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“ビキニ水爆実験で被爆” 船員保険の適用を申請
2月26日 14時57分

“ビキニ水爆実験で被爆” 船員保険の適用を申請
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62年前、太平洋のビキニ環礁でアメリカが行った水爆実験によって被爆し、がんなどを発症したとして、周辺で操業していた漁船の高知県の元乗組員や遺族が、一般の労災保険にあたる船員保険の適用を申請しました。元乗組員は「今も多くの人が苦しんでいるので救済につなげていきたい」と話しています。
アメリカが昭和29年に太平洋のビキニ環礁で行った水爆実験では、静岡県の漁船「第五福竜丸」の乗組員23人が被爆し、半年後に1人が死亡しました。
このビキニ事件を巡っては、おととしになって周辺で操業していたほかの漁船の乗組員からも通常より高い放射線量が検出されていことが分かり、元乗組員の支援を行ってきた民間の団体が健康状態などを調査していました。その結果、高知県の10人について、元乗組員やその遺族が船員手帳などの記録や病気の診断書などから、水爆実験で被爆した影響でがんなどを発症したとして、26日に全国健康保険協会の高知支部に船員保険の適用を申請しました。船員保険は、一般の労災保険にあたり、支援団体によりますと、適用が認められれば、「第五福竜丸」の乗組員以外では初めてで、治療費が支払われるほか、年金も増額されます。

「仲間の救済や真相の解明を」

船員保険の適用を申請した元乗組員の1人、高知市の桑野浩さん(83)は、21歳の時にビキニ事件に巻き込まれました。昭和29年3月に、マグロ漁船の甲板員としてビキニ環礁近くの海域で操業していたところ、黒い灰が雪のように降ってくるのを見たといいます。
事件のあと、桑野さんは鼻血が大量に出たり白血球が異常に増えたりする症状に悩まされました。こうしたなかで、同じ船に乗っていた仲間が40歳代や50歳代で次々と亡くなり、「水爆実験で被爆し、自分たちの健康に影響が出ているのではないか」と不安を感じるようになったといいます。
桑野さん自身も12年前には、胃がんになって手術を受けました。現在も薬を毎日飲み、定期的に病院に通う生活を余儀なくされています。桑野さんは、今回の申請にあたって先月11日、広島と長崎の被爆者や第五福竜丸の元乗組員の健康調査を行ってきた静岡県の聞間元医師の診察を受けました。
聞間医師は「広島・長崎の被爆者と同じように被爆の影響を受けていると考えられる。症状や病歴などから被爆の影響でがんを発症したと十分に証明できる」としています。
桑野さんは「漁から戻ってきたときに、船やマグロについては放射能の検査をしたのに、船員への対応は何もなかった。自分の申請を認めてもらい、仲間の救済や真相の解明につなげていきたい」と話しています。

申請は“氷山の一角” 早期の救済を

ビキニ事件では、周辺の海域で操業していたおよそ1000隻の船のうち、3分の1近くに当たる270隻ほどが高知県の船でした。高知県内の300人余りの元乗組員への調査を行ってきた民間の支援団体によりますと、事件から62年がたち、このうち9割ほどの人がすでに亡くなったということです。
高知県土佐清水市の武政弘子さんは、おととし、乗組員だった夫の昭善さんを80歳で亡くしました。昭善さんはがんなどの病気を繰り返し、亡くなる直前には、食事がのどを通らず、好きだった酒も飲めなくなったと言います。武政さんは、亡くなった昭善さんのためにもビキニ事件の真相を明らかにしたいと、今回、船員保険の適用を申請しました。
武政さんは「今回の申請をきっかけに実際に何があったのかがはっきりして、事件のあとの国の対応の検証につながれば夫も救われる」と、真相解明に期待を寄せています。
支援団体の山下正寿事務局長は「今回申請する人はごく一部で、“氷山の一角”にすぎない。今回の申請を認めてもらい、2次・3次と申請を行って元乗組員や遺族の救済を早く実現したい」と話しています。

船員保険適用適用申請に至る経緯は

ビキニ事件は、62年前の昭和29年3月、アメリカが太平洋・マーシャル諸島のビキニ環礁で行った水爆実験で、静岡県のマグロ漁船「第五福竜丸」の乗組員23人が、いわゆる死の灰を浴びて被ばくし、半年後に無線長の久保山愛吉さんが死亡したものです。広島、長崎に続く「第三の被爆」とも言われ、全国的な反核運動のきっかけになりました。
水爆実験が行われたころ、周辺の海域では、第五福竜丸のほかにも多くの日本の漁船が操業していて、このうち470隻余りの漁船の乗組員について、およそ10か月間、放射線量が測定されていました。この記録について、支援団体の山下正寿事務局長が情報公開請求を行ったところ、国は、おととし9月に記録を開示しました。記録には、第五福竜丸以外の12隻の漁船の一部の乗組員から、通常自然界で被ばくする年間の放射線量のおよそ2倍にあたる4ミリシーベルトを超える放射線量が検出されたことなどが記載されていました。中には40ミリシーベルトを超えていた乗組員もいたということです。この記録の開示をきっかけに、高知県の元乗組員についても被爆の可能性が指摘され、今回の船員保険の適用申請につながりました。船員保険の審査は全国健康保険協会で行われます。

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