1票の格差 もう小手先では済まぬ
毎日新聞
衆院小選挙区の「1票の格差」はさらに拡大し、格差是正はいよいよ待ったなしだ。今度は小手先で終わらせない選挙制度改革を早急に実現させなくてはならない−−それを改めて与野党に求める2015年の国勢調査(速報値)といえよう。
調査によると議員1人当たりの人口が最も多い東京1区と最も少ない宮城5区とでは2・334倍の開きがある。最高裁の違憲判断の目安とされる格差2倍を上回ったのは東京1区を含め37選挙区に上る。
10年の国勢調査を受けて衆院は小選挙区の「0増5減」策を講じて、最大格差を1・998倍に当時は収めた。だが、それが一時しのぎだったことを物語っている。
にもかかわらず新たな是正策実現のメドが立たない。衆院議長の諮問機関が答申した改革案のうち、自民党は定数10削減(小選挙区6、比例代表4)は受け入れたものの、都道府県単位の定数配分について答申が提案した「アダムズ方式」の導入は先送りしようとしているからだ。
小選挙区を6減らす場合、今回の調査を基にアダムズ方式で試算すると、定数は東京都など5都県で計9増、15県で1ずつ減り「9増15減」となる。10年の国勢調査を基にした配分では「7増13減」だから、増減対象はさらに増えることになる。
アダムズ方式が格差をより安定的に是正できる仕組みであることを示しているともいえよう。しかし自民党の抵抗は、この試算により、ますます強まりそうだ。
自民党は定数増はせず、6県の小選挙区を1ずつ減らす「0増6減」を主張している。削減の影響を受ける現職議員を少なくしたいからにほかならない。だが、「0増5減」同様、これも一時しのぎだ。
現行の定数配分は都道府県にまず各1議席配分する「1人別枠方式」を採用している。最高裁はこれが格差を生む大きな要因だとして撤廃を求めているが、自民案は実際には、「別枠」に近いという問題もある。
公明党や民主、維新両党はアダムズ方式を支持している。将来にわたり安定的に格差是正を進めるため、やはり自民党も今度の改革から導入することを決断すべきである。
今回の国勢調査では日本の総人口は調査開始以来、初めて減少に転じた。「1票の格差」の拡大は地方から東京圏への人口流出が一段と進んでいることも表している。
地方の衆院議員が減ることへの不満は無論、地元住民にもあろう。ただし、「1票の格差」是正は憲法上避けられない課題だ。人口流出をどう食い止めるかは、議員の数の話とは別に、政府と国会を挙げて早急に取り組むべき政策の課題である。