「色覚障害者に見やすい信号だったら…」
被告、公判で訴えへ
一時停止義務を守らず乗用車で交差点に進入し、タクシーと衝突して2人を死亡させたとして自動車運転処罰法違反(過失致死)に問われた宮城県富谷町、中学教諭、千葉厚志被告(52)の初公判が23日、仙台地裁(村田千香子裁判官)であった。千葉被告は起訴内容を大筋で認めて謝罪した上で「先天性色覚異常があり、赤点滅の信号を黄色点滅と見間違えた」と述べた。
弁護側は今後、信号機が障害のある人でも見えやすい「ユニバーサルデザイン」に対応していなかった点などから、情状酌量を求める方針だ。
起訴状によると、千葉被告は2014年6月16日午前5時10分ごろ、仙台市泉区の市道交差点で、一時停止義務のある赤色点滅だったにもかかわらず、時速40〜50キロで進入。黄色点滅で左から来たタクシーと衝突し、男性運転手(当時65歳)と乗客女性(同63歳)を死亡させたとされる。検察側の冒頭陳述などによると、現場の信号機は午後8時から翌午前6時まで赤と黄色の点滅表示だった。【伊藤直孝】
LED型、点滅「見えにくい」声多く
色覚障害は色の区別がつきにくい先天的な遺伝子異常で、日本人で男性の5%、女性の0.2%、計300万人以上いるとされる。東日本大震災以降、全国で消費電力の少ないLED(発光ダイオード)型への信号機切り替えが進むが、従来の信号機よりも色が見えにくいという指摘もあり、専門家は「誰にでも見やすい信号機の導入を進めるべきだ」と提言する。
道交法施行規則は免許取得の際に赤、青、黄色を識別する適性検査を義務づけている。日本眼科医会理事の宮浦徹医師(大阪)は「色覚異常は日常生活で不都合はほとんどなく、信号機の識別も通常は問題ない。異常を自覚しているなら慎重に運転すべきだった」と指摘する。その一方で「LED型信号や点滅信号は見えにくい、という話をよく聞く」とも話す。
識別しやすくするため、九州産業大の落合太郎教授(環境デザイン)は、赤信号の中に特殊なLEDを配置して「×」印を示し、色覚障害の人にだけ「×」が遠くからでもよく見える「ユニバーサルデザイン信号機」を考案。2012年に福岡市で2カ月間設置する社会実験を行った。規格化すれば従来型と費用は変わらないとして、警察庁などに実用化を呼びかけている。
米国やカナダでも赤信号の形状を変えるなど、色だけに頼らない信号機が試験設置されているという。落合教授は「色覚異常の人の多さを考えると、免許取得条件を厳しくするような規制強化は現実的ではない」と話す。【伊藤直孝】