米カリフォルニア州サンバーナーディーノで起きた銃乱射事件の犯人が使用していたiPhoneのロック解除をめぐり、Appleに米連邦捜査局(FBI)への協力を命じた裁判所命令について、同社のティム・クックCEOは2月24日、この命令に従えば米国に悪影響が及び、多くの米国民の感情を害する前例を作ることになりかねないとの考えを示した。
クック氏はこの裁判所命令が先週下されて以来初めてインタビューに応じ、ABC Newsの番組で次のように語った。「世の中には難しいこともあれば、正しいこともあり、その両方に当てはまることもある。今回の件も、そうしたことの1つだ」。さらに同氏は、政府が要求しているのは「がんに等しいソフトウェア」だと指摘し、この問題のより良い解決に向けてバラク・オバマ大統領と直接話をするつもりだと続けている。
その後、最高裁まで戦うつもりはあるかと尋ねられたクック氏は「この問題については最後まで戦い抜くつもりだ」と答えている。
さらに同氏は、司法省が裁判所に命令を要請する前にオバマ政権ともっと話し合いがあって然るべきだったとの考えも明らかにした。
「この申し立てについては報道で知った。こういうやり方はよくない。この国にとってこれほど重要な問題に、このような方法で対処すべきではない」とクック氏は語る。このインタビューは「ABC World News Tonight」で放送された。
Appleはこの裁判所命令を拒否する考えを表明している。同社はこの命令に対し、26日までに回答を提出する必要がある。
問題のiPhoneは、昨年12月にサンバーナーディーノで起きた銃乱射事件の犯人であるサイード・リズワン・ファルーク容疑者が使用していたもの。同容疑者が妻と起こした銃乱射事件では、14人が死亡し、22人が負傷している。
司法省はAppleに対し、押収したiPhone 5Cに保存されている暗号化されたデータにアクセスできるよう、パスワード保護を無効にするソフトウェアを作成し、間違ったパスワードを何度入力しても端末上のデータが消去されないようにすることを求めている。
Appleはこの要請に対し、企業に自社製品のハッキングを求めているも同然であり、結果的にはさらに広くデジタルセキュリティを損なうことにつながりかねないと反発している。
「このようなことをすれば米国に悪影響が及ぶだろう。米国の多くの人たちの感情を害する先例になりかねない。このような行為による利益と不利益を考えれば、私たちは正しい選択をしているはずだ」とクック氏は語る。
主要IT企業の中には、Appleに対する全面的な支持を表明しているところもあれば、控えめな論調でデジタルセキュリティの重要性を訴えているところもある。Verizon CommunicationsのCEO、ローウェル・マカダム氏は24日、Reutersの取材に応じ、「バックドアのない強力な暗号化技術の利用」を支持する考えを示している。
iPhoneをめぐる今回の要請について、政府はバックドアアクセスの提供を要求しているわけではないと繰り返し強調している。
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