マイナス金利でも急上昇リスクに備えて走れ、債券から株に-CLSA
2016/02/24 06:00 JST
(ブルームバーグ):「もしあなたがファンドマネージャーで、資産の大部分を債券で保有し株をほとんど保有していない場合は、歩かずに走れ」ーー。CLSAの日本担当ストラテジスト、ニコラス・スミス氏は、日本銀行によるマイナス金利政策下の債券利回りはいずれ急上昇(価格は急落)する恐れがあるとして、債券を売って株式に移行する必要があると話す。
スミス氏は「国債は安全資産、株式は危険」という定説に反して、「債券利回りがゼロを下回ったら、利回り上昇に伴う価格下落に備えヘルメットをかぶった方がいい」と注意を促す。かつて国債利回りが5~6%あった時代は「7割を債券、3割を株式に当てていれば、元本を心配することなく運用ができた」と、ブラックロック・ジャパンリテール営業部門長の浜田直之マネージングディレクターも振り返る。
日銀のマイナス金利政策を受け、23日の国債市場では年限10年以下ですべてマイナス金利となった。日銀の買い入れと政府の発行減で国債は品薄感があるため、金利上昇(価格下落)の兆しは見えないが、生命保険協会の筒井義信会長は、日銀の姿勢について「物価上昇のトレンドを逆戻りさせないという非常に強いコミットを感じさせる」との見方を示す。黒田東彦総裁は3日の講演で、「できることは何でもやる」と述べ、2%の物価目標の実現に強い意欲を示した。
消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)は最新の昨年12月時点で前年同月比0.1%上昇にとどまっているが、ブラックロックの浜田氏は、「日銀の覚悟というのを過小評価しない方がいいかもしれない」と指摘。消費者物価が目標に近づいて来るなどと「インフレ率が新聞をにぎわすようになると、投資家の行動が変わる可能性がある」とみている。
タンス預金運用資産の42%を日本国債が占める国内生保は、金利低下が長引けば保険契約者に約束した利回りが確保が難しく、逆ざやが発生する可能性が大きくなっている。生保協の筒井会長は「日本国債中心の運用は困難」と外国債券や社債、インフラ関連や成長分野への投資など、さらなる投資分散が必要と言う。
超低金利下で資産運用に悩んでいるのは、プロの機関投資家だけでなく、個人も同じだ。日銀が公表している15年9月末の資金循環統計(速報)では、個人金融資産のうち債券が前年同月末に比べて11.3%減の25兆円、株式・出資金は0.2%減の163兆円に対し、現金・預金は887兆円と1.9%増加し、全体の53%を占めた。
浜田氏は、デフレの時代はタンス預金しておけば「物価が下がりデフレ率という利息がついていたと考えることもできる」と話すが、インフレ時代のタンス預金は「インフレ率という管理コストを払っている」と言う。「お金にもコストがかかることを絶対忘れてはいけない」。
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更新日時: 2016/02/24 06:00 JST