シリアの内戦をめぐり、国際調停の動きが本格化している。大きな影響力をもつ米国とロシアは、関係勢力に戦いをやめさせる共同声明をまとめた。

 米ロが27日からの停戦を求めているのは、アサド政権と反体制派である。もし双方が真剣に受け入れれば、泥沼化した内戦は前向きな節目を迎える。

 5年間の戦いで深まった不信は容易にはほどけまい。だとしても、惨劇をこれ以上長引かせてはならない。政権と反体制派に停戦の決断を強く求める。

 停戦の対象には、過激派組織「イスラム国」(IS)やアルカイダ系の組織は含まれない。さらに米ロは、「停戦を受け入れない勢力」もテロ組織とみなす構えとみられている。

 アサド政権と戦う反体制派は民族や立場が多様で、統一された組織ではない。対応が割れ、27日の予定通りに戦闘行為はやまない可能性が大きい。

 ここは、米ロの調停力と、国連、欧州、中東関係国の協力が試される重い局面である。

 とりわけ注目されるのはロシアの出方だ。アサド政権の後ろ盾として昨年来、ISだけでなく、反体制派にも攻撃を加えてきた。停戦をためらう組織や地域への空爆を続ければ、調停は早晩失敗に終わるだろう。

 プーチン大統領は「流血と暴力に終止符を打つ好機」と異例のテレビ演説をした。その言葉通り、一刻も早く人道危機を終える指導力を発揮すべきだ。

 米国も、反体制派に対し最大限の説得をするとともに、期限後も辛抱強く戦闘の沈静化の努力を続けるほかないだろう。トルコやサウジアラビアなど周辺国の協力を固める調整役も、米国と国連に期待される。

 停戦の努力と並行して、国連が仲介する和平対話も進めねばなるまい。米ロ、欧州、中東の関係国は昨年11月、6カ月内に暫定政権をつくり、18カ月内に選挙をする目標を立てた。

 その実現への道のりは明らかに険しいが、将来的な国家像の論議を欠いたままでは、各派を長期的な停戦に導くことは不可能だろう。

 内戦ですでに25万を超える人命が失われ、1千万規模の難民・避難民がでている。戦闘による封鎖で、食料や医療品の人道支援が届かない地域もある。

 ISによる国際テロの拡散も含め、シリア問題の収束は一刻の猶予も許されない課題だ。

 今回の動きを、長い和平プロセスが本格始動する確かな糸口にしたい。米ロを含む国際社会はまず、人道的な停戦の実現へ向けて結束すべきである。