対立続く国旗・国家
教育現場の2氏に聞く
【社会部】十勝管内の小・中学校では先月の卒業式から10日をピークとする入学式にかけて、式での日の丸・君が代の扱いをめぐり管理職と教職員団体の教員が論議を交わしている。「国旗・国歌の指導は学習指導要領に定められている」「日の丸・君が代の強制は許されない」−。論議の解決に向けた糸口はなかなか見えてこない。日の丸・君が代をめぐり異なる立場の十勝管内教育委員会連絡協議会教育長部会の大滝宏部会長(足寄町教育長)と北教組帯広市支部の楢山直義支部長に話を聞いた。
◆ ◆ ◆
|
十勝管内教育委員会 連絡協議会教育長部会 大滝宏部会長 |
|

|
|
法に従っての実施が義務
−学校で国旗・国歌をやらねばならない根拠は
卒業、入学式での国旗・国歌の指導は、学習指導要領に定められている。学習指導要領は、公教育の基準として法的性格を持つ。わが国の将来を担う青少年、将来、国際社会の中で羽ばたく青少年の育成の観点から法制化を機に、これまで以上に国旗・国歌に対する正しい認識や理解が得られるよう指導したい。
−十勝管内教委連が2月に国旗・国歌の対応について統一見解を出した理由を
管内では、国歌斉唱の実施率が低く、学習指導要領通りに実施してくださいということ。指導要領では卒業、入学式のほか社会、音楽の授業でも指導が定められている。音楽の歌唱指導は、ほとんど実施されていないと推測している。
−北教組は、日の丸・君が代の強制に反対している。問題はないか
子供の内心の自由については、国会での文部省の見解では、個人の内心にとどまる限り、保証されねばならないとしている。個人の内心に立ち入らなければ、内心の自由を脅かすものではない。
教員は、法に従って指導するのが義務であり、職務。教員の思想信条を理由に国旗・国歌の実施や指導を拒否できないと考える。
−管内中学校の卒業式で「君が代」の斉唱率が昨年の3.3%から81.7%に上昇したが
学校現場の努力の結果が数字に表れた。法制化を重く受け止めたことが大きく、校長会の取り組み、教委連の統一見解なども影響を与えた。
−学校現場で管理職と教職員の意思の疎通は図られたか
相当の時間をかけて粘り強く話し合いはされた。教職員団体は国旗・国歌に反対、一方、管理職は学校の管理運営を任されている以上、理解を得ることは難しいが、今後とも意思の疎通を図る努力をしなければならない。
−今後は歌唱指導などにも取り組むのか
今後のことは各教育長、校長会、十勝教育局などと話し合い、子供たちへの指導が行きわたるよう進めていきたい。
◆ ◆ ◆
|
北教組帯広市支部 楢山直義支部長 |
|

|
|
なぜ学校現場に持ち込む
−日の丸・君が代に反対する理由は
個人的な君が代・日の丸への考え方を統制するつもりはなく、学校現場への強制を反対している。教育現場にだけなぜ持ち込もうとするのか、その意味を問いたい。子供たちにも思想信条の自由はあり、学校の中に取り入れるのは強制も同様。日の丸・君が代を国旗・国歌とすることは、国家主義の表れで、愛国心を超えてシンボルとすることは「教え子を再び戦場に送るな」というわれわれのスローガンに反する。
−卒業式での実施率上昇を、どのように受け止めているか
現場では法制化を受けて実施率が高まったのは事実。しかし、教職員と管理職との間に意思の疎通があって実施されたのではない。抗議行動である退席や着席行動を見てもらえば分かるように、管理職側の一方的な押しつけだった。
−抗議退席が子供や父母に与える影響はないのか
帯広緑園中の退席問題について、マスコミ報道が世間に与えた影響は大きいと受け止めている。しかし、退席は君が代斉唱の間だけ。式を欠席するわけではなく、抗議行動は父母の理解が得られるという認識のもとに行っており、われわれにできる最大の意思表示。子供に与える影響もないと考えている。帯広緑園中の問題もすぐに処分と結び付けた世論が先行したが、なぜわれわれがそこまでしなければならなかったのかを考えてほしい。
−今後、君が代・日の丸問題を子供たちにどう教えていくのか
国旗・国歌と位置付けている限り指導をするつもりはない。ただ、歴史的経緯やこれを取り巻くさまざまな議論があることを教えていく必要はある。
−市内の入学式はどのような状態が予想されるか
一度、実施してしまった学校から日の丸・君が代を排除するのは難しく、実施率の上昇に脱力感があることは否めない。しかし、戦いはこれからが正念場。今、この問題に対して声を上げなければ、テープがピアノ演奏になるなど、強制はエスカレートする。今回も各学校でぎりぎりまで交渉を続けていく。
(00.4.8)
|