2016.02.26 アベノミクス

G20サミットはG8サミットとは何が違う? G20 とG8の歴史や成り立ちについて解説します

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中国・上海で「G20」首脳会議に先立ち、財務相・中央銀行総裁会議が開催(2016年2月26/27日)

今年2016年の9月4日、5日、中国・杭州市で主要20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)が開催されます。

中国は、今回の「G20」で議長国を初めて務めることになります。

それに先立つ2月の26、27日には、上海でG20の財務相・中央銀行総裁会議が開かれます。

この会議に出席するのは、各国の財務大臣や中央銀行の総裁で、日本からは麻生太郎・財務大臣、黒田東彦・日銀総裁の両名、また、財務省や日銀の幹部が出席することになります。

今回の上海での会議では、

  • 中国からの資本の逃避
  • 米国の利上げに伴う市場の動き
  • 急速な原油安が与える世界経済への影響

 

これらが、議題の中心になると予想されているところです。

現在、金融市場は急速な円高・株安など混乱が続いており、世界的にリスク回避の動きが広がっているとみられています。

こうした、世界的な株安や外国為替の乱高下、さらに原油安へどのように対応していくか、各国が協調して安定化策を打ち出せるかどうか、それら大きな課題となっています。

会議に出席する麻生財務相も「金融市場の変動要因となっている世界経済情勢について、しっかりした対応をとることを検討していきたい」との考えを示しています。

日本としては、世界市場を混乱させた「要因」の一つである、中国経済の状況を議題に求める構えです。

議長国の中国としては、世界的な立場を確立するためにも、自らが抱える経済問題の解決策を、率先して打ち出していきたいところだと思います。

 

G20とは

さて、開催日が近づくにつれ、ニュース報道なども増えてきた「G20」ですが、そもそも「G20」自体イマイチよく分からない、という方も多いかと思います。

「G20の数字が国の数なのは知ってたけど、それがいったい何なのかは…」とか「ついこの間までG8だった気が…」といった疑問もよく聞きます。

そこで、今回は、そうした疑問を解消するため、「G20」とはいったい何なのか、その成り立ちや歴史、また、同じくサミットと言われる「G8」との違いなどについて解説していきます。

 

G8は「Group Of Eight」の略

まずは、世界に大きな影響力を持つG8サミットの歴史を振り返ってみます。

G8サミット(主要国首脳会議)とは、日本、アメリカ、イギリス、イタリア、カナダ、ドイツ、フランス、ロシアの8カ国が、毎年持ち回りで開催する首脳会議です。

この参加8カ国を総称して「G8」(Group Of Eight)と呼んでいます。

毎年開かれる会合での議題は、世界経済から、テロ対策、エネルギー問題、さらには地球温暖化といった環境問題まで多岐にわたっています。

その会合での合意事項は、その後の世界が進む方向性に大きな影響力をもっているのです。

 

サミット発足に至るまでの流れ

G8の前身は、同様に「G7」とよばれていましたが、その誕生は、1975年にさかのぼります。

1970年代、世界経済には様々な問題が発生していました。

当時の世界情勢は、いわゆる「ニクソンショック」によるドルの切り下げや、石油危機(「オイルショック」)などの影響で経済が悪化する一方でした。

こうした問題に対して、フランス政府は「先進国首脳同士の自由な意見交換を」と、当時の西側主要国の首脳に呼びかけました。

それに応え、1975年に日本・アメリカ・イギリス・フランス・ドイツ・イタリアの主要な先進国の首脳がパリ郊外のランブイエに参集し、経済問題を解決するために、第1回目の首脳会談(サミット)が開催されました。

そこで、先進6カ国が協力して、為替市場の乱高下の防止、インフレの抑制などの経済対策が話し合われました。

これらの6カ国を「G6」と呼んだのが「G〜」の始まりです。

最初は6カ国でスタートしたサミットですが、その後、1976年にカナダが加わり、「G7」サミットとして移行していきます。

「G〜」はもともと、経済問題ついて話し合う会議でしたが、次第に西側先進国の首脳会議としての色合いを濃くしていきます。

 

東西冷戦終結後、ロシアの参加でG7からG8に

1989年にソ連政府の崩壊で東西冷戦が終結、ロシアが成立しました。

しかし、ロシア経済は市場経済化によって急速に悪化していきます。

ロシアの混乱は、経済面だけでなく、政治・軍事の面でも西側諸国に大きな影響を及ぼしかねない状況でした。

このため、1991年のロンドンでのサミットからは、サミット終了後にロシア大統領と各国首脳が会議の枠外で協議を行うようになりました。

その後、1998年のバーミンガムサミットで、ロシアが正式に加入し、これによって「G8」となったのです。

当初対立関係にあったロシアが資本主義国に加わったことにより、議題の中心は政治・経済だけではなく、環境問題などの地球規模の問題が多く取り上げられるようになりました。

 

2008年、リーマンショックによる世界金融危機がきっかけでG20が誕生

2000年代に入ると、新興国の急速な経済成長に伴って、G8の経済的な影響力は相対的に低下していきます。

さらに、追い打ちをかけるように、2008年にはリーマンんショックによる世界金融危機が発生、すでにG8だけで事態に対応するには限界が出てきました。

先進国と新興国の間でも、特に経済問題について話し合う必要性が高まってきたのです。

そこで、2008年11月にG8に加え、欧州連合(EU)と新興国11カ国(中国、韓国、インド、インドネシア、オーストラリア、トルコ、サウジアラビア、南アフリカ、メキシコ、アルゼンチン、ブラジル)が、金融危機への対応や経済協力を行う目的で集うことになります。

これが「G20」サミットです。

国家・地域 貿易規模
百万ドル
(2013)
GDP(名目)
百万ドル
(2014)
一人当GDP
(名目)ドル
(2014)
一人当GDP
(PPP)ドル
(2014)
人口
日本の旗 日本 1,548,300 4,769,804 37,540 37,683 127,061,000
韓国の旗 韓国 1,075,200 1,449,494 28,739 35,485 50,437,000
中華人民共和国の旗 中国 4,150,000 10,355,350 7,572 12,893 1,367,520,000
インドネシアの旗 インドネシア 384,100 856,066 3,404 10,157 251,490,000
インドの旗 インド 779,300 2,047,811 1,626 5,777 1,259,695,000
サウジアラビアの旗 サウジアラビア 544,100 777,870 25,401 53,935 30,624,000
欧州連合の旗 欧州連合 4,485,000 18,398,669 36,392 35,849 505,570,700
フランスの旗 フランス 1,260,700 2,902,330 45,384 40,445 63,951,000
ドイツの旗 ドイツ 2,600,600 3,820,464 47,201 44,741 80,940,000
イタリアの旗 イタリア 995,100 2,129,276 35,512 34,455 59,960,000
イギリスの旗 イギリス 1,196,900 2,847,604 44,141 37,744 64,511,000
カナダの旗 カナダ 932,600 1,793,797 50,577 44,519 35,467,000
メキシコの旗 メキシコ 771,200 1,295,860 10,837 17,925 119,581,789
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 3,908,700 17,416,253 54,678 54,678 318,523,000
アルゼンチンの旗 アルゼンチン 152,690 536,155 12,778 22,101 41,961,000
ブラジルの旗 ブラジル 494,800 2,244,131 11,067 15,153 202,768,000
ロシアの旗 ロシア 866,300 2,057,301 14,317 24,764 143,700,000
トルコの旗 トルコ 370,800 813,316 10,518 19,556 77,324,000
南アフリカ共和国の旗 南アフリカ共和国 208,000 341,216 6,354 12,722 53,699,000
オーストラリアの旗 オーストラリア 522,000 1,482,539 62,822 46,631 23,599,000

(※wikipediaより)

G20の首脳会議は2008年11月にワシントンで初めて開かれました。

アメリカのピッツバーグで行われた2009年9月の第3回会議からは定例化することが約束され、それ以降、毎年開催されています。

これによって、G8の機能は実質的にG20に引き継がれることとなったのです。

それらを統括し管理するような組織や機関は存在しませんが、会議を開催する国が議長国となり議事進行を行うことになっています。

主に世界経済や金融について話し合うため、G20のことを「金融サミット」と呼ぶこともあります。

G20には、「首脳会議」の他に「財務相・中央銀行総裁会議」があり、また、経済以外にも特別なテーマの会合を開催することもあります。

 

G20が世界に占める存在感は増す一方だが・・・

G20に参加している20カ国・地域の国内総生産(GDP)を合計は、世界全体のGDPの約85%を占めるほど巨大なものです。

また、人口でも世界人口の3分の2ほどを占めています。

このため、G20サミットでの合意事項は、従来のG8での合意をはるかに上回る影響力を持っています。

世界は、G20の意向に大きく左右されるといっても過言ではないのです。

ただ、参加国・地域が20カ国に増えたことで、G8の時よりも全体の合意を得ることが難しいという問題があります。

これは、参加国間で利害が複雑に絡み合っており、特に日本と中国、韓国の関係悪化に代表されるように個々の対立関係が複雑になっているからです。

したがって、互いに協力関係にあったG8に比べてG20では、実効性のある意思決定に困難が生じています。

その一方で、G8各国間には長年培ってきた協力関係があります。

影響力が低下していると言われるG8ですが、G20での議論をリードしながら、実効性のある合意を図っていくという新たな役割が期待されているのです。

 

※希望日本研究所 第8研究室

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