デンマーク・コペンハーゲン「レレ relæ」のキッチン席。
デンマーク・コペンハーゲンのレストラン「レレ relæ」に行ってきた。

ランチのショートコースに出た、かぼちゃを使った一品。
ところで、今年こそはブログをマメに更新するぞと年頭に恒例の誓いを立ててはみたものの、本ページ右脇あたりにあるカレンダーの更新日は非常にさみしい限りのまばらさのまま、はや2月末。
北欧ネタやら香港ネタやら、書きたい話はいっぱいあるのだが、最近は書店営業やら納品やらにもかまけていたりして、あんまり手につかない日々。
とりあえず、去年の9月に旅行したコペンハーゲンの話を書いてみます。
レレです。

予約の際に「通常席」と「キッチン席」が選べたので、「キッチン」を選択してみたら、こんな眺めの席だった。
カジュアルさ、ラフさ、ヒップさ、フレンドリーさを強調した感じの雰囲気で、サービスも、位置が高めのテーブルに肘をつきながら「アレルギーとかは大丈夫かな? 何かリクエストがあったら遠慮なく我々に言ってほしいんだ」みたいな感じ。
スタッフにアジア系が、何人か。
ノマを筆頭とするいわゆるニューノルディック的カテゴリーのなか、比較的しつらえも値段もカジュアルな一店だと思われます。

飲みものは、まず地元の「コルスター KOLSTER」という名のブルワリーのビールを頼んでみた。
草のような香りがする。とてもホッピー。ライ麦のビールだそうだ。
コルスターは、コペンハーゲンより北へ35km、フレムベックという街にある「100%オーガニック」をうたうクラフトブルワリー。
デンマークでクラフトビールというと、まず「ミッケラー mikkeller」を思い浮かべるが(ミッケラー東京が閉店の知らせ・・・(2016年2月25日現在))、レレのメニューにはリストされていなかった。
ビールとは別に、ワインペアリングのコースも注文してみた。
ペアリングコースの1杯目はアップルサイダー(シードル)。

「エーブルロフ AEBLETOV」(リンゴ狩りの意味)というコペンハーゲン郊外にあるサイダリーで、やはりオーガニックで低温殺菌していないリンゴジュースからサイダーを作っているという。
作り手は、以前レレで働いていた人だとか。
突き出しとして出されたのは、

きゅうりとさやいんげんのバーニャカウダ。

パンとオリーブオイルが、こんな風に出てくる。
次の料理が出る前に、ペアリングコースの2杯目が。

La Paonnerie Voila du Gros Lot.
自然派の、なんとも「らしい」ワイン。
1品目の料理が出た。

ピックルド・マカレル。
つまり、しめ鯖だ。
つぶつぶした白いものは、カリフラワーをクスクス状に砕いたもの。
黄色いものが見えると思うが、レモンの皮。
魚の下には白いクリームがしいてあり、これはカリフラワーのクリームだろうか。
全体に、ほやーんとした感じの味わいで、鯖がなんともふっくら、ふわっとしている。レアに火を入れてあったかもしれない。そのふわっとした、あいまいで優しい鯖と、つぶつぶした少し奇妙なテクスチャーのカリフラワーの対比。
そうそう。

カトラリーとメニューは、引き出しのなかに入ってる。
ところでコースの途中ですが、ひとまず記事をアップするのが目的なので、アップ。
後半は、また次回。
つづく。
(よ)
ランチのショートコースに出た、かぼちゃを使った一品。
ところで、今年こそはブログをマメに更新するぞと年頭に恒例の誓いを立ててはみたものの、本ページ右脇あたりにあるカレンダーの更新日は非常にさみしい限りのまばらさのまま、はや2月末。
北欧ネタやら香港ネタやら、書きたい話はいっぱいあるのだが、最近は書店営業やら納品やらにもかまけていたりして、あんまり手につかない日々。
とりあえず、去年の9月に旅行したコペンハーゲンの話を書いてみます。
レレです。
予約の際に「通常席」と「キッチン席」が選べたので、「キッチン」を選択してみたら、こんな眺めの席だった。
カジュアルさ、ラフさ、ヒップさ、フレンドリーさを強調した感じの雰囲気で、サービスも、位置が高めのテーブルに肘をつきながら「アレルギーとかは大丈夫かな? 何かリクエストがあったら遠慮なく我々に言ってほしいんだ」みたいな感じ。
スタッフにアジア系が、何人か。
ノマを筆頭とするいわゆるニューノルディック的カテゴリーのなか、比較的しつらえも値段もカジュアルな一店だと思われます。
飲みものは、まず地元の「コルスター KOLSTER」という名のブルワリーのビールを頼んでみた。
草のような香りがする。とてもホッピー。ライ麦のビールだそうだ。
コルスターは、コペンハーゲンより北へ35km、フレムベックという街にある「100%オーガニック」をうたうクラフトブルワリー。
デンマークでクラフトビールというと、まず「ミッケラー mikkeller」を思い浮かべるが(ミッケラー東京が閉店の知らせ・・・(2016年2月25日現在))、レレのメニューにはリストされていなかった。
ビールとは別に、ワインペアリングのコースも注文してみた。
ペアリングコースの1杯目はアップルサイダー(シードル)。
「エーブルロフ AEBLETOV」(リンゴ狩りの意味)というコペンハーゲン郊外にあるサイダリーで、やはりオーガニックで低温殺菌していないリンゴジュースからサイダーを作っているという。
作り手は、以前レレで働いていた人だとか。
突き出しとして出されたのは、
きゅうりとさやいんげんのバーニャカウダ。
パンとオリーブオイルが、こんな風に出てくる。
次の料理が出る前に、ペアリングコースの2杯目が。
La Paonnerie Voila du Gros Lot.
自然派の、なんとも「らしい」ワイン。
1品目の料理が出た。
ピックルド・マカレル。
つまり、しめ鯖だ。
つぶつぶした白いものは、カリフラワーをクスクス状に砕いたもの。
黄色いものが見えると思うが、レモンの皮。
魚の下には白いクリームがしいてあり、これはカリフラワーのクリームだろうか。
全体に、ほやーんとした感じの味わいで、鯖がなんともふっくら、ふわっとしている。レアに火を入れてあったかもしれない。そのふわっとした、あいまいで優しい鯖と、つぶつぶした少し奇妙なテクスチャーのカリフラワーの対比。
そうそう。
カトラリーとメニューは、引き出しのなかに入ってる。
ところでコースの途中ですが、ひとまず記事をアップするのが目的なので、アップ。
後半は、また次回。
つづく。
(よ)
■
[PR]
#
by brd
| 2016-02-26 00:36
| デンマーク
|
Trackback
|
Comments(0)
ベトナム天ぷら割烹 柾 @ ECODA HẺM
さくっとした衣の下は、むっちりねっとり。絶妙に揚がった妖艶なほたてを、パクチーと塩で。

美味い!!! と、へ~!!!、が交錯します。
新井薬師の日本料理「柾」さんが江古田のベトナム料理「ヘム」のカウンターで、“ベトナム天ぷら割烹”のイベント・・・。
こういう系が大好きな我々が行かないわけありません。

こういうしつらえで。

天つゆ、大根おろし、東南アジア+日本な海老味噌、ヌクチャム、ライムに塩などが用意され、天ぷらのコースを、それぞれ柾さんのオススメの調味料・たれで食したり、独自にいろいろ試してみたり、という趣向。
天ぷらなのに、食器がマイマイ&ヘムのベトナムっぽいのだったりするのが、また良いです。
天ぷらは、

ごぼう(レモングラスや唐辛子の調味料、サテーのせ)、

いか(ディル添え)、

どんこ(干しえびのせ)、

きす、

京いも、

はす、

ねぎ、そして冒頭のほたて、と続きます。
ほくほくに揚がったきすを天つゆにつけて食べれば、美味しい! が、どこかでベトナム風味。
じつはこの天つゆ、ヌックマムを使ってあって(醤油は使ってない)レモングラスとバイマックルーの香りがつけてある。ぼんやりしていたら、フツーの美味しい天つゆとしてスルーしてしまうかもしれないほど「天つゆ」なのですが、作り方を聞くほどに、一同「へ~!!」という感じでびっくり。
基本和食、というか柾さんのお料理として本当に絶妙に美味しいのですが、そこかしこにベトナム風味が仕掛けてあって、その折衷方法を聞くだび、なるほどの驚きでまた納得。そんな、素晴らしいひとときでした。

お酒は佐渡の金鶴。

そして、ヘムおすすめのクラフトビール、ブルックリン・ラガーです。
柾さんの選んだ金鶴ももちろん最高ですが、濃厚なラガービールと天ぷら、イケました。
そして、最後の「お茶漬け」でとどめを刺されます。

これが、「柾式」で炊いたご飯に、ヌックマム風味のお出汁、大根おろしに、揚げ玉、パクチーという、これまで食べたことのないようなベトナム風お茶漬けなんですが、なんでしょうね、こういうの昔からあったような風情で美味い!
お酒もすすんでしまい、別に今日は「泥酔割烹」じゃないのに、けっこう飲みました。
江古田ヘムさん、今年はこういう試みをいっぱいやってくれそう。
実は、クラフトビール関連のネタもまだまだあるんです^^)Y
美味い!!! と、へ~!!!、が交錯します。
新井薬師の日本料理「柾」さんが江古田のベトナム料理「ヘム」のカウンターで、“ベトナム天ぷら割烹”のイベント・・・。
こういう系が大好きな我々が行かないわけありません。
こういうしつらえで。
天つゆ、大根おろし、東南アジア+日本な海老味噌、ヌクチャム、ライムに塩などが用意され、天ぷらのコースを、それぞれ柾さんのオススメの調味料・たれで食したり、独自にいろいろ試してみたり、という趣向。
天ぷらなのに、食器がマイマイ&ヘムのベトナムっぽいのだったりするのが、また良いです。
天ぷらは、
ごぼう(レモングラスや唐辛子の調味料、サテーのせ)、
いか(ディル添え)、
どんこ(干しえびのせ)、
きす、
京いも、
はす、
ねぎ、そして冒頭のほたて、と続きます。
ほくほくに揚がったきすを天つゆにつけて食べれば、美味しい! が、どこかでベトナム風味。
じつはこの天つゆ、ヌックマムを使ってあって(醤油は使ってない)レモングラスとバイマックルーの香りがつけてある。ぼんやりしていたら、フツーの美味しい天つゆとしてスルーしてしまうかもしれないほど「天つゆ」なのですが、作り方を聞くほどに、一同「へ~!!」という感じでびっくり。
基本和食、というか柾さんのお料理として本当に絶妙に美味しいのですが、そこかしこにベトナム風味が仕掛けてあって、その折衷方法を聞くだび、なるほどの驚きでまた納得。そんな、素晴らしいひとときでした。
お酒は佐渡の金鶴。
そして、ヘムおすすめのクラフトビール、ブルックリン・ラガーです。
柾さんの選んだ金鶴ももちろん最高ですが、濃厚なラガービールと天ぷら、イケました。
そして、最後の「お茶漬け」でとどめを刺されます。
これが、「柾式」で炊いたご飯に、ヌックマム風味のお出汁、大根おろしに、揚げ玉、パクチーという、これまで食べたことのないようなベトナム風お茶漬けなんですが、なんでしょうね、こういうの昔からあったような風情で美味い!
お酒もすすんでしまい、別に今日は「泥酔割烹」じゃないのに、けっこう飲みました。
江古田ヘムさん、今年はこういう試みをいっぱいやってくれそう。
実は、クラフトビール関連のネタもまだまだあるんです^^)Y
■
[PR]
#
by brd
| 2016-01-31 22:27
| 東京
|
Trackback
|
Comments(1)
分子小籠包で気づいた小籠包そのものの分子料理性
黒トリュフの香る、焼き腸粉。

こういう、わりと笑っちゃうような中華ベースのモダン料理を食べさせる香港のMic kitchenのランチに、去年のクリスマスごろ行ってきた。

ミシュラン三つ星を誇るBo Innovationのセカンドライン的な存在で、冒頭のトリュフ腸粉もBo Innovationの名物。
ランチは228HKDで前菜+メイン+デザートのプリフィクス。
トリュフ腸粉はランチメニューにあった「シグニチャー・サイドディッシュ」コーナーからの追加オーダー。
もう一品、シグニチャー・サイドディッシュの一品を紹介するためにこの記事を書いたのだが、ひとまず3人で食べたランチの皿を紹介しておこう。

臘腸(中華腸詰)入りフォアグラのサラダ。

いろんな種類のトマト、ビーツ、欖角(中国オリーブ)のパウダー、八珍(香港の甘酢)のソース、山羊のチーズのソース。

雲南地方シャングリラのヤクのチーズを使ったトーストと、海老でんぶのシーザーサラダ。
以上が前菜。
そしてメインは、

ロマネスコやカリフラワーなどグリル野菜と、焼きポレンタ。

マンダリン・フィッシュと、下の付け合せはパンチェッタ、ちりめんキャベツ、白いんげん豆。

仔牛とアスパラガスとリゾーニ(米粒型パスタ)。

デザートはこのようなもの。
で、書いておきたかったのは、この料理。

Molecular Xiao Long Bao。
メニュー表記はすべて欧文なのだが、ん? 何かと思えば、つまり、分子小籠包というわけだ。
これもシグニチャー・サイドディッシュの一品。
Bo Innovationの名物料理のようだから、もうそこらじゅうで書かれているのかもしれないが。
この黄色いボールをレンゲとともに口に入れると、わりと熱々で、すでに小籠包っぽい香りがしている。
で、思い切ってボールを「プチュッ」と口内でつぶすと、まさに小籠包としか言いようのないスープがあふれて口内を満たす。
液体のみで、肉などの餡はない。
上に乗っている赤い一筋は生姜だった。
そう。要するにこれ、正に小籠包を食べた時の体験と同様の感覚が味わえる。
だったら普通の小籠包を食べればいいじゃないか、という容易に想定可能な野暮な突っ込みには別の機会に応えるとして、やっぱり、食べたあとに笑っちゃう。
あまりにも小籠包なので。
このワンスプーン・スタイル、分子料理にありがちなプレゼンのひとつのような気がするが、小籠包もレンゲにのっけて一口でパクっと口に入れるのが作法であり、この、食べる際の行為の類似性も、料理の考案者が言いたいことのひとつだろう。
(※昔、上海の豫園にある南翔饅頭店に行ったら、客がみな小籠包を一口でパクっとやらずに、小さく皮を破って、その穴からチューと肉汁/スープをすする、という食べ方をしていたが、今もやってるんだろうか?)
調査したわけじゃないから以下は間違ってるかもしれないが、もともと上海名物の小型の包子だった小籠包は、台湾に渡って皮がどんどん薄くなり、いかに口の中に運ぶまで皮が破れず、口内でプチュッとはじけたとき美味しいスープがあふれるようにするか、多くの麺点師が技を競ってきたのだと思う。
以上のようなピンポイントを誇張し、デフォルメし、特殊な発展を遂げてきた小籠包って、思うに、もうすでに十分モラキュラー的だと言えないか。
つまり、ある意味、分子小籠包は小籠包の究極の形なのでは・・・。
(よ)
こういう、わりと笑っちゃうような中華ベースのモダン料理を食べさせる香港のMic kitchenのランチに、去年のクリスマスごろ行ってきた。
ミシュラン三つ星を誇るBo Innovationのセカンドライン的な存在で、冒頭のトリュフ腸粉もBo Innovationの名物。
ランチは228HKDで前菜+メイン+デザートのプリフィクス。
トリュフ腸粉はランチメニューにあった「シグニチャー・サイドディッシュ」コーナーからの追加オーダー。
もう一品、シグニチャー・サイドディッシュの一品を紹介するためにこの記事を書いたのだが、ひとまず3人で食べたランチの皿を紹介しておこう。
臘腸(中華腸詰)入りフォアグラのサラダ。
いろんな種類のトマト、ビーツ、欖角(中国オリーブ)のパウダー、八珍(香港の甘酢)のソース、山羊のチーズのソース。
雲南地方シャングリラのヤクのチーズを使ったトーストと、海老でんぶのシーザーサラダ。
以上が前菜。
そしてメインは、
ロマネスコやカリフラワーなどグリル野菜と、焼きポレンタ。
マンダリン・フィッシュと、下の付け合せはパンチェッタ、ちりめんキャベツ、白いんげん豆。
仔牛とアスパラガスとリゾーニ(米粒型パスタ)。
デザートはこのようなもの。
で、書いておきたかったのは、この料理。
Molecular Xiao Long Bao。
メニュー表記はすべて欧文なのだが、ん? 何かと思えば、つまり、分子小籠包というわけだ。
これもシグニチャー・サイドディッシュの一品。
Bo Innovationの名物料理のようだから、もうそこらじゅうで書かれているのかもしれないが。
この黄色いボールをレンゲとともに口に入れると、わりと熱々で、すでに小籠包っぽい香りがしている。
で、思い切ってボールを「プチュッ」と口内でつぶすと、まさに小籠包としか言いようのないスープがあふれて口内を満たす。
液体のみで、肉などの餡はない。
上に乗っている赤い一筋は生姜だった。
そう。要するにこれ、正に小籠包を食べた時の体験と同様の感覚が味わえる。
だったら普通の小籠包を食べればいいじゃないか、という容易に想定可能な野暮な突っ込みには別の機会に応えるとして、やっぱり、食べたあとに笑っちゃう。
あまりにも小籠包なので。
このワンスプーン・スタイル、分子料理にありがちなプレゼンのひとつのような気がするが、小籠包もレンゲにのっけて一口でパクっと口に入れるのが作法であり、この、食べる際の行為の類似性も、料理の考案者が言いたいことのひとつだろう。
(※昔、上海の豫園にある南翔饅頭店に行ったら、客がみな小籠包を一口でパクっとやらずに、小さく皮を破って、その穴からチューと肉汁/スープをすする、という食べ方をしていたが、今もやってるんだろうか?)
調査したわけじゃないから以下は間違ってるかもしれないが、もともと上海名物の小型の包子だった小籠包は、台湾に渡って皮がどんどん薄くなり、いかに口の中に運ぶまで皮が破れず、口内でプチュッとはじけたとき美味しいスープがあふれるようにするか、多くの麺点師が技を競ってきたのだと思う。
以上のようなピンポイントを誇張し、デフォルメし、特殊な発展を遂げてきた小籠包って、思うに、もうすでに十分モラキュラー的だと言えないか。
つまり、ある意味、分子小籠包は小籠包の究極の形なのでは・・・。
(よ)
■
[PR]
#
by brd
| 2016-01-11 03:40
| 香港
|
Trackback
|
Comments(4)
コペンハーゲンKødbyen(肉の町)のレストランホッピング
あけましておめでとうございます。
このところ各種告知めいた記事ばかりが続いたので、新年一本目は初心に戻ろうということで、純粋な食べ歩きリポートを。

コペンハーゲンのブルーパブWARPIGSのリポートでも触れた、元食肉市場のKødbyen(肉の町)エリアはヒップな感じというか、最近っぽい雰囲気が漂っており、良さそうな飲食店も多いんだけれど、旅行中にじっくり一軒一軒試す時間はない。そこで、いくつかの店をハシゴすることで夕飯を完遂するレストランホッピングを企てた。
時期は2015年の9月。
さて。まずは一軒目。

WARPIGSに再び。

アペリテフのつもりで、22タップの中からセッションIPAをチョイス。

これがめっちゃウマ。
ホッピーでフルーティでドリンカブル。爽やか。冴えてる。頭の芯までシャッキーンとする清々しさ。ホップを強調したビールの理想形のような味わいで、最初からアガる一杯。

嬉しくなってWARPIGSのTシャツまで買ってしまった。
フランクな店のスタッフが「東京に住んでいたこともあるよ」と話しかけてくれた。
二軒目。

イタリアンのmother。
ここはサワードウ・ピッツァが看板らしいのだが、それを食べるとお腹がいっぱいになってしまいそうなので、ワインと、

モツァレラを。

このモツァレラが地元のオーガニックなミルクで作った自家製なんだとか。さすが。クリーミーで美味い。
食べてもいないのに撮影させてもらったピッツァの窯はこんな感じ。

三軒目。

魚料理で有名な、FISKEBAR。
KØDBYENS FISKEBARで「肉の町の魚のバー」ということかな? ちょっと矛盾な感じ。それもまたここっぽい。

こんなカワイイ感じでパンとバターが出てくる。

生牡蠣は、味わいのキャラクターの違う4種の産地から選べる。どこのを選んだか・・・忘れてしまった。が、美味かった。
そして、鯖の料理を頼んだら、これが結構凝っている。

魚にはラルドがかぶせてあって、ソースはアイヨリとアンチョビ。グリーントマト。パリパリはヨーグルト、とか言ってたかな?
ダイニングの中心にカウンターのバーがあって、囲むようにテーブル席がある。バーで軽くつまんで飲むこともできるけど、料理がけっこう美味しくて、ちゃんとしている。
ガストロノミー系レストランの一皿のようなクオリティで、もしかしたらここはコースでしっかり食べたほうが良かったのでは・・・と後ろ髪をひかれながら、しかし、初心貫徹、次の店へ!

KUL。ここもモダンな料理で評判のレストランなんだけど、一皿二皿で済ませるにはちょい敷居高そうで、勇気が出ず、パス。
さて、四軒目。

NOSE2TAILへ。

店名はNose to Tail(ノーズ トゥ テイル)ってことで、鼻先から尻尾の先まで残さず捨てず全部食べ尽くすという意味。肉料理のお店。
店内、地下室感満点。
かつてパテの工場だったとか。当時の雰囲気を残すような内装にしてある。

EAT MORE BACON AND HAVE MORE SEXとか書いてあった(笑)。

なかなか美味しいシャルキュトリ盛り合わせ。豚、牛、鴨のハムやレバパテなど並べたまな板にナイフをぶっ刺して出てくるプレゼンがイイでしょ?
ラム肉の入ったサラダも食べて、かなり満腹に。
五軒目。

MAGASASA。
・・・と思ったのに、ここ、ラストオーダー後だった。
くー、残念。
わりと閉まるの早いんだ(22:00くらい?)。
DIM SUMとあるように中華のお店で、さっき店前を通りかかったとき中国系と思しき麺点師が手延べで製麺している様子が外から見えていたので、おお、シメは絶対に麺!って決めてたのに~。
ウェブサイトを見ると、面白げなカクテルもあり。
ここの店、北欧関係の著書がいっぱいある森百合子さんのガイドブックでミッケラーのミッケル・ボルグがリコメンドしてた。要チェック。誰か利用した人がいたら、どうだったか教えてください。
別の日の夜だけど、Kødbyenはこんな感じでライブのイベントをやってたりもする。

ちょうどテクノのDJがバッキバキなプレイをしていて、Kødbyenを出てかなり離れても音が聴こえるくらいの音量でやっていた。スゴイなー。
ミッケラーのビールカーも出動して観客たちにビール販売。盛り上がってた。
あと、Kødbyenにはincoなる超巨大食品スーパーがある。

ここも非常に面白い。

中に入るとこんな感じで、どこまで行っても食品、食品、食品・・・。

ビールもクラフト系から大手のまでけっこう揃ってる。

こちらは加工肉関係。

チーズも種類豊富。

アジア食材のコーナーにはタイのガピから日本の搾り柚子のボトルまで。
もう、いろいろ買う気満点で広大な店内を巡ってたんだけど(しかも市中よりずいぶん安い!)、どうやら業者向けの店らしくて日本人観光客には売ってもらえなかった・・・。
ここ、旅行者でも買える方法、ないのでしょうか。
以上、コペンハーゲンKødbyenリポートでした。
今年もよろしくお願いします!
(よ)
このところ各種告知めいた記事ばかりが続いたので、新年一本目は初心に戻ろうということで、純粋な食べ歩きリポートを。
コペンハーゲンのブルーパブWARPIGSのリポートでも触れた、元食肉市場のKødbyen(肉の町)エリアはヒップな感じというか、最近っぽい雰囲気が漂っており、良さそうな飲食店も多いんだけれど、旅行中にじっくり一軒一軒試す時間はない。そこで、いくつかの店をハシゴすることで夕飯を完遂するレストランホッピングを企てた。
時期は2015年の9月。
さて。まずは一軒目。
WARPIGSに再び。
アペリテフのつもりで、22タップの中からセッションIPAをチョイス。
これがめっちゃウマ。
ホッピーでフルーティでドリンカブル。爽やか。冴えてる。頭の芯までシャッキーンとする清々しさ。ホップを強調したビールの理想形のような味わいで、最初からアガる一杯。
嬉しくなってWARPIGSのTシャツまで買ってしまった。
フランクな店のスタッフが「東京に住んでいたこともあるよ」と話しかけてくれた。
二軒目。
イタリアンのmother。
ここはサワードウ・ピッツァが看板らしいのだが、それを食べるとお腹がいっぱいになってしまいそうなので、ワインと、
モツァレラを。
このモツァレラが地元のオーガニックなミルクで作った自家製なんだとか。さすが。クリーミーで美味い。
食べてもいないのに撮影させてもらったピッツァの窯はこんな感じ。
三軒目。
魚料理で有名な、FISKEBAR。
KØDBYENS FISKEBARで「肉の町の魚のバー」ということかな? ちょっと矛盾な感じ。それもまたここっぽい。
こんなカワイイ感じでパンとバターが出てくる。
生牡蠣は、味わいのキャラクターの違う4種の産地から選べる。どこのを選んだか・・・忘れてしまった。が、美味かった。
そして、鯖の料理を頼んだら、これが結構凝っている。
魚にはラルドがかぶせてあって、ソースはアイヨリとアンチョビ。グリーントマト。パリパリはヨーグルト、とか言ってたかな?
ダイニングの中心にカウンターのバーがあって、囲むようにテーブル席がある。バーで軽くつまんで飲むこともできるけど、料理がけっこう美味しくて、ちゃんとしている。
ガストロノミー系レストランの一皿のようなクオリティで、もしかしたらここはコースでしっかり食べたほうが良かったのでは・・・と後ろ髪をひかれながら、しかし、初心貫徹、次の店へ!
KUL。ここもモダンな料理で評判のレストランなんだけど、一皿二皿で済ませるにはちょい敷居高そうで、勇気が出ず、パス。
さて、四軒目。
NOSE2TAILへ。
店名はNose to Tail(ノーズ トゥ テイル)ってことで、鼻先から尻尾の先まで残さず捨てず全部食べ尽くすという意味。肉料理のお店。
店内、地下室感満点。
かつてパテの工場だったとか。当時の雰囲気を残すような内装にしてある。
EAT MORE BACON AND HAVE MORE SEXとか書いてあった(笑)。
なかなか美味しいシャルキュトリ盛り合わせ。豚、牛、鴨のハムやレバパテなど並べたまな板にナイフをぶっ刺して出てくるプレゼンがイイでしょ?
ラム肉の入ったサラダも食べて、かなり満腹に。
五軒目。
MAGASASA。
・・・と思ったのに、ここ、ラストオーダー後だった。
くー、残念。
わりと閉まるの早いんだ(22:00くらい?)。
DIM SUMとあるように中華のお店で、さっき店前を通りかかったとき中国系と思しき麺点師が手延べで製麺している様子が外から見えていたので、おお、シメは絶対に麺!って決めてたのに~。
ウェブサイトを見ると、面白げなカクテルもあり。
ここの店、北欧関係の著書がいっぱいある森百合子さんのガイドブックでミッケラーのミッケル・ボルグがリコメンドしてた。要チェック。誰か利用した人がいたら、どうだったか教えてください。
別の日の夜だけど、Kødbyenはこんな感じでライブのイベントをやってたりもする。
ちょうどテクノのDJがバッキバキなプレイをしていて、Kødbyenを出てかなり離れても音が聴こえるくらいの音量でやっていた。スゴイなー。
ミッケラーのビールカーも出動して観客たちにビール販売。盛り上がってた。
あと、Kødbyenにはincoなる超巨大食品スーパーがある。
ここも非常に面白い。
中に入るとこんな感じで、どこまで行っても食品、食品、食品・・・。
ビールもクラフト系から大手のまでけっこう揃ってる。
こちらは加工肉関係。
チーズも種類豊富。
アジア食材のコーナーにはタイのガピから日本の搾り柚子のボトルまで。
もう、いろいろ買う気満点で広大な店内を巡ってたんだけど(しかも市中よりずいぶん安い!)、どうやら業者向けの店らしくて日本人観光客には売ってもらえなかった・・・。
ここ、旅行者でも買える方法、ないのでしょうか。
以上、コペンハーゲンKødbyenリポートでした。
今年もよろしくお願いします!
(よ)
■
[PR]
#
by brd
| 2016-01-01 15:17
| デンマーク
|
Trackback
|
Comments(10)
屋台で最も衝撃を受けた料理 タイ料理家・下関崇子さんとの対話 その3
『味の形 迫川尚子インタビュー』(ferment vol.01)の創刊準備号となるフリーペーパー『ferment vol.00 タイ料理家・下関崇子さんとの対話 タイと、日本と、かぼちゃ炒めと。』のテキストを本ブログで公開しています。
「その2」に引き続き、最終回の「その3」を。
---------------------------------------------------
下関崇子さんとの対話
タイと、日本と、かぼちゃ炒めと。
その3
インタビュー・文/(よ)

イベント「しまたい食堂」で下関さんが調理中のかぼちゃ炒め。豚肉とかぼちゃを炒めてナンプラーと砂糖で味つけし、卵でとじる
屋台で最も衝撃を受けた料理
よ: 著書の『バンコク思い出ごはん』[★25]の版元の平安工房というのは、どんな?
下: まず、『曼谷シャワー』[★26]という本を出したくて検索していたら見つかって、「原稿は募集していませんが面白いものなら…」みたいな感じでした。それを見てメールしたら面白がってくれて、出版することになったんです。
よ: 「ほぼ日」の「担当編集者は知っている。」のコーナーに採り上げられていましたね。下関さんは著者かつ担当編集者でもある、という立場で。
下: 平安工房は出版社ではないですけどね。
よ: もともと古書店ですよね。
下: 書店っていっても実店舗はないんです。オンラインだけで。古本屋さんだけあって、「1円で売られない本作り」がモットー。
よ: 『曼谷シャワー』はタイ生活の面白ネタを綴ったコラム集でしたが、タイ料理本の『バンコク思い出ごはん』も平安工房から出版されて。
下: タイミング的には『思い出ごはん』は『そうざい屋台』の後に出るんですけど、作業的には『そうざい屋台』の前から手がけてたんです。ほぼ、ひとりでやってたから時間がかかって。デザインは『DACO』とか『Gダイ』[★27]をやってた友だちのデザイナーにお願いしたんですけど、構成もデザインも、何度も試行錯誤してやりなおしたし。
よ: 料理のチョイスが、普通のタイ料理レシピ本とは全然違いますね。
下: この本は、もう私の原点です。渡辺玲さん[★28]が、「ファーストアルバムには音楽家のエッセンスがすべて凝縮しているものだが、自分の最初の著作も同じだ」っていうようなことを書いてますけど、この本はそういう本ですね。
よ: 『バンコク思い出ごはん』はタイ料理家、下関崇子のファーストアルバムであると。
下: そうですね。

『バンコク思い出ごはん』 2015年7月に改訂版がリリースされた
よ: この本に必ず掲載しようと思っていた料理ってあります?
下: 一番最初に載っている「かぼちゃ炒め」。最近、ほかのレシピ本にも載るようになりましたけど、当時は全然でした。で、この本で採り上げたら、タイに住んでる日本人から「これ食べたかったんだよ!」っていう声がすごく多くて。やっぱりみんなそうだよねって、すごく自信が持てた。
よ: バンコク10年以上住んでるボクの友だちも、「食べたい感じの料理がいっぱい載ってる!」って感心してましたよ。ボク自身は、実はかぼちゃ炒めって食べたことがないから、すごく食べてみたい。
下: 私が屋台で最も衝撃を受けた料理です。まず、甘いのにびっくりして。タイ料理にも、こんな甘い料理があるんだなって。これ、バンコクの日本人はみんな食べてましたね。
よ: とくに日本人の記憶に残るタイ料理なんですかね。
下: ほかの料理がとにかく辛いから…。
よ: 辛くないオアシスみたいに、ほっとできるんですか?
下: ほっとできるし、何か安心感があると思う、味に。
よ: 日本料理で近いものって何ですかね? かぼちゃと豚肉を使う…。
下: かぼちゃに豚ひき肉のそぼろ餡を合わせるような料理はありますよね。
よ: タイの「かぼちゃ炒め」の作り方は?
下: すごく簡単。豚肉炒めて、かぼちゃ入れて、水すこし入れて、かぼちゃを柔らかくして、ナンプラーと砂糖で味をつけて、最後に卵でとじるだけ。
よ: まさにファーストアルバムの一曲目。ほんと、食べたくなってきました。
下: これが原点。でも、料理教室で教えたり、日本のタイ料理レストランで出すようなメニューでもないしね。
よ: そうですか?
下: だって本格的な日本料理を習いに行って、ツナマヨおにぎりだったら、どうなの? って(笑)。
よ: ツナマヨほどじゃない気もしますけど(笑)。
下: プロには鰹だしのとり方とか、かつらむきとか、そういうの習いたいじゃないですか。小料理屋なら、ツナマヨじゃなくて鮭のおにぎりを出すべきだし(笑)。あの本は、プロではないアマチュアの私だからこそ掲載できている料理も多いと思うんですよね。
よ: そういうポジティブなアマチュアリズムって料理界に絶対必要ですよ。
下: ほんと、「かぼちゃ炒め」はタイから帰ってきて「これ、タイで食べてたよね」って日本人がすごく多くて。語学留学でタイに行った人が学食のメニューからこればっかり選んでたとか、駐在員の奥さんがタイ人のお手伝いさんによく作ってもらったとか。
よ: タイ在住経験を持つ日本人のソウルフードみたい。そういえば旦那さんも、あまり辛い料理が得意じゃないと書かれてましたよね。
下: そう書くと誤解されるんですけど、私よりも全っ然辛いものいけますよ、旦那は。タイ人にしては苦手ってだけで。私が作る料理を、旦那は「辛くなくて美味しい」って言うけど、タイ料理教室の日本人の生徒さんには「辛いけど美味しい」って言われる。
よ: 辛さの基準が全然違うと。
レシピ本ではなくエッセイ集
よ: で、タイミング的にはファーストより先にリリースされてしまったメジャーレーベルからのセカンドアルバムが『そうざい屋台』ですけど、次のサードアルバムは、またインディーズからリリースされたわけですよね(笑)。これが、傑作です。

普通のタイ料理本に載っていないレシピ多数。『暮らして恋したバンコクごはん』
下: 『暮らして恋したバンコクごはん』ですよね。タイで印刷したんですよ。
よ: この本はすごい。たとえば、「発酵させた酸味スペアリブ揚げ」とか「イサーン風なれずし」とか「発酵した魚のソーセージ」とかが掲載されてますが、生魚や生肉を室温で数日発酵させるというレシピは、普通の出版社ではNGになりそうですね。
下: 『思い出ごはん』もそうですが、レシピ本じゃないですから。基本的に料理エッセイ集で、作り方に興味がある読者は巻末のレシピを見てくださいっていうスタンス。すごいでしょ、その辺のサジ加減が(笑)。
よ: ばっちりです(笑)。下関さんならではの著者編集兼任の妙というか。あと、生肉ラープ。これもエッセイパートには、日本では生食用の牛肉は売っていないので注意してください、とか書いてあるんですよね(笑)。
下: これ、原稿の段階で『DACO』の元編集の友だちに一回読んでもらったんですけど、「このレシピ、大丈夫?」って言われました。でも、あくまで体験記です(笑)。
よ: その体験記がものすごく参考になります! 生肉はさておき、発酵料理に対しては、みんな不必要にハードル高く考え過ぎですよね。
下: 発酵なんて、ひと昔前まで普通に日本人もやってたわけでしょ。
よ: 甘酒やら、お味噌作ったり。
下: 実は最近、某有名発酵学者の方の本の編集補助の仕事をやって、発酵には詳しくなりました。たとえば、この本にも載ってる「カウマーク/甘酒風味のもち米」。日本の麹って米粒にカビを生やすバラ麹なんですけど、タイでは団子にしたものにクモノスカビを生やすモチ麹。あたりに漂ってる菌が日本とタイじゃ違うんですよね。味は甘酒みたいで、タイと日本の食の共通項って多いなって。
よ: 発酵といえば、この本にはナンプラーの作り方まで書いてある。
下: 本邦初公開レシピも多いので、私のブログやレシピ本がネタ元になってないか、新しいタイ料理レシピ本が出るたびに買ってチェックしてるんですよ(笑)。ただ、私以外にレシピを載せる人はいないだろうと思っていた「蓮の茎のカレー」[★29]はかなり前に出ていた竹下ワサナさんの本[★30]に載ってましたねぇ。竹下ワサナさんの本は良いですね。もっと早く出逢ってたら、私の本も違った形になってたかも。
よ: ボクが一番初めに買ったタイ料理のレシピ本がワサナさんの本でした。
下: 私、日本で出ているタイ料理のレシピ本の約8割くらいは持ってますよ。今アマゾンで購入可能な本は、ぜんぶ持ってると思う。
よ: ほかに好きな本はありますか。
下: 酒井美代子さんの『今夜はタイ料理』[★31]かな。出たのが昔なので、本の作りはおしゃれじゃないんですけど、載ってるメニューは宮廷料理から屋台料理までバラエティに富んでて。最近のレシピ本は、初心者の人を対象にしたのばかり。二冊目に買いたいという本がないですよね。だから自分で作ったというのもありますが。
よ: 『暮らして恋したバンコクごはん』と『バンコク思い出ごはん』の巻頭にある写真は息子さんですよね。味覚というか、食に対するセンスは、どんな感じに育ってますか?
下: 私が作るタイのお菓子とか、美味しいって食べてくれますよ。同じお菓子をウチに遊びに来る同級生の子にあげると、口に入れた瞬間「うっ」となって食べられなかったりするんだけど(笑)。ココナッツ味がダメみたい。親子タイ料理教室で、タピオカココナッツミルクを作ったら、子どもの半数が残しちゃったことがありました。
よ: じゃあ、お子さんは、すくすくと日タイ両方の味覚を育んでるんですね。
下: ええ。
2013年9月 船橋にて
<注記>
[★25]『バンコク思い出ごはん』
2010年5月、平安工房・刊。2015年7月に改訂版がダコトウキョウよりリリースされた。
[★26]『曼谷シャワー』
2007年12月、平安工房・刊。『DACO』連載の同名コラム第100回までを掲載。
[★27]『Gダイ』
『Gダイアリー』。タイの夜の盛り場日本語情報誌。
[★28]渡辺玲
インド料理、スパイス料理研究家。『カレー大全』(講談社)など著書多数。「ファーストアルバム」発言は、著書の『新版 誰も知らないインド料理』(光文社知恵の森文庫)文庫版あとがきにある。
[★29]蓮の茎のカレー
鯵と蓮の茎をココナッツミルクで煮た料理。著書では蓮の茎を蕗で代用。
[★30]竹下ワサナさんの本
『旬の素材でタイ料理』(文化出版局)、2001年6月発行。
[★31]酒井美代子・著『今夜はタイ料理』
1993年7月、農山漁村文化協会・刊。
「その2」に引き続き、最終回の「その3」を。
---------------------------------------------------
下関崇子さんとの対話
タイと、日本と、かぼちゃ炒めと。
その3
インタビュー・文/(よ)
屋台で最も衝撃を受けた料理
よ: 著書の『バンコク思い出ごはん』[★25]の版元の平安工房というのは、どんな?
下: まず、『曼谷シャワー』[★26]という本を出したくて検索していたら見つかって、「原稿は募集していませんが面白いものなら…」みたいな感じでした。それを見てメールしたら面白がってくれて、出版することになったんです。
よ: 「ほぼ日」の「担当編集者は知っている。」のコーナーに採り上げられていましたね。下関さんは著者かつ担当編集者でもある、という立場で。
下: 平安工房は出版社ではないですけどね。
よ: もともと古書店ですよね。
下: 書店っていっても実店舗はないんです。オンラインだけで。古本屋さんだけあって、「1円で売られない本作り」がモットー。
よ: 『曼谷シャワー』はタイ生活の面白ネタを綴ったコラム集でしたが、タイ料理本の『バンコク思い出ごはん』も平安工房から出版されて。
下: タイミング的には『思い出ごはん』は『そうざい屋台』の後に出るんですけど、作業的には『そうざい屋台』の前から手がけてたんです。ほぼ、ひとりでやってたから時間がかかって。デザインは『DACO』とか『Gダイ』[★27]をやってた友だちのデザイナーにお願いしたんですけど、構成もデザインも、何度も試行錯誤してやりなおしたし。
よ: 料理のチョイスが、普通のタイ料理レシピ本とは全然違いますね。
下: この本は、もう私の原点です。渡辺玲さん[★28]が、「ファーストアルバムには音楽家のエッセンスがすべて凝縮しているものだが、自分の最初の著作も同じだ」っていうようなことを書いてますけど、この本はそういう本ですね。
よ: 『バンコク思い出ごはん』はタイ料理家、下関崇子のファーストアルバムであると。
下: そうですね。
よ: この本に必ず掲載しようと思っていた料理ってあります?
下: 一番最初に載っている「かぼちゃ炒め」。最近、ほかのレシピ本にも載るようになりましたけど、当時は全然でした。で、この本で採り上げたら、タイに住んでる日本人から「これ食べたかったんだよ!」っていう声がすごく多くて。やっぱりみんなそうだよねって、すごく自信が持てた。
よ: バンコク10年以上住んでるボクの友だちも、「食べたい感じの料理がいっぱい載ってる!」って感心してましたよ。ボク自身は、実はかぼちゃ炒めって食べたことがないから、すごく食べてみたい。
下: 私が屋台で最も衝撃を受けた料理です。まず、甘いのにびっくりして。タイ料理にも、こんな甘い料理があるんだなって。これ、バンコクの日本人はみんな食べてましたね。
よ: とくに日本人の記憶に残るタイ料理なんですかね。
下: ほかの料理がとにかく辛いから…。
よ: 辛くないオアシスみたいに、ほっとできるんですか?
下: ほっとできるし、何か安心感があると思う、味に。
よ: 日本料理で近いものって何ですかね? かぼちゃと豚肉を使う…。
下: かぼちゃに豚ひき肉のそぼろ餡を合わせるような料理はありますよね。
よ: タイの「かぼちゃ炒め」の作り方は?
下: すごく簡単。豚肉炒めて、かぼちゃ入れて、水すこし入れて、かぼちゃを柔らかくして、ナンプラーと砂糖で味をつけて、最後に卵でとじるだけ。
よ: まさにファーストアルバムの一曲目。ほんと、食べたくなってきました。
下: これが原点。でも、料理教室で教えたり、日本のタイ料理レストランで出すようなメニューでもないしね。
よ: そうですか?
下: だって本格的な日本料理を習いに行って、ツナマヨおにぎりだったら、どうなの? って(笑)。
よ: ツナマヨほどじゃない気もしますけど(笑)。
下: プロには鰹だしのとり方とか、かつらむきとか、そういうの習いたいじゃないですか。小料理屋なら、ツナマヨじゃなくて鮭のおにぎりを出すべきだし(笑)。あの本は、プロではないアマチュアの私だからこそ掲載できている料理も多いと思うんですよね。
よ: そういうポジティブなアマチュアリズムって料理界に絶対必要ですよ。
下: ほんと、「かぼちゃ炒め」はタイから帰ってきて「これ、タイで食べてたよね」って日本人がすごく多くて。語学留学でタイに行った人が学食のメニューからこればっかり選んでたとか、駐在員の奥さんがタイ人のお手伝いさんによく作ってもらったとか。
よ: タイ在住経験を持つ日本人のソウルフードみたい。そういえば旦那さんも、あまり辛い料理が得意じゃないと書かれてましたよね。
下: そう書くと誤解されるんですけど、私よりも全っ然辛いものいけますよ、旦那は。タイ人にしては苦手ってだけで。私が作る料理を、旦那は「辛くなくて美味しい」って言うけど、タイ料理教室の日本人の生徒さんには「辛いけど美味しい」って言われる。
よ: 辛さの基準が全然違うと。
レシピ本ではなくエッセイ集
よ: で、タイミング的にはファーストより先にリリースされてしまったメジャーレーベルからのセカンドアルバムが『そうざい屋台』ですけど、次のサードアルバムは、またインディーズからリリースされたわけですよね(笑)。これが、傑作です。
下: 『暮らして恋したバンコクごはん』ですよね。タイで印刷したんですよ。
よ: この本はすごい。たとえば、「発酵させた酸味スペアリブ揚げ」とか「イサーン風なれずし」とか「発酵した魚のソーセージ」とかが掲載されてますが、生魚や生肉を室温で数日発酵させるというレシピは、普通の出版社ではNGになりそうですね。
下: 『思い出ごはん』もそうですが、レシピ本じゃないですから。基本的に料理エッセイ集で、作り方に興味がある読者は巻末のレシピを見てくださいっていうスタンス。すごいでしょ、その辺のサジ加減が(笑)。
よ: ばっちりです(笑)。下関さんならではの著者編集兼任の妙というか。あと、生肉ラープ。これもエッセイパートには、日本では生食用の牛肉は売っていないので注意してください、とか書いてあるんですよね(笑)。
下: これ、原稿の段階で『DACO』の元編集の友だちに一回読んでもらったんですけど、「このレシピ、大丈夫?」って言われました。でも、あくまで体験記です(笑)。
よ: その体験記がものすごく参考になります! 生肉はさておき、発酵料理に対しては、みんな不必要にハードル高く考え過ぎですよね。
下: 発酵なんて、ひと昔前まで普通に日本人もやってたわけでしょ。
よ: 甘酒やら、お味噌作ったり。
下: 実は最近、某有名発酵学者の方の本の編集補助の仕事をやって、発酵には詳しくなりました。たとえば、この本にも載ってる「カウマーク/甘酒風味のもち米」。日本の麹って米粒にカビを生やすバラ麹なんですけど、タイでは団子にしたものにクモノスカビを生やすモチ麹。あたりに漂ってる菌が日本とタイじゃ違うんですよね。味は甘酒みたいで、タイと日本の食の共通項って多いなって。
よ: 発酵といえば、この本にはナンプラーの作り方まで書いてある。
下: 本邦初公開レシピも多いので、私のブログやレシピ本がネタ元になってないか、新しいタイ料理レシピ本が出るたびに買ってチェックしてるんですよ(笑)。ただ、私以外にレシピを載せる人はいないだろうと思っていた「蓮の茎のカレー」[★29]はかなり前に出ていた竹下ワサナさんの本[★30]に載ってましたねぇ。竹下ワサナさんの本は良いですね。もっと早く出逢ってたら、私の本も違った形になってたかも。
よ: ボクが一番初めに買ったタイ料理のレシピ本がワサナさんの本でした。
下: 私、日本で出ているタイ料理のレシピ本の約8割くらいは持ってますよ。今アマゾンで購入可能な本は、ぜんぶ持ってると思う。
よ: ほかに好きな本はありますか。
下: 酒井美代子さんの『今夜はタイ料理』[★31]かな。出たのが昔なので、本の作りはおしゃれじゃないんですけど、載ってるメニューは宮廷料理から屋台料理までバラエティに富んでて。最近のレシピ本は、初心者の人を対象にしたのばかり。二冊目に買いたいという本がないですよね。だから自分で作ったというのもありますが。
よ: 『暮らして恋したバンコクごはん』と『バンコク思い出ごはん』の巻頭にある写真は息子さんですよね。味覚というか、食に対するセンスは、どんな感じに育ってますか?
下: 私が作るタイのお菓子とか、美味しいって食べてくれますよ。同じお菓子をウチに遊びに来る同級生の子にあげると、口に入れた瞬間「うっ」となって食べられなかったりするんだけど(笑)。ココナッツ味がダメみたい。親子タイ料理教室で、タピオカココナッツミルクを作ったら、子どもの半数が残しちゃったことがありました。
よ: じゃあ、お子さんは、すくすくと日タイ両方の味覚を育んでるんですね。
下: ええ。
2013年9月 船橋にて
<注記>
[★25]『バンコク思い出ごはん』
2010年5月、平安工房・刊。2015年7月に改訂版がダコトウキョウよりリリースされた。
[★26]『曼谷シャワー』
2007年12月、平安工房・刊。『DACO』連載の同名コラム第100回までを掲載。
[★27]『Gダイ』
『Gダイアリー』。タイの夜の盛り場日本語情報誌。
[★28]渡辺玲
インド料理、スパイス料理研究家。『カレー大全』(講談社)など著書多数。「ファーストアルバム」発言は、著書の『新版 誰も知らないインド料理』(光文社知恵の森文庫)文庫版あとがきにある。
[★29]蓮の茎のカレー
鯵と蓮の茎をココナッツミルクで煮た料理。著書では蓮の茎を蕗で代用。
[★30]竹下ワサナさんの本
『旬の素材でタイ料理』(文化出版局)、2001年6月発行。
[★31]酒井美代子・著『今夜はタイ料理』
1993年7月、農山漁村文化協会・刊。
■
[PR]
#
by brd
| 2015-12-03 00:08
| 東京のタイ
|
Trackback(1)
|
Comments(2)
旅の食卓と食卓の旅。ferment booksより『味の形 迫川尚子インタビュー』発売中。姉妹ブログ【ワダ翻訳工房】もどーぞ。ツイッターは @oishiisekai @fermentbooks
by brd
S | M | T | W | T | F | S |
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | |
7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 |
14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 |
21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 |
28 | 29 |
カテゴリ
全体インド
フランス
マレーシア
タイ
ミャンマー
中国
香港
ベトナム
韓国
東京のインド
東京のイタリア
東京の中国
東京のミャンマー
東京の韓国
東京のウイグル
東京のフランス
東京のタイ
東京のベトナム
東京のマレーシア
東京のネパール
東京のドイツ
東京のスペイン
東京のイスラエル
東京のニュージーランド
神奈川の中国
神奈川のタイ
神奈川のイタリア
富山のパキスタン
東京
神奈川
愛知
京都
石川
富山
茨城
本や映画
おうちで世界旅行(レシピ)
弁当
シンガポール
デンマーク
秋田
アメリカ
台湾
神奈川のベトナム
フィンランド
未分類
ブログパーツ
本棚
『食は東南アジアにあり』
星野龍夫
森枝卓士
『食べもの記』
森枝卓士
『アジア菜食紀行』
森枝卓士
『考える胃袋』
石毛直道
森枝卓士
『ごちそうはバナナの葉の上に―南インド菜食料理紀行』
渡辺玲
『食は広州に在り』
邱永漢
『檀流クッキング』
檀一雄
『中国料理の迷宮』
勝見洋一
『中国庶民生活図引 食』
島尾伸三
潮田登久子
『食卓は学校である』
玉村豊男
『地球怪食紀行―「鋼の胃袋」世界を飛ぶ』
小泉 武夫
『世界屠畜紀行』
内澤旬子
『ソバ屋で憩う』
杉浦日向子と ソ連
『有元葉子の料理の基本』
有元葉子
『ル・マンジュ・トゥー 素描(デッサン)するフランス料理』
谷昇
『料理通信』
『Arche+』
アーチプラス
在タイ女性のための
日本語フリーペーパー
☆
料理通信
アンバサダーブログ
「ニッポン列島食だより」
に寄稿しています。
☆2013/03
江古田「HEM」のイベント
ベトナムおやつ屋台村
☆2012/05
カレー&スパイス伝道師
渡辺玲さんのプライベート・ディナー
☆2012/01
渋谷にあるブルターニュ
「クレープリー・ティ・ロランド」
☆2011/10
シャン料理「トーフー」は
高田馬場の新名物?
☆2011/08
信州食材meetsタイ料理!
「ヤム! ヤム! ソウルスープキッチン」
☆2011/07
震災後の「ソバ屋で憩う」
高田馬場「傘亭」
以前の記事
2016年 02月2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2009年 10月
2008年 12月
2008年 11月
2008年 10月
検索
最新のコメント
Well written.. |
by natagolister at 01:44 |
いや、これはお酒が進みま.. |
by arak_okano at 19:53 |
Exceptionall.. |
by valeroth at 10:03 |
タヌ子さん 分子料.. |
by brd at 09:08 |
分子小籠包はボリス・ヴィ.. |
by タヌ子 at 06:19 |
ソーニャさん > .. |
by brd at 22:25 |
極めて極めて到達した結果.. |
by petapeta_adeliae at 12:49 |
Luntaさん 北.. |
by brd at 01:12 |
「バベットの晩餐会」、フ.. |
by Lunta at 22:33 |
Zさん ありがとう.. |
by brd at 02:14 |
最新のトラックバック
冬至に南瓜 |
from 異邦人の食卓 |
ドリアン |
from ポンポコ研究所 |
久々わんこ&深谷ねぎ(2) |
from ソーニャの食べればご機嫌 |
Saravana Bha.. |
from ポンポコ研究所 |
꼼장어(コムチャンオ:ヌ.. |
from ポンポコ研究所 |
まだ間に合う!東北民謡コ.. |
from 保土ヶ谷エリアCのいちにち |
돼지국밥(テジクッパプ) |
from ポンポコ研究所 |
ブルターニュ美味しい物探.. |
from 異邦人の食卓 |
パダン料理とtuak |
from ポンポコ研究所 |
【おしかちゃん】パダン料理 |
from ポンポコ研究所 |
タグ
マレーシア クラフトビール ベジタリアン タイ ソウル フランス イベント デザート カフェ 東京 雑誌 富山 ホテル カレー ハノイ ベトナム インド レシピ バンコク 韓国記事ランキング
1 富山 : 氷見市のワ..
2 要町 : エルブリの..
3 金沢 : 「鮨処 あ..
4 台北 : 台中行き高..
5 ハノイ その5 : ..
6 『クラフトビール革命..
7 「ひみつカレー」と..
8 神楽坂のフランス料理..
9 『料理通信』秋田発見..
10 パリ : 週末夜のビ..
2 要町 : エルブリの..
3 金沢 : 「鮨処 あ..
4 台北 : 台中行き高..
5 ハノイ その5 : ..
6 『クラフトビール革命..
7 「ひみつカレー」と..
8 神楽坂のフランス料理..
9 『料理通信』秋田発見..
10 パリ : 週末夜のビ..