こんにちは。FBIのやり方に反感を覚える落戸マナブです。
かなーり時流に乗り遅れた感はありますが…
AppleとFBIの対立は日に日に激しさを増していますね。
AppleのスタンスはPRだとの批判があれば、そもそもFBIがパスワードを変更したのが悪いと裏話を暴露されたりと、事態は「お前が悪い!」「いーや、お前が悪い!」と言い合う様な状態に。
当初は「プライバシー保護」VS「公共の秩序の維持」といった正義VS正義の構図だったのに、どうしてこうなったんでしょう。
FBIの目的
今回の一件について次々と情報が明らかになる中、FBIは日頃から通信履歴を傍受している為、そもそも乱射事件実行犯の端末ロック解除をしなくてもデータを入手しているとの話が出てきました。
また、Appleは当初からFBIの捜査には協力しており、データを確認する方法も提示していたが、何故かFBIが実行犯のAppleIDパスワードを変更させていたためにデータが確認できず、結果として端末の解除命令が出たとか。
記事を読んだ後、パスワードを変更した理由がさっぱり判らなくても大丈夫。私もわかりません。
ただ、うっかりで変更したとか、変更後のパスワードを忘れたとか、そういったレベルではない気がするんですよねえ。
FBIは超監視社会を目指すのか
その昔、マイノリティ・レポートという映画がありました。犯罪の発生が100%予知できるシステムが適用された都市を舞台にした映画だったんですが、FBIが目指したいのは、つまりそのような未来であるような気がします。
映画では超能力者の予知で犯罪の発生を予知していましたが、個人情報の塊であるスマートフォンをテロリストまでが利用するようになった現在、最も確実な犯罪予知の方法は、スマートフォンに個人を監視させる事でしょう。
確かに、今でも通信の傍受は続けられていて、通信履歴の照会も出来るのかもしれません。しかし、膨大な通信を監視するよりは、個人を監視する目と耳があった方が確実性は高い。兆候を報告してくれる口を備えていれば言う事なしです。
であるならば、テロリズムの撲滅という大正義を振りかざし、司法局を通じて公的なバックドアを作成させる今回の行動は、Appleが危惧する通り、今回の一件だけで済む筈が無く、要求はエスカレートしていく事が容易に予想されます。
行きつく先は勿論、
監視されている事に気づく事すら困難な超監視社会。
当局の目から逃れるには、山奥で自給自足をする他無くなるんじゃないでしょうか。
機械的な管理は管理者の理想郷
ただ、犯罪捜査により国家の治安を管理する立場であるFBIが、目指そうとしている(と勝手に推測する)体制も、判らなくはないんですよ。上意下達100%のスマートな管理というのは、管理者からしてみれば理想郷ですから。
例えば仕事の受注一つを取ってみても、いざ受注すると現場サイドが求める待遇と折り合いが合わなかったり、出来上がりが明後日の方向に行ってしまう事は良くあることです。
『そこで無駄な労力使うと全体の益が減るのに、なんでわからねえんだ!』といった言葉は、同じ管理職や幹部社員から聞く愚痴の定番と言えるでしょう。
犯罪を管理する立場として、FBIはこれまで尋常ではない量の労力を注いできたでしょうし、同じ労力でより大きな成果を求めるのは当然の事だと思います。
それでもFBIの『やり方』は間違っている
Appleの方針とFBIの思惑、双方は支持者の大小こそあるでしょうが、それぞれが自分の筋を通そうとしているだけなので、どちらが正しいという事はありません。
また、プライバシーの保護と情報の監視・収集という相容れないポリシーがぶつかり合う以上、お互いに妥結点を探らない限り、事態は平行線のまま進捗する事はないでしょう。
でも、今回の両者を『国家という枠組み』の中で『現場と管理側』に例えた場合、
現場の負担を無視する様なFBIの姿勢は、明らかに間違っていると言わざるを得ません。
組織と負担
組織が動く時は、必ずどこかに負担がかかります。でも、負担がかかるのは当然であるからといって、それが負担を無視する免罪符にはなりません。負担を無視した動きは、全体の崩壊を招くからです。
例えば、これを身体の動きに例えた場合。人が歩こうとすれば、その動きは足腰に負担をかける事になりますが、これは『目的地に到着するために必要』なので仕方がありません。
しかし、必要以上に速く走ったり、重すぎる荷物を持ったりすれば、それは身体の故障を招いてしまいます。
従って、管理側は負担に耐え得るかどうかは勿論、その負担が本当に必要かどうかを見極めなければいけませんが、FBIのとった今回の行動は、この見極めの手順があまりにも杜撰に思えてならないんですね。
国家の一部としてFBIが背負うもの
仮に、このままAppleが司法局の命令を躱し切れず、結果としてバックドア入りOSを作成した場合、どうなるのか。
多数のiPhoneユーザはもちろん、全ての情報端末利用者は、いつもどこかで監視されているのではないかと感じながら端末を利用し、その技術が悪用されないかと不安に駆られることになるでしょう。
そうなった時、 人が不審を抱く対象は何になるでしょうか。
OSを改修したApple?
命令を出した司法局?
発端となったFBI?
それとも米国?
FBIは言うまでもなく米国という巨大な組織を支えるための一部であり、その行動は国家存続という大きな目標に向かっています。であれば、FBIの行動の奥には米国の意思決定機関が多少なりとも存在する訳です。
もしも今後、世論の広まりを受けて「FBIの独断行動で今回の騒動は発生した」などと発表されても、「そうか、FBIだけが悪いんだな」と思う人が、果たしてどのくらい存在するのか。
FBIは正に『国家への信頼』の一部を背負っているのです。
現場の信頼を失った組織の行く末
今回の一件ですぐさま国家の在り様が変化するとは言いません。しかし、国民の負担を無視して国家の目標を追究した結果がどうなるかは、日本のすぐ近くに具体的な前例があるため、容易に推測できるのではないでしょうか。
国民は国を脱出する機会を窺いながら生活し、国を護るための軍人すら国庫から盗みを働いて国外に逃亡する始末。
勿論、そんな国民を国が信頼する筈もなく、恐怖政治で抑えつけるあまりに餓死者まで発生する。
自分たちの痛みや苦しみを無視する組織に、誰が忠誠を誓い、心血を注いで働こうとするでしょうか。
現場の信頼を失った組織は足元から崩壊する。
これからも管理側に立つことがあるかもしれない身として、努々この事実を忘れず、胡坐をかくことのないようにしよう。
今回の一件は、強く私にそう考えさせたのでした。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
それでは、また次回。