厚生労働省は23日、がん患者が仕事と治療を両立できるよう支援する企業向けの初の指針を策定した。患者の症状・治療方法や勤務内容などの情報を企業と医師が共有し、時間単位の休暇制度を導入することなどを求めている。がんを治療しながら働く人は約32万人に上っており、指針を示すことで仕事を続けやすい職場環境づくりを後押しする。
指針はまず、がんになった従業員が安心して自身の病状を相談できる窓口を設け、医師と企業が患者の情報を密接に共有するよう求めた。
そのうえで(1)患者が自身の業務内容を主治医に伝える(2)主治医が病状や治療の内容、働き続けるうえで望ましい配慮を判断して企業に伝える(3)企業は主治医や産業医、患者の意見を踏まえて就業継続の可否を判断――との具体的な流れを示した。
就業可能な場合は必要な対策やスケジュールを盛り込んだ「両立支援プラン」を策定するのが望ましいとした。
患者や主治医、企業の間でやり取りする際に使用する書面のひな型も示し、活用を促した。
がん患者は抗がん剤の投与など短時間の治療が定期的に繰り返されるケースがあると指摘。導入が望ましい対策として▽時間単位の有給休暇制度▽時差出勤や在宅勤務制度▽長期間休んでいた場合の復帰に向け勤務時間や日数を短縮した「お試し出勤」制度――などを挙げた。
厚労省の2010年の推計では、働きながらがん治療を受けている人は全国で約32万5千人。国立がん研究センターが1月に公表したデータによると、医療技術の向上などで、全てのがん患者の10年後の生存率は6割近くまで上昇している。
一方、厚労省の12年の調査によると、がんと診断された後、患者の約2割が元の職場を退職していた。医療関係者は「実際には仕事の継続が可能なのに、治療に専念することを考えて離職してしまうケースも少なくない」と話す。
今回の指針はがんだけでなく、脳卒中や糖尿病、肝炎など継続して治療が必要な病気の患者も対象にしている。