社員に告ぐ「社内飲酒禁止、階段でのSEXも」
クラウドベースの企業向け人事管理ソフトウエアを無料で提供しながら保険会社から紹介手数料を得ている新興企業、ゼネフィッツの新最高経営責任者(CEO)、デビッド・サックス氏は先週、特に営業スタッフのあいだで蔓延している「やんちゃな企業文化」を変えようとしてオフィスでの飲酒を禁止した。
とはいえ、サンフランシスコにあるその本社に大学の友愛会館のような印象を与えてきたのは飲酒だけではない。
昨年6月、同社の不動産・職場サービス部門の責任者、エミリー・アジン氏はサンフランシスコ在勤の従業員にメモを送信し、品のない行為をやめないと同社がオフィスビルの階段を利用できなくなると警告した。
以下はウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が確認した電子メールの一部である。
「ビルの管理事務所と警備室から階段が不適切に使われているという苦情がわが社に寄せられている……タバコの吸い殻、ビールが入ったプラスチックカップ、いくつかの使用済みコンドームなどが階段で見つかったという。信じがたいが事実である。階段で喫煙、飲酒、食事、セックスをしないこと。ビルやわが社の規則を尊重し、常識を働かせるようにして下さい……」。
今月に入ってからの一連のメモで、サックスCEOは高度に規制された医療保険業界に身を置く企業にふさわしい、より成熟した職場環境を育むことが重要だと述べてきた。スタッフに17日送信され、飲酒の禁止を通達したメモで、サックスCEOは「オフィスでの飲酒に関して適切と不適切を定義、分析するのは難し過ぎる」とその理由を説明した。
元従業員らによると、営業担当者が大口の顧客と契約を結んだとき、スタッフがオフィスに集まってショットグラスで祝杯を挙げることが何度かあったという。米新興ニュースサイト「バズフィード」も先週、同社のパーティーのような雰囲気を伝える記事を掲載した。
ゼネフィッツの広報担当者ケネス・ベーア氏は22日、文書を通じて次のように述べている。「ゼネフィッツの新CEOが明確に示したように、わが社には新たな章を開き、新たな企業価値や企業文化を受け入れるときが来た。今やゼネフィッツはすべての規制上の要件の順守を確実にするビジネス手法の開発に焦点を当てており、誠実に仕事をすることをいちばん重要な価値としていく」。
シリコンバレーの新興企業がオフィスに酒類を常備していたり、交流イベントを催したりすることは珍しくないが、ゼネフィッツではそうしたことが過剰に行われたかもしれない。営業スタッフの自由奔放な文化も一因となり、創業者でCEOだったパーカー・コンラッド氏は今月辞任した。
コンラッド氏の退社を知らせる今月初めの手紙には厳しい言葉が並んだ。サックスCEOは同社の企業文化や雰囲気は不適切だったと述べ、同社のビジネス手法を批判した。「実際のところ、わが社の内部プロセス、内部統制、法令遵守に向けた取り組みの多くは不十分で、明らかに間違った決断もあった」とサック氏はその手紙で明かした。「コンラッド氏はその結果として辞任することになった」。
コンラッド氏にコメントを求めたが、応じていない。
その新興企業にパーティーのノリがあるからと言って、従業員が怠けていたというわけではない。特に繁忙期には1日の勤務時間が15時間に達することもよくあったと元従業員は振り返る。
コンラッド前CEOの下、ゼネフィッツは瞬く間にシリコンバレーの寵児となり、投資家から5億ドル以上を調達し、昨年5月にはその企業価値が45億ドルになった。コンラッド氏は定額課金方式のソフト会社の歴史上で同社が「最速の成長企業」だと自画自賛し、「構え、撃て、狙え(本来の順番は構え、狙え、撃て)」を同社のモットーにした。
ところが昨年になると、規制上のいくつかの問題が浮上した。WSJが以前報じたように、ゼネフィッツは保険販売免許に関連したビジネス手法をめぐってカリフォルニアなど複数の州の規制当局から厳しい調査を受けている。