一億総活躍国民会議で「同一労働同一賃金」を目指す議論が始まった。論点や実現に向けた課題をまとめた。
Q 「同一労働同一賃金」とは。
A 同じ内容の仕事をする人は、同じ賃金をもらえるようにするという考え方だ。
政府・与党が念頭に置いているのは、終身雇用、1日8時間労働を前提にした正社員と、派遣やパートなど雇用期間や労働時間が短い非正規社員の格差だ。働き方の違いに応じてバランスを取りつつ差を詰めていく「均衡待遇」の確保を目指している。
これに対し「均等待遇」を掲げるのが共産党。正規雇用を基本とし、非正規の待遇を引き上げるよう訴えている。民主党も「均等待遇」を主張してきたが、支持母体の連合は「正社員は残業や転勤のリスクもある。そうした負担も考え合わせて賃金を払うべきだ」(幹部)との立場。一枚岩とはいえない。
Q 実際に正社員と非正規の賃金を同じにすることはできるのか。
A まったく同じにはできないというのが世界の流れだ。先行する欧州でも、パート労働者の1時間当たりの賃金を正社員と比べると、フランスが89%でドイツは79%と一定の差はある。ただ日本は57%と差が大きすぎる。政府はこれを縮めたいと考えている。
Q 具体的にはどうするのか。
A 同じ仕事をしている社員は雇用形態にかかわらず、通勤手当や出張旅費、店長手当などを同額にするよう求める考えだ。これで正社員と非正規社員の所得格差を縮めるのが、現実的な目標だとみている。
Q 働く人にはどういう影響があるのか。
A 非正規社員はこれまで考慮されなかった業務への熟練度合いなどを評価されたり、手当が上がったりすれば所得が増える可能性がある。政府は今回策定する指針を守らない企業に説明を求めることも検討する。
Q 実現に向けたハードルは。
A 正社員の賃金を維持したまま、非正規社員の賃金を上げるには総人件費を増やすしかない。政府はここ数年の株高や円安などで「企業利益が増えた分を、非正規社員の待遇改善に回してほしい」(内閣官房幹部)と考えているが、景気の先行きを考えると、経営側は簡単には上げられない。逆に総人件費を増やさずに非正規の賃金を上げるには、正社員の賃金を下げるしかない。これも労組などの反発が大きそうだ。