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 九州新幹線長崎ルート(長崎新幹線)は、トラブル続きのフリーゲージトレイン(FGT)計画を先送りし、新幹線と在来線を乗り継ぐ「リレー方式」で予定通り2022年度までに開業させる方向になった。だが、時間短縮は限定的で開業効果は落ちる。FGTをあきらめたくない国、早期開業にこだわる長崎県、負担増を警戒する佐賀県。3者の利害が絡み合った末の苦肉の策だ。

 長崎新幹線の22年度開業を堅持しつつ混乱を収拾する方策として浮上したリレー方式だが、FGTと比べると乗り換えが必要で所要時間も増える。新幹線の開業効果の低下は否めない。

 車軸の幅を変えながら走るFGTなら、博多―長崎間で乗り換えは必要なく、所要時間は最速1時間20分。在来線特急で結ぶ現行方式よりも28分短縮されることになる。

 一方、リレー方式では博多から武雄温泉まで在来線特急が約1時間10分で、新幹線が20分程度。そこに乗り換え時間もかかる。本州から長崎に向かう場合、博多で新幹線から特急に乗り換え、再び武雄温泉で特急から新幹線に乗り換える必要もある。

 FGT開発はなお、見通しがはっきりしない。改良車両の完成は4月以降。国交省は17年度に耐久走行試験を再開できれば18年度にも先行車が完成し、25年度には量産車を営業運転に使えると説明しているが、これは最短ケースだ。

 運行を担うJR九州にとって、技術的には鹿児島ルート部分開業時にリレー方式の実績があり、武雄温泉駅のホームで階段を上り下りする必要をなくす対面乗り換えも「構造上、十分に可能」(幹部)だという。

 ただ、リレー方式とFGTの両にらみが経営的な負担になる。長崎―武雄温泉間のために購入する新幹線車両は、FGTに置き換われば不要となり、二重投資になりかねない。FGTの開発状況から、社内には「全面導入後に車両トラブルが起きれば経営的な損失が大きい」(幹部)と心配する声もある。(土屋亮、湯地正裕)