夏の参院選をにらみ、足踏みしていた野党側の態勢づくりに動きが出てきた。

 民主、維新の両党が、3月中に合流することで大筋合意した。また、共産党は参院選での野党候補一本化に向け、改選数1の選挙区で独自候補を取り下げる方針を決めた。

 自民、公明の与党に対抗し、安倍政権への批判票の受け皿になるのが狙いだ。

 民主と維新の合流は、対等合併か吸収合併かといった手続きをめぐる対立が解けず、一時は参院選後に先送りされる観測も出ていた。ただ、そうなっては野党共闘は核がないまま失速するのは明らかだった。

 民主・岡田、維新・松野の両代表にしてみれば、党名変更や民主への事実上の吸収合併の受け入れは、自公を利するのを避けるためのぎりぎりの決断だったのだろう。

 民主、維新の合流と共産党の新たな方針で、野党共闘には弾みがつくかもしれない。だが、その道のりがなお険しいのは間違いない。

 民、維、共に生活、社民を加えた5党は、安保関連法の廃止と集団的自衛権の行使を認めた閣議決定の撤回、そして安倍政権の打倒を掲げて国会や国政選挙での協力を約束している。

 憲法がうたう平和主義や表現の自由などをめぐる安倍政権の危うい姿勢。これに対する反発が、基本政策が異なる5党を結びつけたといっていい。「立憲主義を守れ」という有権者の期待に応える道である。

 ただし、衆院で100人近い勢力となる民・維の「新党」は、「反安倍」の一点にとどまっているわけにはいかない。

 民主党には異論があるだろうが、安倍首相は政権に返り咲いてから、経済再生の取り組みに一定の評価を得てきた。また、安保関連法成立後は、「同一労働同一賃金」など民主党のお株を奪うような政策を打ち出している。

 少子高齢化や財政難といった厳しい条件を考えると、取りうる政策の幅はそう広くない。そのなかで、安倍政権への政策的な対立軸を打ち出すのは容易ではない。

 それでも、これからの日本がめざすべき社会の姿や共有すべき価値観は何なのか。はっきりと国民に示せなければ、政権交代の選択肢にはなり得ない。

 岡田代表が先の党大会で強調した「多様な価値観」や「共生」が、キーワードになるのだろう。具体的な理念や政策のなかで、これをどれだけ説得力を持って語れるかが問われる。