>   >  ディズニーで学んだ映画制作&キャラクターモデリングとは?「糸数弘樹ハリウッド式CGモデリングセミナー」レポート
ディズニーで学んだ映画制作&キャラクターモデリングとは?「糸数弘樹ハリウッド式CGモデリングセミナー」レポート

ディズニーで学んだ映画制作&キャラクターモデリングとは?「糸数弘樹ハリウッド式CGモデリングセミナー」レポート

『塔の上のラプンツェル』、『アナと雪の女王』をはじめ、長年にわたりハリウッドで活躍してきた糸数弘樹氏。Walt Disney Animation Studios(以下、ディズニー)のトップクリエイターとして、30本以上の作品制作に参加してきたCGアーティストだ。2月12日(金)に東京・御茶ノ水にあるワテラスコモンホールで開催された「糸数弘樹ハリウッド式CGモデリングセミナー」では、満員の聴衆を前にディズニー式のアニメーション映画制作フローや、自身のCG哲学について講演した。

<1>カジノで一攫千金!? 波瀾万丈の米国留学

沖縄県久米島出身で、琉球大学美術工芸学部でプロダクトデザインを学び、卒業後に単身アメリカ留学に挑戦した糸数氏。ロサンゼルスのArt Center College of Designに入学するため、まずはルイジアナ工科大学で語学を学んだものの、TOEFLで目標スコアに2年連続で届かず、学費を稼ぐため寿司屋でアルバイトなどをするはめに。資金不足で帰国する直前、ラスベガスのスロットマシンで大当たりを引き当て、300万円の大金を獲得する。

▲渡米後は、学費を稼ぐために寿司屋のアルバイトも経験

波瀾万丈の経験を経て3年目に目標スコアを達成した糸数氏は、満を持してArt Center College of Designに進学。カーデザインで有名な同校で専門を深めると、卒業後にプロダクトデザイナーとして活動を開始した。最初に報酬を得た仕事はサングラスのデザインで、当時珍しかった"つる"が直線タイプのサングラスをアパレル大手のOAKLEYに提案し、10万円のデザイン料を得たという。

一方で映画『ジュラシック・パーク』の公開などもあり、当時ハリウッドではCGアーティストの需要が拡大していた。こうした波におされるように、糸数氏もWarner Bros. CompanyにCGアーティストとして就職。「CGにはArt Center College of Designの必修科目で学んだだけで、当初は見習い採用だった」という糸数氏だったが、毎日深夜まで残業しながら独学でCGを学び、フルタイムでの仕事を獲得するにいたる。

『バットマン フォーエヴァー』でエフェクトを担当し、『アイアン・ジャイアント』でモデリングにも挑戦。Warner Bros. CompanyがCGスタジオを閉鎖した後は、ヘッドハントを受けてディズニーに移籍した。東京ディズニーシーでも上映中のアトラクション『マジックランプシアター』で、魔神ジーニーのモデリングなどを手がけた後、数々の作品にモデラーとしてかかわっていく。

「自分がラッキーだったのは、まだ業界自体が黎明期で、数々の巨匠から直接指導が受けられたこと」と振り返る糸数氏。『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』をはじめ数々の作品で特殊効果を担当し、アカデミー賞の視覚効果賞なども受賞したジョン・ダイクストラを筆頭に、ブラッド・バード、エリック・ゴールドバーグ、グレン・キーンなど、蒼々たるメンバーから様々な技術を学ぶことができた。

こうした恵まれた環境に加えて、本人の努力もあり、徐々にスタジオ内で確固たる地位を確立させていった糸数氏。「それまでは車や宇宙船などのデザインをしていて、キャラクターデザインについて学んだのはディズニーに来てからでした」というハンデにもかかわらず、2014年までディズニーのトップCGアーティストとして活躍。日本でも大ヒットした『アナと雪の女王』では背景のモデリングを担当し、世界中で高い評価を得た。

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<2>ディズニーが重視する映画制作の3大要素

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