北海道美瑛町の観光名所「哲学の木」が今月24日、所有者によって倒された。美しい田園風景や雪景色の中で映えたポプラ。老いて自然に倒れる恐れがあったほか、写真撮影の観光客が周囲の畑を踏み荒らすマナー違反が理由という。所有者の男性(68)は「ずっと一緒だった木。寂しいよね」と話している。
哲学の木は直径約1.8メートル、高さ約30メートル。やや斜めに立っているようにも見え、こう呼ばれるようになった。1960年代半ばに植えられたといい「畑の栄養をもらいながら、のんびり育った」(男性)という。
ポプラは成長が早い半面、寿命は比較的短いとされる。丘の上で風雪に耐えてきた哲学の木は樹勢が衰え、畑に倒れて農作物に被害を及ぼすことが心配だったという。
ほかに長年にわたって男性を悩ませてきたのは、写真撮影のため、周囲の畑に無断で立ち入るマナーの悪い観光客の存在だった。路上駐車も目立った。看板を立てて注意を呼びかけても、あまり効果は見られなかった。
万が一、木が畑に忍び込んだ人に倒れかかり、けがをする人が出たらどうしよう――。善意で観光を支えてきたのに男性の悩みは深まっていったという。24日、男性も見守る中、依頼した業者により木を倒す作業が行われた。〔共同〕