カリフォルニア州サンバーナディーノで銃を乱射したとされる人物の「iPhone(アイフォーン)」のロック解除を支援するよう米連邦捜査局(FBI)から求められている件で、アップルは今週、米国政府が227年前に制定された法律を使って支援を強制しようとしていることに異議申し立てを行う。
米国西海岸のシリコンバレーを本拠地とする同社の法廷戦略を読み解くカギは、東海岸で行われている裁判にある。端末からのデータ抽出を強制するために政府が1789年(制定の)全令状法という法律を繰り返し利用していることに、同社が初めて立ち向かった裁判だ。
「政府がみなさんのiPhoneのロック解除を容易にするために全令状法を利用できるとしたら、政府はあらゆる人の端末に手を伸ばしてデータを入手する力を持つことになる」。アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)は先週、顧客にあてた書簡でこう語った。
アップルは昨年10月、ニューヨークでの裁判について、この状況は「中身を見たい金庫があれば、金庫メーカーの担当者に全米を巡回させて解錠にあたらせる、あるいは鍵メーカーの担当者を派遣してピッキングさせるために政府が全令状法を使おうとすることと何ら変わりはないだろう」と述べていた。
アップルの弁護士のセオドア・ブトロス氏は23日、ロサンゼルス・タイムズ紙に、直近の裁判所命令に対するアップルの法的対応の主眼は、この考え方を発展させたものになると語った。また、(ロック解除の)ソフトウエアをアップルに開発するよう強制するのは、合衆国憲法修正第1条にある言論の自由を侵害することになるという新たな見解も柱になるという。アップルは26日までに申し立てを行う。
ニューヨーク・テレフォン・カンパニーを当事者とし、1977年に行われた最高裁判所の事例がある。当局が「適切に処罰を行う」ために民間企業に支援を強制する際には、大まかに定められた全令状法を利用できるとの判断をここで示して以来、FBIは同法を好んで利用している。だが、これは論争の種にもなっている。「この法律はそもそも既存の制定法の穴を埋めるために作られた。権威をでっち上げるために作られたわけではない」。ハイテクセクターの業界団体であるコンピューター・通信産業協会(CCIA)のプライバシー担当弁護士、ビジャン・マドハニ氏はそう指摘する。
アップルは2010年の「iOS 4」公開以降、iPhoneの基本ソフト(OS)に少しずつセキュリティー機能を追加してきた。そのため、捜査当局が同社の支援を受けずにiPhoneからデータを引き出すことが次第に難しくなってきた。