■子どもと貧困 学校で

 「背筋伸ばして歩こー」「きょうも優等生でいきましょー」

 関西のある公立中学校の女性教諭(55)は毎朝、校門に立ち登校の生徒を迎える。声をかけながら、視線は絶え間なく動く。表情、身なりに変わったことはないか。すれ違う際はにおいを確かめる。

 子どもの貧困は見えにくい。しかし五感を研ぎ澄ませばSOSをキャッチできる。この女性教諭の身上だ。全校生徒の半数近くがドリルや給食、修学旅行などの就学援助を受けている。

 忘れられない生徒がいる。

 2013年夏、秋の運動会に向けて校庭で2年生が組み体操を練習中、途中でやめてしまった5人組がいた。

 休み時間、廊下で理由を尋ねた。「あいつと手をつなぐの、嫌や」。言われた少年は髪に脂が浮き、白の体操着は灰にくすんでいた。「お風呂、入れてる?」。少年は視線をそらせた。「風呂、壊れてるし」