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ジカ熱 気をつける点は 知っておきたい6項目
2月25日 23時37分

ブラジルから帰国し発熱や発疹などの症状を訴えていた川崎市の10代の男性が、ジカ熱に感染していることが確認されました。中南米を中心に流行が始まった去年以降、国内で患者が確認されたのは初めてで、厚生労働省は感染経路の特定を進めるとともに、国内で感染が広がるおそれはないとして冷静に対応するよう呼びかけています。
ジカ熱とは、どんな病気なのか。そしてどんな点に気をつければよいのでしょうか。

ジカ熱の原因は

ジカ熱を引き起こすのは蚊を媒介とする「ジカウイルス」です。今から70年近く前、アフリカ・ウガンダの「ジカ森林」に生息するサルから見つかったため、この名前がつきました。日本国内で感染した例はこれまでなく、あまり聞き慣れない名前かもしれませんが、2年前に流行した蚊を媒介とする感染症「デング熱」の原因ウイルスの仲間でもあります。

感染・症状は

ジカウイルスは、感染者の血を吸った蚊に刺されることで感染します。これまでに、主に熱帯や亜熱帯に生息する「ネッタイシマカ」と国内にも生息する「ヒトスジシマカ」が媒介蚊として確認されていて、感染すると2日から12日間ほどの潜伏期間を経たあと、主に38度5分以下の発熱や頭痛、それに関節痛などの症状が現れます。
予防のためのワクチンや特別な治療法はなく、「対症療法」が中心となりますが、デング熱に比べると症状は軽いと考えられていて、およそ1週間ほどで症状は治まります。また、感染しても実際に発症するのは5人に1人ほどだという報告もあります。

世界で感染が拡大

もともとはアフリカで見つかったジカウイルス。人の行き来が激しくなるなかで地理的な広がりを見せ、これまでにも流行が報告されています。3年前には南太平洋に浮かぶフランス領ポリネシアでおよそ1万人の感染者を出したほか、翌年にはチリのイースター島でも感染が確認。そして去年5月、ブラジル北東部の州で確認されたのを発端に感染が一気に広がります。
アメリカのCDC=疾病対策センターによりますと、これまでに中南米を中心に30以上の国や地域で感染の拡大が確認されているほか、アジアやヨーロッパでも、流行地を訪れた人たちが帰国後にジカ熱を発症する「輸入症例」のケースが報告されているということです。
WHO=世界保健機関は、感染の規模は最大で400万人に上るおそれがあると指摘する一方、ジカ熱は、患者の血液からウイルスを検出できる期間が僅か数日なことや、ほかの蚊を媒介とする感染症と症状が似通っていて区別が難しいなどとして、正確な患者数を把握するのは困難だとしました。

「小頭症」との関連は

もともと症状が比較的軽いジカ熱に各国が危機意識を強める背景にあるのは、ブラジルで相次ぐ「小頭症」の子どもの報告です。
「小頭症」は脳の発達が遅れることで知的障害などを引き起こす病気で、一般的に治療法はありません。主な原因は遺伝子の異常のほか、妊娠中の母親が何らかのウイルスに感染し、おなかの中の赤ちゃんにも感染してしまうことなどです。
ブラジルではジカ熱の流行前に報告された小頭症の患者が、2010年は153人、2011年は139人、2012年は175人、2013年は167人、2014年は147人だったのに対し、去年10月以降ではこれまでに4000人以上が報告される事態となっています。
亡くなった小頭症の赤ちゃんの血液や、出産後の母親の羊水からジカウイルスが検出されていることから、WHO=世界保健機関は「関連が強く疑われる」として危機感を示しています。
また「小頭症」になる最も大きなリスクとして、妊娠初期にウイルスに感染することが関連していると考えられていますが、依然としてウイルスと小頭症との関連性については議論が続いており、本当に関連性はあるのか、「ある」とした場合、いつ感染すると赤ちゃんに影響するのかなど、解析や研究が進められています。

海外旅行時の注意点

では、私たちは渡航の際、どんなことに注意すればよいのでしょうか。
専門家によりますと、蚊に刺されない対策が重要だということで、皮膚を露出しないように長袖を着ることや、虫よけのスプレーの使用、それに蚊帳の中で寝るなどの対策が有効だということです。
妊婦については、流行地への渡航そのものが子どもの「小頭症」へのリスクを高めるとして、国立感染症研究所は「小頭症との関連について詳細な調査結果が出るまで、可能なかぎり妊婦および妊娠の可能性がある人の流行地への渡航は控えたほうがよいと考える」と発表し、注意を呼びかけています。
また、注意が必要なのは、アメリカで性行為で感染した可能性のある患者が10例以上報告されたことです。過去には精液中からウイルスが見つかったこともあり、CDCは「性交渉も感染経路となりうることをより強く示唆している」と指摘しています。
詳しいことはまだ分かっていませんが、国立感染症研究所も流行地から帰国した男性について、「妊娠中のパートナーがいる場合、妊娠期間中に関しては症状の有無にかかわらず、性行為を行う場合はコンドームを使うことが推奨される」としています。

国内への侵入は

実は、国内では3年前に、当時ジカ熱が流行していたフランス領ポリネシアから帰国した27歳の男性が発症するなど、今回の川崎市の男性以外に渡航歴のある3人がジカ熱と診断されていますが、国内で感染した例はありません。
感染症が専門でジカ熱の治療経験もある国立国際医療研究センターの忽那賢志医師によりますと、国内では仮に流行地からウイルスを持ち帰ったとしても、冬の時期は蚊が飛んでいないため、感染が広がる可能性は低いと指摘しています。
ただ、北海道と青森県を除き、ジカウイルスを媒介する「ヒトスジシマカ」は広く生息しているため、「蚊が飛び始める春先以降、ジカウイルスが国内で感染する可能性はゼロではない」としています。
国も対策に乗り出しています。これまで遺伝子レベルで正確にジカウイルスの検出を行える機関は限られていましたが、今回の事態を受け、国立感染症研究所は全国の地方衛生研究所にジカウイルスの遺伝子を検出するための試薬を配布するなどして態勢を強化するとしています。
中南米を中心に今後もしばらくは流行が続くと考えられるジカ熱。蚊に刺されないための対策の徹底が必要です。

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