帰ってきたR。
1987年にリリースされた「R-TYPE」は、アイレム史上最大のヒットを飛ばしたのみならず、後のあらゆるゲームに影響を与える大きなインパクトを残した。当然のことながら、ユーザーは続編を期待した。業界に革命を起こしたと言っても過言ではないゲームの続編を。
そして1989年に満を持して放たれたのが「R-TYPE II」である。
前作から2年の歳月が流れ、基板もアイレムM72システムからM82システムへとグレードアップし、必然的にグラフィックスやサウンドも豪華なものとなった。とくに、緻密に書き込まれたドットワークは、その後のアイレムのゲームの特徴となり、後進のゲームが似たような描き込みの激しいグラフィックスだったりすると、「アイレム調」などと言われるまでになった。
この頃、アーケードゲームはSTGブームの末期に入っていた。このゲームに限った事ではないが、R-TYPE IIは時代の波の影響をモロに受けたゲームであるとも言える。
パターン以外の動きをしたら死ぬ。
プレーヤーは前作の自機R−9を強化したR−9カスタム(R−9C)を操り、新たなバイド帝国(この時期はまだ設定が固まっていなかった)を倒すための戦いに挑む。前作では8ステージあったステージ構成は、6ステージと少なくなった。そのためなのか、ステージあたりの難易度が上昇している。ぶっちゃけ初見殺しが増えた。
R-TYPEはグラディウス同様、死んだら一定のチェックポイントから再スタートする「戻り復活制」を採用している。これには一長一短あるが、共通して言えるのは「パターンゲームになりやすい」と言う事だ。
この時期のSTGは、まだ首領蜂登場以前であり、殆どがパターン構築を前提として作られていた。当然R-TYPE IIも同様である。敵の弾は基本的に自機を正確に狙ってくるし、敵の配置がかなり嫌らしい。1面は普通にやっていればなんとなくクリアできる難易度になっているが、2面からかなり本気で殺しに来る。
そして、3面以降はもう完全に覚えゲーである。はっきり言ってパターンを作るとかいう以前に「知らないと死ぬ」シチュエーションが連発する。4面に至っては前作の6面に匹敵するかそれを超える難しさで、大体の人はここで挫折するレベルである。
自機の装備も問題が多い。特に、新しく追加された「拡散波動砲」は使い所が難しく、しかもちゃんと当てないと普通の波動砲よりも威力が低くなるので、正直役に立たない。
アイテムを取った時に使えるレーザーも5種類に増えたが、はっきり言うと赤の対空レーザー一択である。だが、このアイテムがなかなか出てこない。その代わりにやたら出てくる黄色の対地レーザーと緑のサーチレーザーはマジで使えない。青色の反射レーザーはかろうじて使う気が起きるレベルだが、灰色のショットガンレーザーに至っては何のために存在しているのかすらわからない。とにかく、このゲームはいかにして対空レーザーを維持するかがクリアの鍵である。
グラフィックスは本当に美しく、緻密に描き込まれている。敵のアニメーションはより滑らかになり、爆発のアニメーションパターンも枚数が増えて美しくなっている。とくに2面の水の描写や、3面の巨大戦艦を破壊すると人が落ちていく所などは本当によく描き込まれている。だが、それ以上に難易度が尋常では無いので、残念ながらそれを楽しむところまでいけた人はかなり少ないのではないだろうか。
ちなみに、おなじみのグロテスクさにも磨きがかかっている。とくに2面ボスのバラカスは「ちょっと待て」といいたくなるような風貌をしている。前作の2面ボスである「インスルー&ゴマンダー」をデザインした女子社員は、上司から病院に行くことを勧められたという逸話が残っているが、バラカス様も大概である。どんなものか知りたい人は「バラカス様」で画像検索をしてみよう。きっと「ありがてぇありがてぇ」とひれ伏してしまうことだろう。
時代が生んだ歪みの様な存在。
80年代後半から90年代初めは、アーケードゲームの主役がSTGから格闘アクションへと移り変わっていく時期だった。なので、この時期に出たSTGは殆どがR-TYPE IIと同じ様な問題を抱えている。例えばグラディウスIIIなどもそうだ。
特にR-TYPE IIは、アイレムが故意に情報を統制していたという問題もあった。当時、「攻略情報が公開されることでインカム(稼働率に対する利益率)が落ちる」という風説があったため、アイレムはゲーメストなどのゲーム雑誌に積極的には情報を提供しなかった。したがって、ゲーム全体としての盛り上がりに欠け、稼働時期も短期で終わってしまった。
例えば現代のように、ほぼ完全な移植版が家庭用でリリースされる時代であれば、その評価は変わっていたかもしれない。覚えることが多く、初見では理不尽な罠がそこかしこに散りばめられてはいるが、決してクリア不可能というレベルではない。1周であればギリギリなんとかなるレベルではあったのだ。ただし、真エンディングを見るためには2周目をクリアしなければならない。後にPlayStationに移植された「R-TYPES」で何とか1周は出来たものの、とても2周目は刃が立たなかった。
高校時代のある日、自分は見てしまった。小さな子どもが100円を投入してR-TYPEIIをプレイ開始して、1分も経たないうちに水面から飛び出してくる雑魚のミサイルにあたって死んでいたのを。この序盤は、波動砲なんかを故意に使わせる為のチュートリアル的な側面を持っていたが、アーケードゲームはインストカードを読まずにプレイする人も多い。この時期のSTGは、もはやそういう人や、そもそもSTGが得意でない人はもう相手にしていなかったのだ。
そんな時代に産み落とされた、いわば歪みのような存在がR-TYPE IIというゲームだった。
それは、まさにR-TYPEの世界で人類に戦いを挑む「バイド」そのもののようだった。