ニューハンプシャー・サウスカロライナ・ネバダでのトランプ勝利の先にあるもの
サウスカロライナ州・ネバダ州でトランプ氏勝利、代議員獲得数で82となって2位以下を大きく突き放した格好となりました。リベラルなニューハンプシャーと保守的なサウスカロライナの両州を制したこと、現場の運動力がモノを言う苦手の党員集会(ネバダ州)で圧勝したことなど、トランプ氏の実力が証明されたものと思います。
通常の予備選挙であればトランプ氏の指名獲得で決着がついたと言える状況ですが、今回の共和党予備選挙は極めて歪な権力構造が入り乱れており、依然としてトランプ氏が代議員数で過半数を獲得して共和党の指名を得られるか否かは予断を許さない状況と言えます。
トランプ陣営の基本的な選挙戦略である「構図」への修正圧力
トランプ氏の選挙戦略は極めて明快であり、「トランプVSそれ以外」という演出を徹底することにあります。そして、メディアの話題の中心を常に自分に集中させることによって、他候補者への関心を分散させて票を散らせるというやり方です。
トランプ氏の選挙戦略は「一人を選ぶ」選挙において極めて有効な戦略であって日本でも実行されることがあります。全ての対立候補者に自分を批判させることによって露出機会を確保して一定の支持層を固めて勝利に滑り込むということが狙いです。対立候補者やメディアが「トランプ」という言葉を口にするだけで良い宣伝になるわけです。
最も顕著な出来事として、トランプ氏がアイオワ州の党員集会直前でのディベートをボイコットして、ディベート会場から直ぐ近くの場所で退役軍人へのチャリティーを主催してみせたことが挙げられます。トランプ抜きの討論会は盛り上がりに欠けており、トランプ氏は誰が予備選挙の主役なのかを明確にしてみせたと言えます。アイオワ州ではクルーズ氏に敗北しているものの、クルーズ・ルビオらに票が割れた結果として負け幅は軽微なレベルで済みました。
しかし、サウスカロライナ州予備選挙・ネバダ州党員集会を受けてトランプ氏の選挙戦略に修正を加える変化が発生しました。それはジェブ・ブッシュ氏の撤退とマルコ・ルビオ氏の台頭です。選挙戦を左右するスーパーチューズデーよりも前段階でトランプ氏にとって不都合な状況変化が起きたと思われます。
ちなみに、日本の有識者らは昨年ブッシュ氏が大統領候補として最有力と述べていた人々が多く、現在となっては無根拠な噂話レベルの思い込みであったことが証明される結果となりました。筆者はマルコ・ルビオ氏については日経ビジネスオンラインで2012年当時から共和党内で台頭することを明言し、2016年予備選挙はトランプ氏VSルビオ氏の構図になることは早くから指摘しています。
メディアは自然な流れとして、トランプ・クルーズ・ルビオの三つ巴として報道
サウスカロライナ州の予備選挙以後のキーワードは「3つ巴」です。つまり、トランプ、クルーズ、ルビオの3名が同列に並べられてメディア上で語られるようになっています。また、有権者の基本認識としても、アウトサイダーのトランプ、保守派のクルーズ、主流派のルビオ、という三国志状態でインプットされていることは間違いありません。
そして、このような状況こそがトランプ氏が最も恐れていた状態であるということが言えるでしょう。つまり、トランプVSそれ以外であればトランプ氏は常に1位であり、場合によっては各州からの代議員の過半数を取得することも可能であったかもしれません。しかし、実際にはトランプ氏の全米支持率は30%前後で固定化しており、圧勝したネバダ州でも約45%の得票に留まります。
その結果として、3つ巴という認識が有権者に刷り込まれると、トランプ30、クルーズ30、ルビオ30のように誰も過半数を取ることができなくなります。予備選挙の制度で勝者総取り州もありますが、代議員の過半数を獲得しきるかは不透明な状況です。
そして、党大会での第一回投票において代議員の過半数を獲得できる候補者がいなかった場合、第二回投票として1位と2位の決選投票に持ち込まれることになります。
このような状況になると、共和党の政界要人らの影響力が増加して、彼らからの支持を得ていないトランプ氏は苦しい立場に立つことになることは明白です。要は3つ巴という状況はトランプ陣営にとって最も望ましくない状況だと言えるでしょう。
スーパチューズデー、共和党予備選挙ポイント(2)に続く
渡瀬裕哉(ワタセユウヤ)
早稲田大学公共政策研究所地域主権研究センター招聘研究員
東京茶会(Tokyo Tea Party)事務局長、一般社団法人Japan Conservative Union 理事
その他の個人ブログ記事を読みたい人はこちらまで
サウスカロライナ州・ネバダ州でトランプ氏勝利、代議員獲得数で82となって2位以下を大きく突き放した格好となりました。リベラルなニューハンプシャーと保守的なサウスカロライナの両州を制したこと、現場の運動力がモノを言う苦手の党員集会(ネバダ州)で圧勝したことなど、トランプ氏の実力が証明されたものと思います。
通常の予備選挙であればトランプ氏の指名獲得で決着がついたと言える状況ですが、今回の共和党予備選挙は極めて歪な権力構造が入り乱れており、依然としてトランプ氏が代議員数で過半数を獲得して共和党の指名を得られるか否かは予断を許さない状況と言えます。
トランプ陣営の基本的な選挙戦略である「構図」への修正圧力
トランプ氏の選挙戦略は極めて明快であり、「トランプVSそれ以外」という演出を徹底することにあります。そして、メディアの話題の中心を常に自分に集中させることによって、他候補者への関心を分散させて票を散らせるというやり方です。
トランプ氏の選挙戦略は「一人を選ぶ」選挙において極めて有効な戦略であって日本でも実行されることがあります。全ての対立候補者に自分を批判させることによって露出機会を確保して一定の支持層を固めて勝利に滑り込むということが狙いです。対立候補者やメディアが「トランプ」という言葉を口にするだけで良い宣伝になるわけです。
最も顕著な出来事として、トランプ氏がアイオワ州の党員集会直前でのディベートをボイコットして、ディベート会場から直ぐ近くの場所で退役軍人へのチャリティーを主催してみせたことが挙げられます。トランプ抜きの討論会は盛り上がりに欠けており、トランプ氏は誰が予備選挙の主役なのかを明確にしてみせたと言えます。アイオワ州ではクルーズ氏に敗北しているものの、クルーズ・ルビオらに票が割れた結果として負け幅は軽微なレベルで済みました。
しかし、サウスカロライナ州予備選挙・ネバダ州党員集会を受けてトランプ氏の選挙戦略に修正を加える変化が発生しました。それはジェブ・ブッシュ氏の撤退とマルコ・ルビオ氏の台頭です。選挙戦を左右するスーパーチューズデーよりも前段階でトランプ氏にとって不都合な状況変化が起きたと思われます。
ちなみに、日本の有識者らは昨年ブッシュ氏が大統領候補として最有力と述べていた人々が多く、現在となっては無根拠な噂話レベルの思い込みであったことが証明される結果となりました。筆者はマルコ・ルビオ氏については日経ビジネスオンラインで2012年当時から共和党内で台頭することを明言し、2016年予備選挙はトランプ氏VSルビオ氏の構図になることは早くから指摘しています。
メディアは自然な流れとして、トランプ・クルーズ・ルビオの三つ巴として報道
サウスカロライナ州の予備選挙以後のキーワードは「3つ巴」です。つまり、トランプ、クルーズ、ルビオの3名が同列に並べられてメディア上で語られるようになっています。また、有権者の基本認識としても、アウトサイダーのトランプ、保守派のクルーズ、主流派のルビオ、という三国志状態でインプットされていることは間違いありません。
そして、このような状況こそがトランプ氏が最も恐れていた状態であるということが言えるでしょう。つまり、トランプVSそれ以外であればトランプ氏は常に1位であり、場合によっては各州からの代議員の過半数を取得することも可能であったかもしれません。しかし、実際にはトランプ氏の全米支持率は30%前後で固定化しており、圧勝したネバダ州でも約45%の得票に留まります。
その結果として、3つ巴という認識が有権者に刷り込まれると、トランプ30、クルーズ30、ルビオ30のように誰も過半数を取ることができなくなります。予備選挙の制度で勝者総取り州もありますが、代議員の過半数を獲得しきるかは不透明な状況です。
そして、党大会での第一回投票において代議員の過半数を獲得できる候補者がいなかった場合、第二回投票として1位と2位の決選投票に持ち込まれることになります。
このような状況になると、共和党の政界要人らの影響力が増加して、彼らからの支持を得ていないトランプ氏は苦しい立場に立つことになることは明白です。要は3つ巴という状況はトランプ陣営にとって最も望ましくない状況だと言えるでしょう。
スーパチューズデー、共和党予備選挙ポイント(2)に続く
渡瀬裕哉(ワタセユウヤ)
早稲田大学公共政策研究所地域主権研究センター招聘研究員
東京茶会(Tokyo Tea Party)事務局長、一般社団法人Japan Conservative Union 理事
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