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【コラム】

筆洗

 中学や高校の運動部で、練習中は水を飲むなと指導された世代である。夏は顔を洗うふりをして飲んだ。飲んでいてよかった。現在では運動中の適度な水分補給は常識である。あの教えは何だったのか▼水分補給の「常識」は助かったが、こっちはどうか。文化審議会漢字小委員会が大筋で了承した指針案である。常用漢字の「とめ」「はね」など細かい違いがあっても間違いではないという考えをまとめた。「保」の「口」の下は「ホ」でも「木」でもどちらでもいいというのが「常識」になっていくのか▼心配はある。教育現場の混乱である。実は、文化庁は一九四九年に「とめ」「はね」などの違いは必ずしも問題ではないとする見解を出している。ならば、なにゆえ、われわれは手ヘンをはねないで先生から誤答とされたのか。周知徹底されていなかったのであろう▼正確に漢字を教えたい先生の心はありがたい。教え子が入試で「とめ」「はね」により不正解とされぬかという親心もある。いいかげんな字形が横行することへの不安もあろう。「とめ」「はね」ではないが、「川」と「小」、「未」と「末」など繊細な世界でもある▼この方向で「常識」を見直すのなら周知徹底は当然。先生の個性やばらばらの採点基準で不公平があってはならぬ▼「水」の字の一画目は「はね」である。皆に均等にはねて潤わなければ。

 

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