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映画「オデッセイ」の日本版タイトルは「火星の人」にするべきだったのか

2016年2月24日 09時50分

ライター情報:青柳美帆子

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大ヒット公開中の映画「オデッセイ」。火星に取り残されてしまった宇宙飛行士ワトニーが、絶体絶命の状況下にもめげずに科学の力で生き残り、彼の生存を知ったNASAの人々も科学の力で彼を地球に連れ戻そうと奮闘する物語だ。見終わったあと、純粋に「かがくのちからって、すげー!」と思わせてくれる。
原作『The Martian』はアメリカで大ヒット。日本でも2014年に早川書房から『火星の人』という邦題で出版され、読者から愛されている。エキレビ!でも原作ファンのレビューが公開された
2014年に刊行された『火星の人』(映画公開を受けて上下巻に分かれた新版が発売中

「オデッセイ」はダメなタイトル?


公開前、SNS上でもっとも注目を集めていたのはその日本版タイトルだ。原作ファンが予想していたタイトルは本命:火星の人、対抗:The Martian(及びそのカタカナ表現)といったところ。
ところがタイトルは「オデッセイ」! 原作にはかけらもないこのタイトルをセレクトしたことに、原作ファンの多くは不満を持った。
では、「オデッセイ」という題は、いわゆる「ダメ邦題」だったのだろうか?

そもそも、「オデッセイ」とはどういう意味のタイトルなのか。その答えはパンフレットに書いてある。少し長くなるが引用しよう。

〈挿入歌としてデヴィッド・ボウイの「スターマン」がフルに使われている。リドリー・スコットとデヴィッド・ボウイといえば、じつはリドリー演出のアイスクリームのCMに無名時代のデヴィッドが出たことがあって、22歳のデヴィッドは「スペース・オディティ」のヒットで将来が開ける直前だった。
スタンリー・キューブリックとアーサー・C・クラークは、時間と空間のかなたまで行って帰ってくる旅の物語を、ホメロスの「オデュッセイア」にならって『2001年宇宙の旅』(2001:A SPACE ODYSSEY/宇宙のオデュッセイア)と名づけた。デヴィッド・ボウイはそれをもじって「宇宙のオディティ(特異な人)」を書いた。本作の邦題『オデッセイ』も、火星に行って帰ってくる旅の物語だからこそ選ばれたのだろう

「オデッセイ」は、「行きて帰りし物語」を表す言葉。そして過去の偉大なSF映画にも大スターにも目を向けた言葉でもある。そうやって考えると、そう悪くないのではないだろうか?

『火星の人』にはどうしてならない?


とはいえ、やはり熱心な原作ファンの多くは「『火星の人』がよかった」と言うだろう。確かに『火星の人』は名題なのは間違いない。
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ライター情報

青柳美帆子

フリーライター。1990年(平成2年)生まれ。オタクカルチャー・イベントレポ・明るいエロス・少女革命ウテナなどを中心に執筆しています。

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