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 京都市への全面的な移転という政府の方針に対し、当事者である文化庁からは「これまで通り、事業を進めることができるのか」と行政機能の弱体化を心配する声があがっている。

 政治主導での移転構想が現実味を帯びるに従い、庁内では「政治が決める通り、やらせていただく」(青柳正規長官)といった受け入れやむなしの空気が広がっている。だが、今回明らかになった内容には反発も出た。

 「移転の前提は、機能強化。その人数では、国の文化行政はとてもまわらない」。長官以下大半の職員を京都在勤とし、東京に残すのは1割程度という案に、文部科学省幹部は実現性を疑問視した。

 同庁の職員は、非常勤を含めると総勢約360人。担当分野は、文化財の保護や世界文化遺産の登録推進、常用漢字表の策定、宗教法人の認証など多岐にわたる。政府は東京に数十人程度を残す方針だが、「30人程度で外交も国会対応もするのは無理」と言う。環太平洋経済連携協定(TPP)に伴う著作権法改正の作業だけでも、関係省庁とのやりとりや審議会の開催、国会対応に約20人の職員が連日追われたという。