福井県の関西電力高浜原発4号機が再稼働した。

 東日本大震災後、新しい規制基準のもとでは九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)、高浜3号機に続き4基目だ。

 高浜4号機は3号機と同様、ウランとプルトニウムの混合酸化物(MOX)燃料を使うプルサーマル発電が実施される。

 事故時に住民がスムーズに避難できるかという課題は積み残されたままだ。東京電力福島第一原発事故の教訓を踏まえた再稼働とはとうてい言えない。

 4号機では、稼働準備中に微量の放射性物質を含む水漏れが起きた。配管の弁のボルトが緩んでいたという。福島原発事故後、安全性への国民の視線は格段に厳しくなった。関電は他の弁の点検もしたというが、動かす以上、重い責任を負うことにいま一度自覚を求めたい。

 原発を動かせば使用済み核燃料が増える。再稼働を機にこの後始末の問題を直視すべきだ。

 関電の高浜、美浜、大飯原発では使用済み燃料を入れるプールがほぼ7割埋まっている。全9基の原子炉を再稼働すれば7~8年で満杯になる計算だ。

 国の方針の核燃料サイクルに沿えば、使用済み燃料は青森県六ケ所村の工場で再処理され、燃料としてよみがえるはずだった。だが工場は完成延期が続き、実現のめどは立たない。

 しかも、プルサーマルで生じる使用済みMOX燃料は六ケ所の工場で再処理できない。国は方針を決めておらず、当面は原発内で保管するしかない。

 これらの問題を先送りしてきたツケが、噴き出している。

 原発に頼ってきた消費者側も、国や電力会社に責任を押しつけて済む話ではない。自分たちの問題として、社会全体で今後の方向性を議論していく必要がある。関西と福井とでその先鞭(せんべん)をつけられないか。

 使用済み燃料の増加を懸念した福井県は、中間貯蔵施設を県外につくるよう関電と国に要求している。関電は昨年11月、「20年ごろに場所を決め、30年ごろに操業する」と約束した。

 関電は「消費地の関西に」というが、受け入れに前向きな自治体はない。だが消費地が向き合わなければならない問題だ。関電から関西の知事、政令指定市長が加わる関西広域連合に協議を申し入れてはどうか。

 この場に福井県も加われば、福島事故後に対立が深まった消費地と立地地域との関係を結び直す一歩にもなろう。

 むろんすぐに答えは出まい。だが、議論からもはや逃げられない。