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実録!数学のできない文系男子がデータサイエンティストを志してみた!①

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データサイエンティストは、モテる。

ぶらりと立ち寄った書店で、何気なく手に取った本の言葉でそれまでの人生からすっかりコースを変えてしまう、、、

そんな人はどれくらいいるのだろうか?

その日、目に留まった本は『統計学が最強の学問である』という、話題の本であった。めくって、視界に飛び込んできた言葉は次のようなものであった。

「Googleの(中略)博士は(中略)こう語った。
 私はこれからの10年で最もセクシーな職業は統計家だろうって言い続けているんだ。」

立ち読みの内容など書店から立ち去ればすぐに記憶からこぼれて落ちてしまう。

なのに、なぜかこの惹句のみが強烈に脳裏にこびりついて離れない。

セクシー……。モテるのか…!?

モテるという言葉の魅力にあらがえる男子などいない。しかし、しがない文系学生の自分は、今まで統計学など1度も触れたことがない。

そう思いながら大学の構内をとぼとぼ歩いていると、いつの間にかやけにカラフルなポスターの前にいた。

ビッグデータ&データサイエンティストコース新設 〜副専攻『統計学』受講相談会〜

誘われるようにふらふらと教室のなかに入ると、長身で白髪の、スーツに身を包んだ紳士がぬっと現れた。

「来たな、若人(わこうど)よ!己が統計学に更に磨きをかけに来たのか!」

「いえ、統計学は今までやったことがないんですが」

表のポスターを見て来ました、という言葉をさえぎって紳士は言う。

「我が、副専攻『統計学』は受講要件を統計検定2級程度以上と定めておる!」

「…なんですか、それは?」

「知らぬようだから教えよう!統計検定は統計能力を認定するために日本統計学会が2011年に開始した検定試験で、2級は大学基礎課程レベルだ!」

指摘されて痛いところを突かれたが、大学に入りながら、これまで機会がいくらでもあったかもしれないのに統計学について全く授業を取ったことがなかったのだった。

つまり、今まで眼中になかったほど興味がなかったのだった。

「更に!今までやったことがないというから言っておくが、平成20年の学習指導要領改定でおよそ30年ぶりに統計学の内容が拡充されて、今では中学生も高校生も統計を習っておる!統計検定の4級は中卒程度、3級は高卒程度の内容だ!」

「し、知らなかった!」

「すなわち!君は統計において最近の中学生、高校生にも劣る最弱の存在!それでも、この長く、険しい統計坂を登るというのか?!」

わなわなと震えながら、紳士の鋭い眼光を見やると、

「勧めはせんが、もしやるというならまずは参考書でも読んで、統計検定に挑むがいい。2級までは律儀にも毎年6月と11月に実施されておる」

と、紳士はにやりと笑みを浮かべた。

「おそらく、中学校から大学に至るまで統計の授業を受けたことがないという君にもう一つ教えておこう。インターネット上の動画を使って無料で学べる講座『gacco』で、統計検定に準拠したカリキュラムが不定期に開講されている。歴史の教科書穴埋めノートみたいなオフィシャルスタディノートも発売されて、初めての人間にはとっつきやすいかもしれん。」

紳士は背を向けて振り返り、

「ここに入門できる力をつけた頃、再びまみえよう!若人(わこうど)よ!」

と言って、その場を立ち去る。副専攻の相談会はこれからどうなるのだろう?

「待って下さい!新設されるというビッグデータ&データサイエンティストコースとは?」

と追いすがるように尋ねる。

「統計学はインターネットの発達とコンピュータの能力の向上により更なる活躍の場を得て、そのポテンシャルを爆発的に開花させたのだ。それ以上は、ここで学び始めてから知るのだな!さらば!」

どっと疲れが出て這うようにして下宿に戻り、ネットで「データサイエンティスト」という語を検索する。

リストに出てくるのは「稼げる」「ワークライフバランスの取れた」「知的」など、はたしてポジティブな言葉ばかりであった。

自分の知らぬ間に何かが起きている。遠き、行ったこともないアメリカから、太平の眠りを覚ます黒船級の大波が押し寄せては返す、波頭の砕ける残響が聞こえてきそうだ。

モテるよー…… モテちゃうよー……

乗るしかない、このビッグウェーブに。

(続く)

参考文献:

  • 『統計学が最強の学問である』西内啓著、ダイヤモンド社
  • 『日本統計学会公式認定 統計学�T:データ分析の基礎 オフィシャル スタディ ノート』日本統計学会編、竹村彰通・下川敏雄・酒折文武・中山厚穂著、総務省統計局協力、日本統計協会刊

※この文章の物語部分はフィクションであり、実在の人物、組織等とは全く関係ありません。

書いた人:縄田陽介

山口県防府市の地域紙の記者を約10年勤め、最後の数年は諸般の事情により社長を務めた。学問へのあこがれ捨てがたく、大学院入学のために退職。その直前に行われた市長選において、当選した現職市長が開票翌日の記者会見で「どうせ彼らには市長なんて無理だった」などと対立候補を揶揄する問題発言があったので独占ですっぱ抜いてみたところ、何も起こらなかったという悲しい過去を持つ。ここ1年は政治哲学と統計を勉強。現在就職活動中。

twitter:@nawatayosuke

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