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【群馬】

虐待でトラウマと孤独 養護施設退所後の支援活動報告

虐待を受けた子どもの支援について発言する登壇者=前橋市の市総合福祉会館で

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 虐待を受けた子どもの支援について理解を深めるシンポジウム「フェアスタートアクション2016 子ども虐待と社会的養護を考える」が、前橋市の市総合福祉会館で開かれた。現場で子どもらと向き合う人たちのパネルディスカッションがあり、それぞれの立場から現状の紹介や問題提起をした。 (原田晋也)

 虐待を受けた子どもの心理に詳しい児童精神科医や、子どもを支援するケアワーカーら四人が登壇。それぞれが活動を紹介し、意見交換した。

 児童養護施設などを退所した人たちの生活を支援している相談所「ゆずりは」(東京都)の所長高橋亜美さんは、退所者の多くが虐待のトラウマ(心的外傷)や孤独が原因で困難な状況に置かれていると明かした。多くが非正規の仕事に就き、生活保護の受給率も高いという。女性は望まない妊娠をする人や配偶者から暴力を受けている人が多く、都の婦人保護施設の入所者の約六割は児童養護施設の出身者というデータもあるという。

 宇都宮市で施設退所者らの自助グループを主宰している塩尻真由美さんは、三歳から十八歳まで児童養護施設で過ごした自らの経験を語った。「仲間の多くは中学卒業後すぐに就職したが、頼れる人なしでやっていけるわけがなく、かといって失敗しても施設に戻れない。罪を犯して刑務所に入った人も見てきた」と振り返った。

 塩尻さんは高校卒業後に住み込みで働けるバスガイドになったが、一人で生活する不安に耐えきれず一年で体調を崩し、施設の恩師に相談して立ち直ることができたという。

 施設退所者の心情について「親じゃない人にここまで育ててもらい、自立しなきゃいけない年齢なのに、これ以上迷惑をかけては申し訳ないと思っている。一人だけになった時の静かな空気と日々闘いながら過ごしている」と解説。「施設の先生や里親は、まず生活スキルを身につけさせようとするが、大抵のことは人に聞けば解決できる。それよりも、施設に来る前に散々な思いをしてきた子たちに必要以上に他人に身構えなくても大丈夫だと教え、一緒にいて安心できる人をたくさんつくることが重要だ」と語った。

 シンポは前橋市で児童養護施設などを退所した子どもらの支援をする「ひだまりサロン」を運営している一般社団法人「ヤング・アシスト」が主催。約百人が来場した。

 

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