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2009-02-07

親族間の不動産の売買VS贈与

| 10:05

2世帯住宅に建て替えて子供世帯と一緒に暮らすケースが多いと思いますが、中には、親世代が都心のマンションや田舎に引っ越し、広い住まいを必要としている子供世帯が親と一緒に暮らしていた家に代わりに住むということがあります。

この場合に、子供世帯は土地の名義も家の名義も親のままで、家賃も支払わずに住んでも税務上は何の問題も起こりません。

固定資産税や家の修繕費くらいは子供世帯が負担すればよいと思いますが、負担しなくても大丈夫です。

また、土地の名義は親のままで、子供が自分名義の建物に建て替えて住んでも税務上は何の問題も起こりません。

つまり、親子間で土地や建物を無償で借りる(これを「使用貸借」といいます)という行為に税金は発生しないので、慌てて土地や建物を子供名義に変える必要はないのです。

それでも、親の土地や建物を子供名義に変えたいという要望は結構多く、売買にするか贈与にするかという相談を受けます。

贈与については・・・

贈与税は相続税よりも非課税限度額が低く税率の累進度合が急なので税負担が大きいこと、贈与税では小規模宅地等の特例が適用できないことから、生前に土地を贈与することにメリットはあまりありません。

勿論、相続時精算課税を使って土地や建物の贈与を受けることは出来ます。土地や建物は財産評価基本通達による評価額で贈与税の計算をしますから、現金を贈与してもらうよりも親名義の土地建物を贈与してもらった方がお得だったりします。

相続時精算課税は使わずに、通常の贈与で何回かに分けて持分登記していくことも可能ですが、土地の評価額が大きい場合にはあまり現実的ではありません。通常の贈与では税負担なく不動産(特に土地)の名義を子供に移すことは難しいと思います。

売買については・・・

親子間であっても売買は出来ます。土地の一部の売買も可能です。

ただし、次のことを検討しておく必要があります。

1.時価での取引でなければならない

  贈与税や相続税では土地も建物も財産評価基本通達に則って評価しますので、時価よりも低い価額となります。

  しかし、売買(譲渡)は時価で行わなければ、取引価額と時価との差額に贈与税が課税されてしまいます。

2.子供に買い取る資金が必要

  売買の対価はきちんと支払わなければなりません。

  やはり「ある時払い」や「出世払い」では売買契約書があったとしても贈与とみなされる可能性があります。

  子供に買い取る資金がない場合には、銀行からの融資を受けることになりますが、親族間の不動産取引の場合には、通常の住宅ローンは組めない銀行が多いと聞きます。

  

3.住宅ローン控除

  住宅ローン控除は、同一生計の親族から住宅を購入した場合には適用されません。

4.親に譲渡所得が課税される

  不動産の売買によって売却益がある場合には、譲渡所得として課税されます。

  居住用の土地建物を第三者に売却した場合には、租税特別措置法第35条の居住用財産の譲渡所得の特別控除(いわゆる「3000万円控除」)が適用できますから、譲渡益が3000万円までであれば課税されません。しかし、配偶者・直径血族・生計を一にしている親族に譲渡した場合は適用除外となっています。


以上のように、税金だけに限定すれば売買の方が有利な場合が多いと思いますが、税金だけに限らずなるべくお金を用意することなく土地や建物の名義を子供に移したいということであれば、贈与に軍配が上がります。

相続を待たずに子供に財産を移す目的が、”相続財産を減らすこと”だとすると相続時精算課税を選択してはいけない資産家の方だと思いますから、賃貸用不動産の建物だけを贈与してその収益を子供に移す、株式の価額が下がっているので、株の名義を通常の贈与を使って何年かに分けて変更するといった他の財産を移していくという方法を考えた方が良いかもしれません。(賃貸用不動産の贈与についてのメリットは12月26日に書きましたので読んでみて下さい。)

たとえ遺言を残していても実際の遺産分割がどのように行われるのかが不安なので、”生前にきちんと渡したい相手に自分で財産を渡す”ことが目的であれば、税負担や一定の資金を用意することを納得したうえで実行するしかないのだと思います。

  

 

新明新明 2009/03/24 08:29 大変勉強になりました。現在親(父親無し母親名義土地)名義土地に二世帯住宅を建てる予定です。母は収入がないため扶養家族とし生活費も全て面倒みています。同居した場合固定資産税も払って行くのだから土地の名義も変えてもらいたいと思ってしまいます。

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