成沢解語
2015年10月15日13時48分
米軍と自衛隊が共同で使う岩国基地(山口県岩国市)の周辺住民らが、国に騒音被害を訴えた訴訟の判決が15日、山口地裁岩国支部であった。光岡弘志裁判長は、過去の被害分として死亡した1人を除く原告全員に総額約5億5800万円の損害賠償を支払うよう国に命じた。将来分の賠償は認めなかった。
米軍機や自衛隊機の飛行差し止めや、米軍再編に伴う厚木基地(神奈川県)の空母艦載機移駐の差し止め請求も退けた。
原告は、先行する訴訟で賠償が認められてきた航空機の騒音基準「うるささ指数」(W値)75以上とされる地域の住民654人で、2009年に総額約18億円の賠償などを求めて提訴。12年11月にはオスプレイの飛行差し止めも請求に加えたが、これも退けられた。
光岡裁判長は「原告らは騒音による不快感や精神的被害を被っている」と認め、国が騒音対策として実施した基地の滑走路を沖合1キロに移した事業についても、「騒音減少の効果を生じさせているが、相当部分の区域で被害が生じていると推認でき、一定の限界がある」と結論づけた。
一方、国からの助成を受けて住宅防音工事を実施した原告については「一定程度の被害軽減の効果を受けている」として慰謝料の減額を考慮できるとした。
米軍機の飛行差し止めについては「国は米軍機の活動を制限できる立場にない」と指摘。自衛隊機の飛行差し止めについても「行政訴訟はともかく、民事訴訟による請求は不適法」と判断した。
防衛省によると、基地に離着陸する米軍機や自衛隊機に関する騒音訴訟は岩国以外にも、横田(東京都)、厚木(神奈川県)、小松(石川県)、嘉手納、普天間(ともに沖縄県)の各基地で計8件が係争中。厚木の訴訟では横浜地裁が14年5月、全国で初めて自衛隊機の飛行差し止めを国に命令。今年7月には控訴審で東京高裁も同様の判断を示し、国と住民側双方が上告している。(成沢解語)
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〈岩国基地〉 山口県岩国市の中心部を流れる錦川河口の三角州にあり、面積は約790ヘクタール。FA18ホーネット戦闘攻撃機や米軍普天間飛行場(沖縄県)から移駐したKC130空中給油機など約75機が所属し、軍人やその家族ら米軍関係者約6600人が暮らす。海上自衛隊も共用している。2017年ごろには米軍厚木基地(神奈川県)から空母艦載機59機の移駐が予定され、嘉手納基地(沖縄県)と並んで極東最大規模の航空基地になる。
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朝日新聞社会部
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