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【正木利和のスポカル】
世界新を連発“氷上の王子”羽生の「霊性」 天才イチローも解く“技術の裏打ち”
結局のところ、技術は反復して身に付けていくしかない、ということなのである。
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男子フィギュアでグランプリ(GP)ファイナルを3連覇した羽生結弦(21)は、そうしたスポーツの「技術」を正しく身に付けているアスリートだと改めて認識させられた。
塚原さんのいう「反復」が技術を確立させる道であるとすれば、羽生はそれを今季、体現してみせたのである。
彼が今季最初に演じたスケートカナダでのフリーのあとの姿を覚えているだろうか。厳しいプログラムであるがゆえのことなのだろう、演技後の羽生の顔からは汗が噴き出し、精根尽き果てたような表情に見えたのである。
ところが、世界最高点を塗り替えた1カ月後のNHK杯では、演技後の汗がグンと減り、さらに完璧(かんぺき)な演技をみせたGPファイナルでは、ほとんどわからないまでになっていた。
つまり、彼は時間をかけて自分の技(4回転ジャンプ)をつくっていったのである。そうして技術を正しく身に付けることで、史上初の3連覇がかかる大会でも平然と演技できる域にまで到達した。
彼は正しく「技術」を身に付けたものだけが、まとう「霊性」があることに気付いていたのだろう。だから、「陰陽師(おんみょうじ)」を舞う羽生の演技には、鬼気迫る切れ味とすごみがあった。
かつて羽生は、こう語ったことがある。
「ジャンプがステップやターンの一部に見られるくらいでなければいけない」