小学校中学年、高学年の父母のみなさんから、こんな相談をよく受けます。子どもを学習塾へ通わせた方がいいのかどうか、子どもを学習塾に通わせたいが嫌がっている、周りが行っているので学習塾に行かせないのは心配、などなど。中1ギャップとか、小4ビハインドという言葉が独り歩きして不安になっている保護者も多いようです。
小学生を学習塾に行かせた方がいいのか?
その答えははっきりノーです。
特にこれらの相談のようなケースでは絶対に学習塾に子どもを通わせるべきではありません。
その理由をいくつかあげていきます。
自立した学習ができない子どもになる
まず、学習塾に通って学習塾のペースで勉強をする、または学習塾の先生や周りの生徒に合わせて学習をする習慣を付けてしまうと、自立した学習ができない子どもになります。ここがいちばん重要です。勉強ができるか、できないかよりも、自分の意思で何かができることの方が重要です。
運動やピアノの方が重要
学習塾に行かせるなら、小学生のうちは好きなことを好きなだけやらせた方がよいです。外で運動をさせたり、ピアノを習わせた方が長期的には脳の発達によいことはよく知られています。子どもが何か習い事に興味を持ったら、スポーツやピアノなどの音楽教室の存在も知らせてあげましょう。目標を持って何かをやるということもこの中で学ぶ機会になります。
親子で楽しむ習いごともよいでしょう。
子どもが行きたいと言うまで待つ
子どもがやりたいと言うまで待つことが重要です。習い事にしても学習塾にしても、教わるときの成果が全く違ってきます。もしも私立中学校に子どもを入れたいと考えていたとしても、学習塾を親が進めるのは悪いパターンです。親が入れさせたい私立中学校を見に行くとか、学習塾の近くを通るとか、それとなく子どもが関心を持つように仕向けるくらいにしておきましょう。
有名私立中高一貫校から東京大学に入った人の多くは、学習塾は必要になったと思ったときに、自分で行かせてほしいと親に頼んだと言っています。
映像や通信教材は試したか
もし、子どもが学校の授業に物足りないと言い出したら、いきなり学習塾を検討するのは早いです。今は、映像教材や通信教材もすぐれたものが数多く出ています。学習塾に行っても、同じ集団授業を聞くだけになってしまっては、あまり意味がありません。映像教材はその業界で随一の講師が担当していますし、質の悪い授業は存在しえないうえに、何度でも見ることができるという強みがあります。学習習慣がついている子どもなら通信添削的なものでもよいでしょう。
また、子どもが学校の授業についていけないと言っているようなら対応を考える方がよいのでしょうが、何もしないのがいちばんよいです。小学校の勉強を少し頑張ったからと言って何か将来に役立つのかといえば何もありません。好きなことを好きなようにできる能力、頑張りたいことに頑張れる能力を身につけさせましょう。
保護者の立場で、学習塾に何を求めているのかも分析してみましょう。学童保育代わりの子ども預かりなのか、進路の情報なのか、単に何かしてあげたという気持ちなのか、学習塾が正解ではないはずです。
必要なのは中学受験の算数くらい
それでも、中学受験のために学習塾に通わせたいというなら、算数だけにしましょう。中学受験の算数だけは、公立小学校では全く対応できていません。「つるかめ算」「旅人算」などのコツはなかなか苦労するでしょう。それでも、算数だけ対応してくれる学習塾は少ないのですが、他の教科を学習塾で習わせるのははっきり言ってムダです。その時は、大手塾の教材を買って学習する、通信教材を利用する、算数だけ家庭教師を付けるなどの方法があります。もちろん、有名私立中学に入るほどの学力がある子どもなら、わざわざ中学受験でしか活用できない「つるかめ算」「旅人算」などを算数で解くのはムダです。中学生の数学を早めに導入して、数学で「つるかめ算」「旅人算」が解けるようにしましょう。方程式を覚える方が将来的にもよいのです。
古い時代の価値観が植えつけられる
そもそもの話として、有名私立中学に入って、有名大学に入るということは将来を何も保証しない時代になっています。Q&Aサイトで「学習塾に子どもを通わせるか」と質問すればだいたいは業界の内部の人間が「行かせるべき」と答えています。ポジショントークかもしれませんが、学習塾には学校の勉強ができれば生きていけるという古い時代の価値観に固執しているタイプの人が集まっています。もはや、画一教育の中で優等生ともてはやされよい体験をした人が、確実に世の中は変わっているのに、そこに目を向けず自分の成功体験を子どもに押しつけている図式と言っても過言ではありません。人間にとっての必要な能力が全く転換しているのです。昔と同じ、点数を取ることで勝てる能力のある子どもならまだしも、そこに勝ち目がないなら、他の尺度で考えた方がよいのです。
負けグセがつく
学習塾の講師は、古い価値観に固執する存在であるだけでなく、実際のところ、多くの講師は社会の負け組で、学習塾はその掃き溜めになっています。ほとんどは教員採用試験を受け続けて落ち続け、結局は学習塾に就職したとか、大学でポストがなく学習塾が本業になったとか、そういったパターンが多いのです。やはり、成功した、本物の人物に幼少期から接することが、子どもにとって大事です。公立学校の先生の授業はつまらないパターンがほとんどですが、それでもまだ一通りの教育や経験、選抜を経てきています。社会的責任や基礎的な教養の部分で大きな違いがあります。
もともと勉強ができないのに学習塾に行ってさらに劣等感を味わってしまうと立ち直るのは相当に大変なことです。
アクティブラーニングの導入も進み、小学校の学習を有効に活用することが最適な解であることは変わりません。できる子どもなら、できるなりに他の子どもに教えてあげたり、できないなら他の子どもに教えてもらう力をつけさせることが、それなりの所作をアドバイスしてあげましょう。
個別指導塾は最悪
学習塾を選ぶ際に、その学習塾の求人情報を調べたことがありますか。人間の価値や能力は給料で決まるわけではありませんが、学習塾の中にはワーキングプアを作り出すような劣悪な環境で講師を働かせ、ブラック企業、ブラックバイトと呼ばれるようなものも少なくありません。時給1,000円以下の学習塾講師というのも少なくありません。とにかく選抜も何もせず、子どもを見ていることができればよいとか、マニュアル通りに話せればよいという経営スタイルの学習塾も存在します。学童保育代わりの子ども預かりと割り切って考えているなら、相応のサービスかもしれませんが、学習指導を期待するのであれば考えた方がいいでしょう。
大手のチェーンは広告と実態に大きな差がある場合が多いのです。経営が拡大している学習塾は、子どもを預かってほしいか何かしてあげたいという親と、生活や学費のためにアルバイトをせざるを得ない学生のニーズがたまたまマッチングして成り立っているだけです。
以上です。インターネット上で出回っている学習塾に関する情報や教育に関する情報は、かなりバイアスがかかっています。教育への出費を大きくする方向を薦める意見の方が強く出ます。学校教育も、家計も、子どもの将来をも破壊しているのが、今の学習塾システムです。よく考えて行動しましょう。