「40年超」初の新基準適合 規制委
原子力規制委員会は24日の定例会合で、運転開始から40年を超えた関西電力高浜原発1、2号機(福井県)が新規制基準に適合しているとする審査書案を了承した。事実上の審査合格で、運転開始から40年を超える老朽原発では初めてとなる。規制委は意見公募などを経て、4月以降に正式な審査書をまとめる見通しだが、再稼働のためには運転延長などの認可がさらに必要で、法的な期限となる7月までに手続きが間に合わなければ廃炉になる可能性もある。
新基準に適合した原発は、高浜3、4号機や九州電力川内(せんだい)1、2号機(鹿児島県)、四国電力伊方3号機(愛媛県)の5基あり、今回で計7基となる。しかし、高浜1、2号機の場合は手続きが7月に間に合ったとしても大規模な改修工事が必要で、再稼働は早くとも2019年10月以降になる。
高浜1号機の運転開始は1974年11月、2号機は75年11月で、ともに40年を超えた。東京電力福島第1原発事故を受けた法改正で、原発の寿命は原則40年に限られ、一度だけ最長20年延長できる。そのためには審査の合格に加え、詳細設計を定める工事計画と運転延長の認可を期限までに得なければならず、高浜1、2号機の場合は新基準施行から3年に当たる7月7日が期限となる。
審査では、老朽原発では1基当たり数百キロメートル使用されているとされる可燃ケーブルの取り扱いが焦点となったが、関電は難燃ケーブルへの交換が難しい場所については、可燃ケーブルに防火シートを巻いて延焼を防ぐ安全対策を提示。規制委もこれを容認した。地震・津波対策については既に合格している3、4号機のデータを利用した。関電は昨年3月に1、2号機の審査を申請し、11カ月の短期間で審査を終えた。
高浜原発は3号機が今年1月に再稼働し、4号機も水漏れが発生したものの、関電は予定通り今月26日の再稼働を目指している。【酒造唯】
【ことば】原発の40年運転制限(40年ルール)
2013年7月8日施行の改正原子炉等規制法に盛り込まれた。導入当時の民主党政権が「圧力容器が中性子の照射を受けて劣化する時期の目安」として、ルールを定めた。運転延長には、運転開始から40年がたつ前日までに規制委の許認可を受ける必要がある。高浜1、2号機は既に運転40年を超えているが、施行後3年の猶予期間があるため7月7日が認可手続きの期限。電力各社は40年ルールに基づき、日本原子力発電敦賀原発1号機(福井県)など5基の廃炉を決めている。
解説 廃炉ルール形骸化も
運転から40年を超える関西電力高浜1、2号機は、原子力規制委員会が事実上の合格証をまとめたことで、延命への道を一歩進んだ。今後の手続き次第で廃炉の可能性は残るが、原発運転の「40年ルール」が、早くも骨抜きにされることを意味する。
2基の安全審査が申請されたのは昨年3月。全国22、23基目と「後発組」だったが、規制委は昨秋以降、毎週のように2基の審査を開き、6、7基目という早い順番で審査書案了承にこぎ着けた。申請から2年半以上経過しても合格証が出ない原発もある中、こうした「厚遇ぶり」は異例だ。
規制委が審査を急いだ背景には「時間切れで廃炉」の事態を避ける狙いがある。2基は7月に法的なタイムリミットを迎える。審査が長引いて廃炉になれば、電力会社から訴えられるリスクを抱えることになる。政府にとっても、2030年度の電源構成で原発比率を20〜22%とする方針を守るには老朽原発の運転延長が不可欠で、廃炉を避けたいのが本音だ。
しかし、最長20年の運転延長は、あくまで「例外」だったはずだ。規制委の田中俊一委員長も「20年延長は相当困難」(12年の規制委発足直後の記者会見)と述べていたが、実際はわずか11カ月の審査で結論を出した。今回のケースを足掛かりに「40年ルール」が形骸化する恐れもある。
40年ルールは、福島第1原発事故を教訓に原発依存度を減らすことを目指し、国会で成立した経緯がある。規制委はこうした初心に立ち返るべきではないか。【酒造唯】