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ぜウールの葛藤【Master of Epic・二次創作】

作者:灼瞳 獅眠
(C)Willoo Entertainment Inc. (C)Konami Digital Entertainment 株式会社ウィローエンターテイメント及び株式会社コナミデジタルエンタテインメントの著作権を侵害する行為は禁止されています。
年はYoM13042。その日は、祭りだった。
皆が今年の報告と、来年の希望を語り合っていた。
私たちは、いつも一緒だった。

リゴスはまじめな責任感のある人だった。
ゼウール兄さんは家族思いの、強い人だった。
私は、何のとりえもない、ゼウール兄さんの妹。

リゴスは国を支えて、みんなも守る人に成るんだって。
ゼウール兄さんは、今の幸せが続くなら、何もいらないんだって。
私は……こんな日々がいつまでも続くといいな。

でも、それは唐突に崩れてしまった。
そう、遠方からの侵略者に。
赤い悪魔。ドラキリア軍に。

町は、赤く染まる。
祭り用の幕はただれ、家は燃える。
殺されていく。泣く人も、戸惑う人も容赦なく。

リゴスは冷静に退路をみんなに示し、誘導していた。
ゼウール兄さんは自分の無力さを罵倒しながら、泣いて走っていた。
私は、何も考えられず、ただゼウール兄さんに手を引かれていた。

生き延びた。ぼんやりした頭で、それだけ、考えられた。
遠くで、町がこうこうと光っている。
意識がはっきりする。足ががくがくする。体に寒気が走る。

でも、そんな感傷は長くは浸れなかった。
ゼウール:ここにもいずれ『奴ら』が来る……。
ゼウール:もっと遠くへ、奴らの手の届かない場所へ……。

たくさん歩いて、飛竜にも乗せてもらって、私たちはたどり着いた。
ネオク高原の南へ、飛竜の砦へ。
ここなら安全なんだって。

兵士の人たちが優しくしてくれる。
でも、足を見たらその人たちも震えていた。
怖いよね。魔物の退治とは違うのだもの。

屋上に上る。月が、見える。
こんな気分で見るのは初めて。
みんな……無事かな。リゴス……生きてるかな。

ゼウール:何をやってるんだ!
そこには、兵士の人と同じ格好をしたゼウール兄さんがいた。
声は、籠っていた。

ゼウール:仮に敵が潜んでいて、矢で狙われたらどうするんだ!
ゼウール:お前まで失ったら、俺は…!
抱きかかえられながら、砦内に戻る。

こんなに心配してくれる人がここにいる。
そう、生き残るんだ。みんなで。
最後に笑って再会できるように。

12日後、首都陥落の知らせが届く。でも、砦の中は変わらなかった。
そしてそれから数か月。
リゴス率いる竜騎士団が砦に来た。

リゴス、生きてたんだ。
よかった。本当に……。
話すのが楽しみだった。

ゼウール:何だそれは!どういうことだ!
扉の向こうでゼウール兄さんの怒鳴り声が聞こえる。
リゴス:言った通りだ。私は、君の妹を貰い受ける。

え?どういうこと?扉に耳を押し当てる。
リゴス:君も聞いてるとは思うが、『十二日間戦争』によって多くが死んだ。
リゴス:竜神の巫女リール様もその時に、天に召された。

リゴス:リール様の腹違いの義姉君であられる君の妹。
リゴス:今までは君の妹であり、私の友人だった。
リゴス:だが、状況は変わった。今こそ新たな竜神の巫女が必要なのだよ。

え?何を言ってるの。リゴス……。
ゼウール:リール様の腹違い?だがあいつは、俺の妹だ。同じ血を分けた妹だ!
ゼウール:俺とあいつは、父親が違うだけ。それで今更、竜神の巫女だと……?

ゼウール:父のいない俺を改心させようと、母はもう1人の父を欲していた。
ゼウール:だが、出会ってしまったのは『2番目』として扱った権力欲の塊だ!
リゴス:黙れ。我らの司令官にその口利き。それ以上言うつもりなら牢獄行きだ。

世界がグルグル回り始めた。
私は何者?
この2人は、何を言い争っているの?

ゼウール:どうしても妹を連れていくというなら、力ずくで止めてやる!
リゴス:ふっ、私に逆らうということは、国に逆らうということ。
リゴス:その意味が分かって言っているのか?

たまらず、扉を開けた。
ゼウール:お前……聞いてたのか?
リゴス:これは……驚きました。

知ってしまった。私の秘密を。
私は、ミクル司令官の娘なんだって。
だから、次の竜神の巫女も私なんだって。

私もリール様のように死ぬのかな。
聞いた話だと、矢に刺されて亡くなったらしい。
やっぱり、痛かったんだろうな。

リール様と自分を重ねて、グルグル考えていた。
その時、リゴスは私の肩を両手でつかんだ。
リゴス:大丈夫。あなたは何も考えなくていい。

ゼウール:お前!
リゴス:黙れ。これは国の決定事項だ。邪魔するなら君でも排除せねばならん。
排除……?それって殺すってこと?なんで、どうして?みんなで生き残ったのに。

リゴス:まだ戦争は、終わってないのです。
リゴス:今はあくまでもお互いの戦力が疲弊した状態なのですから。
私は、決めなくちゃいけない。

明日までに決めてくださいと念を押され、寝室に入る。
鏡があった。覗くと確かにリール様に似てる気がする。
でも瞳の色、仕草とか、ゼウール兄さんに似てた。少しホッとした。

ベッドに入る。いろいろなことが浮かぶ。
戦争で生き残った血縁は、ゼウール兄さんだけ。
頼りになるけど、無茶するから心配だな……。

ミクル司令官ってどんな人なのかな。
みんな尊敬すべき人と言ってるけど、ゼウール兄さんは『権力欲の塊』って。
意外と優しい人かもしれないけど、でも……。

まどろむ中で、私は夢を少しだけ見た。
お母さんを交えて楽しくやった去年の祭り。
ゆっくりになったり急に場面が飛んだり……。


そこは飛竜の砦の一室。
数人の兵士がチェスに興じようと集まっていた。
あるものが、話し出した。

兵士A:遊びの場で不謹慎かもしれないが、リール様を謹んでお悔やみ申し上げよう。
兵士B:あぁ、あのような麗しい方を亡くすとは。まことに嘆かわしい。
兵士C:だが、噂があるぞ。なんでもリール様に義姉上がいらっしゃるらしい。

兵士A:なんと、初耳だな。
兵士B:今まで拝見したことがない。どういうことだろう。
兵士C:なんでも、姉の方は下士官の未亡人からの出自らしい。

兵士A:なるほど、ミクル様のお戯れでできたお子であったか。
兵士B:リゴス殿が言ってた「新たな竜神の巫女」とはその方だな。
兵士C:だが、所詮は平民の子。リール様とは違う。

兵士A:となれば、飾りか。
兵士B:国家の権威を示すだけの存在になるだろうな。
兵士C:似てるというだけで、まったく大層なことだ。

朝になった。
私は、行くことに決めた。
やっぱり父は気になる。


その時、轟音が鳴った。
あわてて外を見ると、砦壁にひびが入っていた。
リゴスとゼウール兄さんがいた。

ゼウール:どういうことだ……。リゴス。
リゴス。私が何も知らないとでも?反乱を扇動する異分子よ。
リゴス:お前達反乱軍はここで消えてもらう算段なのですよ。

ゼウール:国は犠牲を作りすぎた。俺の親父もノアストーン護衛任務の惨めな犠牲になった。
ゼウール:俺たちは、もう、身勝手な国の言いなりになど、なりはしない。
ゼウール:この砦に残った同胞たちは、今、奴らが憎いんだ!

リゴス:あなたならわかってくれると思ってましたが、仕方ないですね……。
ゼウール:結局異分子なら殺すのか、あれだけ同胞が殺されても。
リゴス:国は結束しなければいけないのです。だから、異分子は邪魔でしかないのですよ!

リゴス:さて、おしゃべりはおしまいのようですね。間もなく本隊が到着します。
私は、ゼウール兄さんのそばに立った。
リゴス:どうしました……、まさか、この男のために貴女はここで死ぬ気ですか?竜神の巫女様。
リゴス:ここに残ってもあなたには哀しみしか残らない。さぁ、早く!
竜にまたがったリゴスが手を差し伸べる。
選びたくない……。だって、私たちはいつも一緒だったじゃない。

ゼウール兄さんを押して離れようとしたとき、突然力が抜けて、私は倒れた。
地面に、私の血が、広がっていく。矢羽が、視界の端に見えた……。
リゴス:……ゼウール!貴様だけは…貴様だけは許せぬ!

リゴス:竜神の巫女が、反乱者をかばったなどと!
リゴス:そんな事実、断じて史実に残せるわけないではないか!!
ミクルお父様……リゴス……ゼウール兄さん……。

痛みはなかった。
ただ、これでもう誰にも会えなくなると思うと
悲しかった……。


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