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【コラム】

筆洗

 眠れないという方には、落語をお薦めしている。笑っちゃって眠れないんじゃないか。そう聞かれるが、心配には及ばぬ。名人上手の落ち着いた声と安定したリズムが眠気を誘ってくれる。なによりも眠りのさまたげになる現実や心配事を落語のぼんやりした世界が忘れさせてくれる▼「おやすみ、ロジャー」(飛鳥新社)という絵本が世界各地で売れているそうだ。読み聞かせれば子どもが眠ってくれる効果があるという触れ込みで本の帯には「たった10分で、寝かしつけ!」とある▼スウェーデンの行動科学者が二〇一〇年に自費出版し、評判になった。子を早く眠りにつかせたいのは、いつの世のどこのお国でも、親の共通の願いだろう。逆に子どもは親と離れて一人で夢の世界へ向かうことにためらいもある▼試してはいないが、効果に秘密があるとすれば読み方か。特定の箇所では強調あるいは静かな声でなど細かく指示されている。あくびをいれるという箇所もある。眠りを誘われそうである▼日本人の睡眠時間の短さは世界でも折り紙付きだが、そのせいか、日本人の三歳児の約30%が午後十時以降に就寝するという心配なデータもある。三〜五歳児の適切な睡眠時間は十〜十三時間とも聞く▼どの絵本でもかまわぬだろう。昔ながらの読み聞かせは有効である。どの子にもその声は眠りを誘う名人上手の声である。

 

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