(2016年2月23日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
今度選ばれる専門家会議はイランの最高指導者ハメネイ師(写真)の後継者を選ぶ可能性があるだけに、重要な意味を持っている〔AFPBB News〕
イランの聖地コムの聖職者たちは、今週実施される重要な選挙を前に、超然とした態度を保とうとしている。ターバンを巻いた男性数万人が宗教を学ぶ世界最大のシーア派神学校があるこの都市では、街中の看板は最先端の携帯技術や新しいデビットカード、冬のショッピングセール、美容外科などを宣伝している。選挙運動の横断幕は稀にしか見られない。
イランでは26日に国会議員選挙(定数290)と専門家会議選挙(定数88)の投票が行われる。
専門家会議は高位の聖職者で構成される機関で、イランの次の最高指導者を決定する権限を持つ。
しかし、この会議の選挙については、立候補予定者にイスラム教と政治の資質があるかどうかを審査する護憲評議会で、保守強硬派のメンバーが改革派の立候補予定者を多数失格と判断したため、コムでの選挙は急進派同士の争いとなっている。
改革派候補の「不在」
中道派のハッサン・ロウハニ大統領に近い改革派や穏健派のグループは、ほかの多くの選挙区と同様、コムでは候補者を1人も立てていない。その代わり、過激すぎない保守派の候補を陰ながら支援している。コムの選挙区で言うなら、保守派のアリ・ラリジャニ国会議長もその1人に数えられる。世界の主要国と昨年交わされた核合意をイランの国会が妨害するのを防ぐ際に、大きな役割を果たした人物だ。
「我々がコムで採用している主な戦略は、(革命)防衛隊に近い強硬派、特に(強硬派の聖職者モジタバ・)ゾナールを勝たせないことだ。ラリジャニとほかの保守派2人を支持しているのはそのためだ」。ある改革派の政治家はこう語った。
穏健派の立候補者が少ないにもかかわらず、改革に賛成するグループは、政治に幻滅している教養ある中間層の有権者に投票に行くよう働きかけている。そして最も急進的でない人物を勝たせ、国会と専門家会議における保守強硬派の数を極力抑えようとしている。特に重要なのは後者の選挙だ。今度選ばれる専門家会議は、現在の最高指導者アリ・ハメネイ師の後継者を決めることになる可能性があるからだ。