シリコンバレー発、2016年最重要キーワード「アテンション(人々の注目)」を知っているだろうか。これを制す者が、夢も市場も手に入れる。注目は、偉大な製品や発想を「世界を変える」ものに変える。とはいえ、注目はそう簡単には得られない。では、どうすればよいのか。
テックメディア「Mashable」(ツイッター上の影響力世界第1位メディア)の共同編集長を経て、現在は投資家として活動するベン・パー氏の著書『アテンション――「注目」で人を動かす7つの新戦略』の日本語訳が発売される。豊富な事例をもとに注目のメカニズムと、注目されるための方法を紹介する。
投票用紙の先頭にある候補者は当選しやすい
スタンフォード大学政治学教授で、同大学の政治心理学研究グループ長であるジョン・クロズニックが、オハイオ州とカリフォルニア州の何百という選挙結果を調査したところ、あることがわかった。
地元の市議会選挙から1996年と2000年の大統領選挙に至るまで、ほぼひとつの例外もなく、候補者名が投票用紙の最初にあげられることで得票が平均2%か、それ以上増えていたのだ。2%なんて少ないと思われるかもしれないが、その差で、エドワード・スノーデンが告発した政府による情報収集問題に対応するのは、共和党のミット・ロムニー大統領だったかもしれない。
クロズニックの調査からわかるのは、有権者が面倒くさがり屋だということではない。われわれの注目がどれほど限定されているかということだ。
仕事をこなし、家族とすごし、社会や近所の活動をおこない、メールを送り、打ち合わせに参加し、それでも大統領や連邦議会議員の候補について学ぶ時間はあるかもしれないが、地元の教育委員会の委員候補について学ぶ時間や関心はないかもしれない。情報がかぎられている場合、人の脳は決定の際に自動的に近道を探る。
人類の文化で、一位や列の先頭など、「最初にいること」にはプラスの連想が働く。だから、投票用紙の最初に名前があることを、無意識のうちに候補者の好ましい資質と結びつける。たとえ投票用紙における位置が、その人の公人としての資質とはなんら関係ない場合でもだ。
こういう精神的な近道は「経験則」と呼ばれる。意識するかどうかにかかわらず、われわれの注目を左右する一般的なルールだ。すぐに影響を与えることもあれば、数年、ときには数十年かけてということもある。絵本『ウォーリーをさがせ!』でウォーリーを見つけるコツは?
赤と白の縞模様を探して、ほかはすべて無視することだ。どの映画を見るべきか? 映画レビュー集サイト「ロッテン・トマト」の評を参考にすればいい。集中できる時間はかぎられているので、われわれは注目を割り振るのに役立つ近道を探す。
ただ、注目といっても中身はさまざまだ。たとえば、パーティで誰かが大声を発したときに生じる注目はすぐに消え去る。その人が叫ぶのをやめれば、みなすぐにもとの会話に戻るだろう。一度は異変のほうに顔を向けるが、異変が終われば集中は続かない。われわれは関心をあることからほかのことに移す。
ここでは、三種類の注目を論じる――即時、短期、長期だ。そのそれぞれについて、近道は異なる。誰かが叫ぶのを聞いたときには、即座に(たいてい無意識のうちに)その人がたんに癇癪(かんしゃく)を起こしたのか、急病なのかを判断する。前者であれば注意はすぐほかにそれるが、後者なら注目は次の段階に進み、病人を助けるために何をすべきか決める。
かぎりある注目を管理するために、人間の脳はどんな働きをしているのだろう。また、三種類の注目はふだんの生活でどんな役割を果たしているのだろう。
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