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 福井県越前市大虫町で越前簞笥(たんす)の工房を営む山口祐弘(ゆうこう)さん(40)が、車輪が付いてコロコロと運べる越前簞笥のキャリーバッグを開発した。着物などの和装に合い、飛行機に持ち込むこともできる。山口さんは「このキャリーバッグが越前簞笥を知ってもらうアイコンになれば」と話す。

 山口さんは大学卒業後、建設機械メーカーで設計などを担当していたが、脱サラして出身地の越前市に戻った。県などの後継者育成事業で指し物工芸を学び、越前簞笥の職人として独立。客の要望に応じてつくるオーダーメイドの商品を手がけ、展示会でも積極的に発表してきた。

 2014年秋、西武福井店で催されるファッションショーに向けて、「越前簞笥を使ってファッションアイテムを作れないか」と伝統工芸仲間から声がかかった。いろいろと考えた末、越前簞笥のキャリーバッグを発案した。

 越前簞笥はケヤキやスギ、キリなどの材を伝統的な指し物の技術で精巧に「ほぞ組み」し、鉄製金具を付け、漆塗りで仕上げた重厚な味わいが特長だ。しかしキャリーバッグの軽快さを表現するため、キリ材の明るい色調を生かして本体をつくり、金具は車用の塗料でピンク色に。ショー本番でモデルがキャリーバッグを引いて歩くと注目を浴びた。

 さらに、市販に向けて機内に持ち込めるサイズに改良。軽く腰掛けられるように強度を高め、道路の段差でも傷まないように車輪などの設計を工夫した。多少の雨ならはじく塗料で仕上げた。各引き出しに鍵をかけることもでき、旅先での安全対策もばっちりだ。