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2020年、大学入試が「激変」する~特に英語は大変革。求められる「スピーキング」能力

現代ビジネス 2月24日(水)11時1分配信

 文/石川一郎(かえつ有明中・高校長)

 2015年末、文部科学省の審議会の一つ「高大接続システム改革会議」が、2020年度の大学入試からセンター試験に代わって導入される予定の「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」のサンプル問題を公開しました。

 今の中学1年生が大学を受験する年に始まる「大学入試問題」の変容が見えてきたことで、改革の具体的なビジョンも明快になりました。

英語は話せるのが当たり前に!?

 どの教科も従来と一変するのですが、特に英語は、大変革です。

 英語の試験は「聞く」「読む」「話す」「書く」という4技能をチェックするのですが、中でもスピーキングが、今までの英語教育では重視されてこなかったために、難関でもあります。

 ただ話すのではなく、「自分の考えをどう話せるか」が問われることになっていくのです。

 すでに、上智大学や立教大学をはじめ多くの大学で、外部の資格検定試験を受験して結果のスコアを提出すれば、英語の試験は免除になる制度が立ち上がっていることはご存知でしょうか? TOEFL、英検、IELTS、TEAP、ケンブリッジ英検などの試験で代用していこうという動きです。さらに立教などを中心に英語の資格試験を立ち上げる動きまであります。

 この外部の資格検定試験を従来の英語の入試に代用する議論は「2020年大学入試改革」のテーマの一つです。実はこれが2020年の改革のビジョンを映し出しているのです。どう変わるのでしょう? 

「対話」のために基礎知識がますます必要に

 それは英語の「スピーキング」の問題内容を考えると、わかります。

 たとえば、「あなたは紅茶とコーヒーのどちらが好きですか?」という問いが投げられます。しかも15秒で考えて、45秒で英語で話しなさいというのが条件です。

 こんな日常的な会話、どこが難しいのだと思うかもしれません。ところが、私たちの日常生活では、「コーヒー。好きだから」などと反応していないでしょうか。15秒も考えないし、45秒も話しません。条件反射的に話すだけです。

 一方、テストでは、「紅茶ですね。英国が好きだからです。紅茶はまさに18世紀頃から世界を近代社会に導いた英国文化の象徴だからです。英国が東インド会社を展開したときに、大航海時代の交易の中で、紅茶を偶然見出したなどというエピソードがあるぐらいです。もちろん諸説ありですが、実におもしろいでしょう」などといった答えが求められます。

 コーヒーであれば、たとえばコーヒー豆に関する「フェア・トレード」の広がりについて言及するなどしないと、45秒は持たないかもしれません。

 実は外部の資格検定試験といっても、海外帰国生のクラスでふだん活用しているのは、TOEFLやIELTSです。前者は米国の大学、後者は英国の大学に進むときに必要になりますから、必然的に英米の教育文化が背景にあります。

 英米の教育文化は「対話」にありますが、日常生活における対話も、日本人にとっては少しひいてしまうほど、“I think…….Because…….”の応酬です。

 海外で大学に入学するというのは、この対話に教養を満たせるというのが大前提です。従来は知識があり、これを英語でしゃべれれば良かったのですが、さらに自分の意見を論理的に伝える能力も問われるのです。

 したがって、海外で民間の資格検定試験対策に慣れ親しんでいる帰国生クラスでは、英語以外のすべての教科においても、自分の考えや意見を論理的に表現するのは普通の感覚です。

 2020年の大学入試改革の肝は、グローバル人材を育成できる大学の改革はいかにして可能か、その改革に耐えうる学生を確保する新しい入試問題はいかなるものかにあります。当然、海外の大学入試問題が大きなヒントになっています。

 では、どんな問題でしょう。

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最終更新:2月24日(水)11時1分

現代ビジネス

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