北朝鮮制裁決議 核の放棄へ強い圧力を
毎日新聞
国際社会が断固たる姿勢を示すことで、核保有国として認知されることなどないと北朝鮮に知らせる必要がある。
米国が、国連安全保障理事会で北朝鮮に対する追加制裁決議案を配布した。北朝鮮への航空機燃料の輸出禁止や、北朝鮮を出入りする全ての貨物に対する検査を義務づけている。近日中に採択される見通しだ。
今までの国連制裁は、核・ミサイル開発に関連する「ヒト、モノ、カネ」の流れを対象としていた。今回はそうした限定を外し、「従来とは質的に異なる」(吉川元偉国連大使)強い制裁で北朝鮮を圧迫することを狙っている。
北朝鮮が国際社会の声に耳を傾けなければ、制裁はさらに強化されていく。この基調が変わることはない。核開発と経済成長を同時に追求するという金正恩(キムジョンウン)第1書記の政策は、とうてい実現不可能だ。
北朝鮮が1月6日に4回目の核実験を行ってから、既に2カ月が過ぎようとしている。強い制裁に消極的な中国との調整に時間がかかったためだ。核実験から1カ月以内に制裁決議を採択してきたこれまでに比べ、遅くなったのは残念だ。
日米韓はその間に相次いで独自制裁の強化に踏み切った。中国が最終的に歩みよった背景には、結束した日米韓とにらみあう構図は中国の利益にならないという判断もあったのだろう。
北朝鮮は、制裁を巡る議論に時間がかかったことを自分たちの戦略の成功だと誤解してはならない。
中国は北朝鮮の崩壊や混乱を望んでいないが、冷戦時代のような守護者としての役割を引き受ける考えもないのである。
中国の王毅外相は米国での講演で決議案が採択されれば中朝関係にも影響が出ると語った。制裁を実効性あるものとするためには中国による着実な履行が不可欠だ。中国が、より強い決意で臨むということであれば歓迎したい。
韓国では来月7日から4月末まで米韓合同軍事演習が行われる。北朝鮮への圧力の一環として過去最大規模になると予告されている。
北朝鮮は、敵の首脳部殺害を担当する特殊部隊も参加すると見て、特殊部隊に動きがあれば先制攻撃すると強く反発している。北朝鮮はさらなる挑発行動に出てはならない。日米韓は連携して警戒を強める必要がある。
ただ、制裁は万能薬ではない。軍事力を使っての問題解決という選択肢がない以上、最終的には外交的手段を追求することになる。そのためにも、強い制裁によって核保有では道を切り開けないと金第1書記に痛感させることが重要だ。