「銀行、企業、家計に恩恵」 大和総研試算
「年1兆5000億円超のメリットある」
マイナス金利政策は銀行、企業、家計のいずれにも恩恵をもたらす−−。大和総研は23日、マイナス金利の影響についてこんな試算をまとめた。銀行は日銀への国債売却でもうけることができ、企業と家計はローンの利払い負担が減る。利子が減るデメリットなどを差し引いても年約1兆5000億円超のメリットがあるとした。
10年国債の利回りが0%に低下するケースを想定して試算した。
銀行は、日銀に預けている当座預金の一部の金利がマイナスになることで年656億円の収益減となる。貸出金利や住宅ローン金利の低下で金利収入が年6264億円減少する一方、預金金利の引き下げによるコスト抑制は1765億円にとどまるため、本業である貸し出しの収支も悪化する。
ただし、金利が低下すると、国債を売買する際の価格は上昇する関係にあるため、銀行は保有する国債を高値で日銀に売却できる。これで1兆5714億円の利益が生じ、差し引き1兆559億円の収益増加につながる。大和総研の小林俊介エコノミストは「マイナス金利に伴う銀行の収益悪化が懸念されているが、日銀が国債の大量買い入れを続ける限り、銀行は国債の売却益で損失をカバーできる」と指摘している。
企業と家計は、預貯金の利息収入が減るものの、設備投資や住宅購入などでお金を借りる際の金利軽減効果の方が大きく、差し引きで企業では1723億円、家計では3219億円の恩恵がある。もっとも、メリットがあるのはお金を借りる場合のみで、預金も借金もない場合はほとんど影響はない。【中井正裕】