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有力カーストも優遇へ…州政府、暴動受け新法

カースト優遇策の適用を求める暴動のさなかに商品が強奪された菓子店=インド北部ハリヤナ州ゴハナで2016年2月23日午後6時28分、金子淳撮影

 インド北部ハリヤナ州で今月、公務員の採用などで低カーストを優遇する「留保制度」の適用を求める比較的裕福な有力カーストのデモ隊が治安部隊と衝突し、地元メディアによると、少なくとも19人が死亡した。州政府が要求を認めたため、23日にデモはほぼ収束したが、州政府の決定に対して「留保制度の意味が失われた」との批判も出ている。

 ハリヤナ州ゴハナでは外出禁止令が解かれた23日、多くの住民が暴徒化したデモ参加者に放火された商店の片付けを行っていた。「商品は全て持って行かれた。100万ルピー(約160万円)の損失だ」。携帯電話販売店のゴーラブさん(21)は肩を落とした。住民によると、ゴハナでは20日、銃や刀で武装したデモ隊が商店街を襲撃し、強奪や放火を繰り返した。暴動を目撃したシャーム・メヘターさん(58)は「狙いは初めから強奪だったんだ」と声を荒らげた。

 デモを起こしたのは「ジャート」と呼ばれる農業者中心の有力カースト。比較的裕福とされ、人口が多いため政治的発言力も強い。デモでは、政府の低カースト優遇策を「逆差別だ」として自分たちにも制度を適用するよう要求。幹線道路や鉄道を封鎖し、用水路の給水施設を破壊した。

 ハリヤナ州政府は23日までにジャートも優遇策の対象とする方針を決定。州議会で新法を制定すると明らかにした。だが、有力カーストであるジャートを優遇することで、他カーストの反発を呼ぶ可能性がある。被差別カーストの支援を行っている人権活動家、マノージ・クマール・シンさん(40)は「有力カーストが留保制度を食い物にしている。これでは制度の意味がない」と批判した。【ゴハナ(インド北部ハリヤナ州)で金子淳】

留保制度

 出自によって序列が決まる「カースト制度」と呼ばれる伝統的な身分制度があるインドで、少数民族や地位が低い特定のカーストに対し、優先的に大学の入学枠や公務員の採用枠などを割り当てる制度。不平等を是正する目的があるが、上位カーストからは「逆差別だ」との批判もあり、カースト単位の抗議運動がたびたび発生している。

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