丑田滋、宮崎亮
2016年2月26日05時04分
■子どもと貧困 学校で
学校が始まっても、小3の男児は家の玄関先でうずくまっていた。
「お母さんが仕事で夜中まで帰ってこない。妹は寝るけど、僕は不安で寝られへん」。家と連絡が取れず訪ねてきた男性教諭に言った。母親は部屋で寝ているという。「行こ。しんどかったら、保健室で休んでええから」。教諭は手を差し伸べた。
2013年6月、関西のこの小学校に週に1度、女性スクールソーシャルワーカー(SSW)が来る日だった。SSWは男児の教室をのぞいた。授業で先生の話をよく聞いていた。「学校に来れば頑張る子。登校できる環境づくりが必要」とみた。
男児は母親の離婚を機に前年末に転入。母親はハローワークで職が見つからず、スナックで週6日働き、未明に帰宅。男児はしばしば欠席した。
夕方、問題を抱える子どもの支援を検討する「ケース会議」で、男児のケースが話し合われた。「まずは経済的な安定を」。SSWは母親に生活保護を受けさせ、昼の仕事に変えてもらうよう提案。3月まで妹の担任を受け持ち、母親の信頼が厚い男性教諭を説得役に据えた。
家を訪ねた男性教諭に、母親は「子どもに寂しい思いをさせているのはわかってます。でも中卒で資格もない私には、この仕事しかない」と泣いた。生活保護を促すと「市役所に行ったけどだめでした」と首を振った。
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