| 民主党のウェブサイトより |
■学生時代に入信か
柴田氏は1970年、北海道紋別市生まれ。父親は現職の同市市議会議員(民主党)。柴田氏は親鸞会の機関紙『顕正新聞』1998年1月15日号で「大学一年のとき仏法に出会って以来、聞法一筋に歩む」と紹介されています。大学1年生のときに親鸞会に入信したと思われます。
| 富山県射水市にある親鸞会本部 |
柴田氏は神戸大学在学中、親鸞会による大学のダミーサークルで活動してきました。柴田氏を知る親鸞会の元信者のAさんは、こう証言します。
「私は柴田さんとは違う大学でしたが、各大学の親鸞会信者が集まる教団の学友部の集会で何度も会っています。親鸞会は、宗教団体であることを隠したサークルを全国の大学に設立して、学生を勧誘します。まだ大学によるカルト対策が不十分だった当時は、やりたい放題でした。柴田さんが所属していた神戸大学の親鸞会サークルは、毎年のように団体名を変えて活動していました。その名称全ては覚えていませんが、ある年に『古典に学ぶ会』と名乗っていたことは覚えています。学友部の集会では、こうしたダミーサークルによる勧誘活動の状況なども報告しあっていました。そういう団体ですから、柴田さん自身も当然、偽装勧誘に関わっていました。サークルの部長ではありませんでしたが、積極的に活動するバリバリの信者でした。性格は気さくな姉御肌といった感じで、印象は悪くありませんでした」
■組織的な偽装勧誘
親鸞会は、ダミーサークルで「古典を学ぶ」かのような装いで親鸞の著書『歎異抄』を新入生に学ばせ、ゴールデンウィークに行う合宿で仏教を学ぶ団体であることを明かした後、新入生を親鸞会の法話に誘うなどして入信させます。00年代に入って全国の大学がカルト対策に乗り出すと、全国の大学で偽装勧誘や強引な勧誘を行う統一教会、摂理、顕正会、ヨハン教会連合と並んで、親鸞会は5指に入る要注意団体として警戒されるようになります。教団名を名指しして対策に取り組む大学はほとんどありませんが、取材等でさまざまな大学の担当者に話を聞くと、ほぼ例外なく親鸞会の名前が挙がります。
学生時代、複数の大学にまたがって親鸞会の勧誘活動に関わった元信者のBさんは、当時の親鸞会の手口をこう証言します。
「新入生への勧誘は、合格発表の時点ですでに行っていました。大学の学生課職員が見回りに来るので、こちらは見張り役を立て、学生課の職員が建物から出てくると無線で仲間に知らせる。連絡を受けた信者が、勧誘活動中の信者たちの前を大声で“寒いなあ、寒いなあ!”と言いながら通り過ぎると、メンバーたちは一斉に現場を離れる。学生課の職員が建物に戻ると、連絡役の信者が今度は“暖かいなあ!”と言いながら歩き回り、それを合図に信者たちが一斉に勧誘を再開する。これをやるために、私は無線の免許までとりました」
単にダミーサークルを作るだけではなく、新入生に声をかけて勧誘する活動も、極めて統率のとれた組織活動です。内部では新入生勧誘のためのマニュアルも作成されていました。
近年では、ダミーサークルが公認を受けていた複数の大学で公認を取り消され、各大学は新歓期のサークル勧誘の監視を強化したり事前届出制にするなど規制を強めています。このため親鸞会は、キャンパス内での勧誘活動から、SNSを活用して新入生に個別に接触する勧誘手法にシフトしていますが、依然として教団名を伏せて勧誘しています。
正体を隠したり偽ったりする偽装伝道については、統一教会を元信者らが訴えた一連の「青春を返せ訴訟」で、違法とする判決(2000年9月14日・広島高裁岡山支部判決等)が確定しています。
■「お布施1000万円」を会内で宣言
| 柴田未来氏(2月20日・金沢市内での後援会事務所開きで) |
〈私の肉体の帰省先は北海道にあります。しかし、私の流転し続けてきた魂の帰省先、帰る所は、善知識のおられる本部会館なのだな、と感じました。(ちょっと格好よすぎます?)〉
「善知識」とは、高森会長のことを指します。
かつて親鸞会では本部に巨大な正本堂を建立するために信者たちから献金の「予約」を受け付けていました。つまり献金額の事前申告です。上記のメーリングリストで柴田氏は、こう書いています。
〈最初の予約額は、(司法試験に)今年受からなければどうしようもない所まで自分を追い込んでいたとは言えないと思いました。逃げ道を最初から用意している自分に、腹が立ってきて、気が付いたら先生への御礼状に今年合格するつもりで予約をさせて頂きます、と書いていました。
御礼状には具体的な坪数は書かせては頂かなかったのですが、10という数字が念頭にありましたので、その決意が変わらないうちに(多分一時間もしないうちに変わってしまうと思いましたので)その御礼状の下書きをそのまま本部長に転送して、10坪でお願いしますとご報告していました。
その時は、一生かかって返さなければならない借財を背負ってもかまわないと思いました。〉
「坪」とは、親鸞会内での布施の金額を示す単位で「1坪」は100万円を指します。司法試験浪人中だった柴田氏が掲げた布施目標は「10坪」、つまり1000万円です。
■司法試験合格、幹部信者に
| 後援会サイトのプロフィールに「親鸞会」の文字はない |
「親鸞会には、会長の下に総務局や布教局という部署があります。特専部は、組織図上は総務局の下部組織のひとつですが、実質的には高森会長の直属機関と言っていい幹部組織です。医師、弁護士、公認会計士、建築士、国家公務員の信者がここに所属し、親鸞会の活動について助言する、いわばブレーン集団。医師がいるのは、高森会長の健康管理のためです。弁護士は、法的に危うい親鸞会の活動について、それが表沙汰にならないように処理するためのアドバイスをする役回りです。つまり柴田さんも、親鸞会の危うい活動を知った上で関わる立場だったということです」
| 『週刊ダイヤモンド』(2010年11月13日特大号) |
これらについては、『週刊ダイヤモンド』(2010年11月13日特大号)が「信者や職員を苦しめる親鸞会“悪魔の3大契約書”」との見出しで報じています。
このように、外部に対しては偽装勧誘を行い、内部に対しては「ブラック宗教法人」とも言える過酷な締め付けを行うのが親鸞会。Cさんが言う「法的に危うい親鸞会の活動」とは、たとえばこういったものを指します。
■教団アニメの訪問販売も
| 親鸞会の教団アニメ(偽装勧誘のための上映会で) |
柴田氏はこの特専部時代、大学での偽装勧誘のほかアニメの訪問販売にも関わったといいます。
「特専部のメンバーは、大学の親鸞会サークルが新入生を勧誘する際に駆りだされ、サークルOBとして勉強会の講師を務めたりします。教団アニメの訪問販売もしていました。これは、特専部の誰もがやることで、特専部トップである小堀秀行弁護士もやっていたし、裁判官だった特専部員ですらやっていたこと。もちろん柴田さんも例外ではありません」(Cさん)
アニメ販売も親鸞会の名を告げずに行うものですが、アニメを制作・販売しているのは関連会社であるチューリップ企画であることから、明確に違法とまでは言えないグレーな活動です。このアニメは、公民館などを会場として、親鸞会であることを隠し仏教に関する文化講座を装って開催する講座やアニメ上映会でも使用され、社会人や高齢者への偽装勧誘のためのツールにもなっています(本紙〈親鸞会が世田谷区施設で偽装勧誘=区は放置の方針〉参照)。
2008年、柴田氏はアメリカに留学します。
「この間、親鸞会のアメリカ支部で通訳をしていたと人づてで聞きました」(元信者のAさん)
本紙が入手した親鸞会のメーリングリストには、アメリカ留学中の柴田氏がアメリカ人を勧誘し、教団本部(富山県射水市)での高森顕徹会長の教学講義に参加させたことも記されています。
このように、大学を卒業し弁護士になった後も柴田氏が幹部として活動していたことを示すエピソードは、枚挙に暇がありません。
■信者が「所属弁護士は全員信者」と語る弁護士事務所
小堀弁護士が代理人となった刑事告訴で、警察の家宅捜索を受けるやや日刊カルト新聞社のアジト(2011年)
|
2010年と2011年に、やや日刊カルト新聞社の瓜生崇記者と藤倉善郎主筆(当時)が親鸞会関係者から刑事告訴され富山県警の家宅捜索を受けた件(不起訴)でも、告訴人の代理人は小堀弁護士でした。
前出とは別の元親鸞会信者のDさんが、こう語ります。
「兼六法律事務所に所属する他の弁護士も全員が親鸞会の特専部員だと聞いています。親鸞会批判者に圧力をかける案件は、基本的に小堀弁護士が一手に引き受けているようです」
元特専部員のCさんは、こう証言します。
| 小堀秀行弁護士(兼六法律事務所サイトより) |
本紙では、同事務所に所属する小堀、柴田両弁護士のほか、二木克明、浮田美穂、森岡真一、小倉悠治各弁護士について、親鸞会内の内部メールで特専部員として名前が登場することを確認しました。唯一、中川浩輝弁護士だけは、内部資料で確認することはできませんでした。
兼六法律事務所の小堀弁護士に電話をかけて、直接、尋ねてみました。
──所属弁護士の先生方全員が親鸞会信者だとうかがったのですが、本当でしょうか。
小堀弁護士「違います」
──親鸞会の内部メールで、大半の先生については信者であることを確認しています。ちなみに、信者ではない先生というのはどなたでしょうか。
小堀弁護士「お答えする必要はないと思います」
──必要があるかないかでいえば仰るとおりですが、お答えいただけないということでしょうか。
小堀弁護士「はい」
■柴田氏に直撃
| 柴田未来後援会事務所の事務所開きイベント |
──柴田さんは親鸞会の信者ですよね。
柴田氏「はい、そうです」
──それは、やっぱりプロフィールには書けないんですか?
柴田氏「私の信条については、聞かれればお答えしますけど」
──親鸞会は大学で偽装勧誘をしています。柴田さんは大学時代から信者ですし、アニメの訪問販売にもかかわっていたと聞いていますが。
![]() |
| 柴田氏に直撃する本紙記者陣 |
終始、笑顔を絶やさない受け答えでした。
後日、改めて本人宛にFAXで取材を申し入れたものの、回答は柴田氏本人ではなく後援会事務所名義。現在も特専部所属なのかどうかについては答えないまま、「幹部」であることを否定するものでした。
〈柴田が宗教法人浄土真宗親鸞会の会員であることは事実であるが、同会の意思決定に関与する立場にはなく、いわゆる「幹部」ではない。〉
また、学生時代に偽装勧誘やアニメの訪問販売に関わったかどうかについても明確な回答を避け、このような回答でした。
〈柴田が、学生時代に、同会主催の講演会に参加するなどのサークル活動を行っていたことは事実である。ただし、法に反する行為等に関与したことは一切ない。〉
親鸞会からの支援の有無と、国会議員を目指す立場として反社会的な団体と関わりは問題があるのではないか、との質問に対しては、こんな回答。
〈柴田の立候補にあたり、同会から如何なる支援も受けていない。なお、政教分離の原則が保障されている我が国において候補者の資質と内心の信仰とは無関係である。候補者がその信仰によって差別されることはあってはならないことだと考える。〉
柴田氏の事務所は、「政教分離の原則」を「政治家が問題ある宗教団体と関わっていても不問にしてもらえることを保障する原則」だと勘違いしているようです。
言うまでもなく、ここで問題なのは候補者の「内心の信仰」ではなく、偽装勧誘等の反社会的活動を行う宗教団体に長らく関わり続けているという「実際の行動と経歴」です。
柴田氏が偽装勧誘やアニメ販売との関わりを否定していることを、元特専部員のCさんに伝えると、こんな反応。
「えっ!? 柴田さん、そんなこと言ってるんですか? 大学のサークルそのものが、親鸞会であることを隠して新入生を集めているわけですから、サークルに関わっていたという時点で偽装勧誘に関わっていたということ。特専部員として学生サークルに出向く際にも、たとえば、親鸞会であることを新入生に明かすまでは特専部員も絶対に親鸞会のバッジを着用しないようにと、会内で取り決めがありました。そうやって特専部員も大学での偽装勧誘に加担しているんです。組織的な活動ですから、仮に柴田さんだけが正直に“親鸞会です”と名乗って勧誘しようとしたとしても、そんなことは不可能です。アニメの訪問販売も、特専部で目標を設定して取り組んでいて、柴田さんも含め、各自が活動状況を報告し合いながらやっていました」
元信者の証言が正しければ、柴田氏がウソをついていることになります。
■現在も幹部かどうかは不明
信者であることは認めたが、現在も特専部所属かどうかについては回答を避けた柴田氏(左)
|
「2002年に、親鸞会内部では高森会長の長男の不倫疑惑が持ち上がり、(それを指摘した方の信者が処分されるなど)大騒ぎになりました。この頃から柴田さんは、特専部所属のまま、親鸞会の行事にあまり顔を出さなくなったんです。教団のあり方に疑問を感じたのかもしれません。しかしその後も、通訳として教団行事に関わる場面もあったり、教団との関係は続いていました。柴田さんが現在も特専部員なのかどうかはわかりません。今回の選挙の件で久しぶりに柴田さんの名前を聞き、(教団と深いかかわりがある)兼六法律事務所に入ったと知って、“まだやってたんだ”と思いました」
柴田氏が特専部所属だったとの証言があるのは数年前までで、現在は不明です。柴田氏自身が、特専部所属かどうかについて回答しないため、「元特専部」と断定することもできませんが、「現役特専部員」と断定することもできません。
現在わかっているのは、学生時代からの信者で、少なくとも数年前までは特専部に所属する幹部信者であり、現在も信者ではあるということです。
柴田氏には、ぜひ正確な所属や経歴を明らかにしてもらいたいものです。
■民主・社民は「把握していない」
| 民主党石川県連・近藤和也代表 |
──柴田さんが、全国の大学で問題視されている浄土真宗親鸞会の幹部信者なんですが、それは把握されていますか?
近藤代表「いやあ、個人の信仰がどうというところまでは」
──信仰は何でも構わないですが、偽装勧誘とか反社会的なことをやる団体となると話は別かなと。
近藤代表「詳しくわからないんですけども、いまは安倍政権を許せないという一点で頑張ろうということで」
──その一点が一致できれば、どんな人とでも組もうということ? いまも所属している現役信者ですよ。
近藤代表「私でいえば、妻の家は神道ですし、家は浄土宗ですし、親戚は浄土真宗ですし……」
──神道や浄土宗は学生を騙して偽装勧誘したりしないですよね。
近藤代表「詳しくはわかってないので、またいろいろ取材していただいて」
そう言って去ったので、後日、改めてメールで質問事項を送りましたが返事はありませんでした。
一方、民主党と同じく柴田氏の推薦を決めている社民党石川県連にコメントを求めたところ、以下の回答でした。
「事実関係を把握していないのでコメントできない」
■問われる、推す側の良識
| 安保法制に反対する市民とのトークショーも |
しかし学生や社会人、中高年に至るまで偽装勧誘のターゲットにしている親鸞会は、むしろ市民の敵ではないのでしょうか。柴田氏は、そんな教団の実態を知らないわけがない幹部信者として教団に関わり続けてきた人物です。
柴田氏が支持者などに配布している詳細な経歴書に、親鸞会で活動した経歴などは書かれておらす、ネット上にも、それを示す情報は全くありません。民主・社民両党も、柴田氏と親鸞会の関係を把握していなかったようですから、柴田氏は、こんな重大な情報を隠したまま両党の推薦を取りつけていたことになります。
「柴田さんはもともと石川県の人ではないので、地元の支援者も親鸞会云々の話はまったく知らないと思います。私もいま初めて聞きました」(地元記者)
柴田氏の素性がはっきりしたいま、民主・社民両党が今後も柴田氏を推薦候補としたまま参院選に挑むのかどうか、注目されます。候補者自身に問題があるばかりでなく、このような候補者を推す側の良識も問われるべきでしょう。
なお、この件については、本紙より先に昨日発売の『日刊ゲンダイ』が、いちはやくスクープし、ウェブ版にも「野党共闘に冷や水 民主・社民推薦候補に“新興宗教”幹部疑惑」として掲載されています。
◇関連記事
日本脱カルト協会が世田谷区に要望書「親鸞会への施設提供中止を」
親鸞会が世田谷区施設で偽装勧誘=区は放置の方針
富山県警「やや日刊カルト新聞社」アジトを家宅捜索=著作権法違反容疑
淑徳大学、親鸞会講師の講座を事前に中止
岡山大学学生支援センターがカルト脱会者の手記を配布
USENが浄土真宗親鸞会布教使、岡本一志の講演放送を自粛
◇参考リンク
浄土真宗親鸞会被害 家族の会
さよなら親鸞会
なぜ私は親鸞会をやめたのか

0 コメント:
コメントを投稿