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 2002年の規制緩和で自由化が進んだタクシー業界に、再び規制の波が押し寄せている。競争が激しくなり、運転手の労働環境の悪化が事故の危険性を高めているという。一方で、初乗り運賃を引き上げた国を「裁量権の乱用」とする判決が昨年11月に大阪地裁で出た。同様の訴訟で福岡地裁でも26日に判決が出る。利用者にとって必要な競争なのか、過当競争なのか。

 夜の北九州市の繁華街。道路沿いには客待ちのタクシーがずらりと並ぶ。40代の男性運転手は「供給過剰。労働環境は悪化している」とぼやく。「売り上げを上げようと無理して運転し、疲れで意識がもうろうとした、と話す同僚もいる」と打ち明ける。

 国土交通省によると、タクシーやハイヤーが絡む、死傷者が出たり車が横転したりする重大事故は、自由化前の01年が618件で、13年は664件。一方で14年のタクシー運転手(男性)の平均年収は約302万円で、全産業の平均約536万円に比べ低い。

 規制緩和で増車が原則自由になった。その後、台数制限は復活しているが、まだ多いという業界の声もあり、さらなる制限が進む。

 国交省が「特定地域」に指定した交通圏や市は、タクシー業界や行政、地元住民らで協議会をたちあげ、台数制限の話し合いを続ける3年間は、新規参入や増車が禁止される。計画ができれば、強制的に減車することも可能になる。

 北九州交通圏は昨年8月、福岡交通圏も同11月に指定された。九州では、長崎、熊本、宮崎の各交通圏と大分市、鹿児島市が特定地域に指定され、一部で話し合いが始まっている。

 9日に指定後で初の協議会が開かれた福岡交通圏では、これまでに「行政が供給輸送力を制限するのはおかしい」「悪化した運転手の労働環境の改善が必要」という意見が出ている。