると、軒並み前年比35~55%落ち込んでいます。これは原油・天然ガス価格の下落が主な原因です。

次に稼働リグ数を見ると、各社とも大幅に本数を減らしています。

ところが生産高は、前年比横ばい、ないし純増している企業が殆どです。

言い換えればリグ1本当たりの生産高は大幅に増えているわけです。

その理由として、各社とも、自社の油田ポートフォリオのうち、最もローコストに生産できる地域にオペレーションを集約していることが挙げられます。

一例として、コンチネンタル・リソーセズ(ティッカーシンボル:CLR)はノースダコタ州バーケン油田からはコンプリーション・クルーを引き揚げました。これはつまり今生産している油井はそのまま生産を続けるけれど、新しい生産ロケーションを追加しないことを意味します。その代り、コンチネンタルの場合、同社のポートフォリオで最も有望なオクラホマ南東部のSTACKと呼ばれる地域に注力してゆく考えです。

別の例で、コンチョー・リソーセズ(ティッカーシンボル:CXO)の場合、テキサス州のパーミアンにおける生産だけに絞り込んでいます。設備投資予算は2年前の30億ドルが去年は20億ドルへ、そして2016年の計画では11~13億ドルへと大幅に減額されています。それにもかかわらず生産高は二桁成長ですし、生産から得られるキャッシュフローは一定です。

さらに別の例でパイオニア・ナチュラル・リソーセズ(ティッカーシンボル:PXD)は稼働リグ数を24本から12本に半減しました。それでも生産高は+10%増えました。テキサス州イーグルフォードにおけるリグ数は6本から0本へ、サザン・ウルフキャンプJVでは4本から0本へ削減します。同社はスプラベリー・ウルフキャンプが最も有望だと考えているので、そこではリグ数を14本から12本に減らし、ここにオペレーションを集約します。


このようなオペレーションの集約に加えて、リグを大型化、ハイテク化することで各社は効率を上げています。その代表例がパッド・ドリリングという手法です。

それを説明します。

リグが大型化すると、地上部分の高さは5階建てのビルくらい高くなり、やぐらを組んだり、生産が済んだ後で、それをバラすのが大変になります。

そこでリグをバラさず、土台ごと次の掘削地点まで横滑りさせ、移動する方法が、パッド・ドリリングなのです。

これは喩えて言えばスペース・シャトルをクローラー・トランスポーターで発射台まで移動させるイメージだと思ってください。

そうやってひとつの場所での生産が終わると、数千メートル離れた次の掘削地点までリグが「歩いてゆく」わけです。

新しい地点にリグが据えられると、掘削に際しては「ラテラル」と呼ばれる、斜め掘りにより、前回、掘り残した地点まで戻って、そこから水平掘りを再開することで、まんべんなく、網羅的にシェール・オイルを採集するわけです。

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この斜め掘りは、場合によっては3,000メートルくらいに達します。

こうした一連のコスト削減努力で、各社のブレーク・イーブン原油価格は下がって来ており、これまでは1バレルあたり50ドル以上していたブレーク・イーブンは、現在、40ドル以下になっている企業も散見されます。

各社は利払のために赤字でもリグを稼働し続ける決意であり、シェール企業がバタバタと倒産するためには原油価格25ドルの水準が、少なくとも4か月程度続く必要があります

このことは現在の原油価格の低迷が、長く続くことを示唆しています。